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第25話 切るべきものを切れ!!

 フィフスのいるアパートとも平次のいるバスとも違うとある暗がりの研究室の中、そこで一人の白衣を着た男が手元のコーヒーを飲みながらパソコンのキーボードを打ち続けていた。黙々と作業としていたが、そこに内線電話がかかってきたことで手を止めた。


 「なんだい?」

 「報告です。都内監視カメラにて、二カ所での目撃ありです。」

 「場所は?」

 「ポイントT-48、並びにT-36です。画像、送ります。」


 そうして男は一度作業を切り上げて送られてきた画像を見た。一つは、凍った運河によって動きが止まっているバスだった。


 「これはまた、派手にやってるね~・・・ 処理をする身にもなってほしいもんだ。」


 男がため息をついてもう一つの画像を見ると、先程までの様子とは打って変わって真剣なまなざしになった。


 「おっと、これは・・・」


 そこに移っていたのは、アパートから瓜を抜け出せずに動きが止まったフィフスだった。しかも戦闘中だったこともあり、鬼の姿に戻っている。


 「彼は例の・・・ なぜこんな所に?」


 困惑する男に再び通信が来た。


 「部隊の編成は整っています。いつでもどうぞ。」

 『これは致し方ないか。』

 「各隊、地域住民には退避させ、、運河の方は閉鎖しアパートは包囲してくれ。」

 『やれやれ、始末は私がつけるしか無いか・・・』


_______________________________________


 そして当のフィフス。どう攻めるかを考えていたが、そこに化けゴウモリは入り込んできた。彼はすぐに瓜に指示を出し、彼女を再び部屋の奥へと引っ込めた。そしてどうにも不機嫌な顔になっている。


 「しかし意外でしたねえ、本当に人質(これ)で動きが止まるとは。」

 「お前の考えじゃないのか?」

 「先日貴方も会った彼ですよ。」

 「あの『カオス』とか言う野郎か・・・」


 その本人、先程よりもアパートに近づいた場所にいた。しかし誰にも気付かれてはいない。


 「そろそろ見所だなぁ。魔王子君、君はここからどうするかな・・・」


 悩んで動こうとしないフィフスの様子を見続け、化けゴウモリはため息をついた。


 「ハ~・・・ 正直に言ってがっかりですよ。貴方ほどの方が、人間一人にこの騒ぎとは・・・ とても歴戦の勇者をなぎ倒した魔人とは思えませんね。」

 「無関係な奴を巻き込むのが釈然としないだけだ。だが、仕方ないか・・・」

 『こいつとは、ただの契約関係だしな・・・』


 フィフスは右手に剣を握り、術装を発動しながら鞘から引き抜いた。


 「ハハ、やっぱりそうで無くては。ですが・・・」


 化けゴウモリは構え、また超音波を回りの壁諸共破壊するように繰り出した。


 「チッ、種がバレた途端お構いなしかよ。」


 剣を使いながら隣の部屋などに流れ弾がいかないように器用に弾いていたが、それでも限界はあり、一部はその先にある建物に当たってしまっていた。


 「クソッ! 『はやくケリをつけないと不味いな・・・』」


 フィフスは範囲が広くなったために当たりずらくなった超音波を捌きつつ先程出た部屋に再び入っていった。近づくにつれて相手の攻撃の数は増えていったが、彼は特に苦にならずに進んでいき、見事にかいくぐって瓜の元にまでたどり着いた。


 攻撃旺盛になっている化けゴウモリも、さすがに自分の本体に手出ししたくないのか超音波をやめて直接攻めてきた。が、フィフスが本体を切るには十分な時間がある。


 『よし、後はこの本体を切れば!!』


 フィフスは瓜に向かって剣を振るった。


 『そうだ、こいつごと切れば片付く・・・ 他の奴らが全員救われんだ・・・』


 そう自分に言い聞かせて腕を動かした。しかし・・・


_________________________________________


 『私は、町田 瓜 です。』


 『どうですかこれ、かっこいいでしょ。』


 「だって・・・ 友達だから。」


_________________________________________


 「クッ!!・・・」


 フィフス振るった剣を瓜にあたる直前で止めてしまった。自分の取った行動に彼自身も驚いている。


 「・・・」

 『俺も腑抜けになったもんだな・・・』


 動きが止まったフィフスに対し、化けゴウモリは容赦無く殴ってきた。反応が遅れたフィフスはそのまま飛ばされて壁に叩き連れられた。


 「カハッ!!・・・」

 「残念ですが私の勝ちですね。まさか貴方がここまで人間を好きになっているとは、魔人として頭がおかしくなったのですか? 人間なんて、我らが憎む敵、もしくは利用できる道具でしょう。何を躊躇するのか、私には分かりませんね。」


 ダメージが残る中、フィフスは息を荒げながら立ち上がった。


 ゼー・・・ ハー・・・


 「無理はしない方が良い。すぐに終わりにしますから。」


 そして化けゴウモリは正面から超音波を繰り出した。しかしフィフスの体をそれて後ろにいった。


 「何!?」

 「火炎術が炎を起こすだけだと思うな。熱で気流を乱れさせて攻撃をそらすこともできんだよ。」


 汗をかきながらもフィフスはニッとした。だが内心はこう思っていた。


 『ま、さっきの攻撃で自力で攻撃よけれるか危なくなってきたからな。それに気付かずにいて欲しいが・・・』


 そう、化けゴウモリの先程の攻撃には超音波が纏われたもので、人間であれば即死ものであったのだ。彼は耐えれてこそいるが、実際は見た目以上のダメージがあった。その様子を見て、化けゴウモリはキツい言い方で聞いた。 


 「なぜそうまでして彼女を助けようとするのですか!? 今まで散々人間を殺してきた貴方が!!」


 その質問に、フィフスはこう答えた。


 「ハハ・・・ 何でだろうなあ・・・ 




 ・・・ま、俺がこいつの『友達』だから・・・ かもな・・・」




 「・・・ は!?」


 化けゴウモリはフィフスの言葉に唖然とし、目を丸くした。


 「こいつは、俺が久々に見つけた大事なダチなんだよ。さっきのことでようやくそれに気付いた。我ながら鈍感なこった・・・」

 「何の話ですか?」


 フィフスは笑いを止め、その次に化けゴウモリを先程とは違う目で言った。




 「俺は、どうやらこいつを守りたいみたいなんだ。

   敵がコウモリだろうが、

    仮面の変態だろうが、

     ろくでもねえ化け物だろうが関係ねえ!!




 ・・・ 俺は、大切な友達を絶対に守る!!」







 『久々に思い出したぜ。自分が強くなりたかった理由を。』



 決意を方得たフィフスに、化けゴウモリは呆れかえっていた。


 「ハア、それが答えですか。なら、あの世でそのお友達を待っててください。」


 口を手で隠し、それを放すと共に今までで一番の威力の超音波を放ってきた。流石に気流をゆがませるのも間に合わない速度だ。だが、覚悟を決めたフィフスは一切目付きを変えなかった。そして・・・











 ピカッ!!









 そのとき、突如フィフスの手にある剣の刃は白く光り輝いた。


 「何だ!?」

 「これは・・・」


 刃が光るのと同時に、フィフスはその強い光を受けた途端に、瞳の色が白く輝き、化けゴウモリとは別のものを見ていた。


 『光の・・・ 曲線?』


 フィフスはそこに不規則に延びた光の曲線を見つけた。さらに、目の前の超音波の速度が恐ろしく遅くなっていたのだ。当たりそうになったそれをフィフスが身を捻ってよけると、いつの間にか体は光の曲線の通りに動いていた。


 「ナッ!? 今のがかわされただと・・・ いや、まぐれだ。なら連続で・・・」


 驚く化けゴウモリをよそに、フィフスはいつの間にか光の曲線に示された道をまるでそれが当然かのように進んでいった。


 すると、次々と放たれる超音波を全て紙一重でかわしきり、いつの間にか化けゴウモリの至近距離にまで近づいていた。


 「ば、馬鹿な・・・ 『ならば、先程の奥の手で・・・』 」


 化けゴウモリはまた右腕に魔力を込めた。先程の超音波を纏ったパンチを放つ気だ。この距離であれば、フィフスが剣を振るよりも速く拳をぶつけることが出来るという考えだ。


 しかし、次のフィフスの行動は化けゴウモリにも予想外のことだった。


 ヒュン!!


 次の瞬間、フィフスは化けゴウモリの目の前から消え、パンチは空振りに終わった。


 「どこへ行った!?」


 後にフィフスは、このとき今まででの戦闘で一番頭が澄んでいたという。ほとんど無意識の状態で動いていたのだ。だからこそ気付かなかった。


 その頃の彼は、光の曲線の先に黒い小さい物体を見た。



 『あそこへ、向かっているのか・・・』



 うっすらとだけの意識で彼は化けゴウモリの攻撃をかいくぐった後、光に導かれるままにそこへと進んでいき、彼が守ろうとする『町田 瓜』の目の前にたどり着いた。










 しかし彼はそこでそうするのが当たり前のようにためらいもせずその手に握る剣を振るい・・・



 



























   彼女の体を切り裂いていた。













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