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第265話 中止

 フィフスはまたもカオスに軽く弄ばれたことに腹を立てたまま鈴音と花の撮影現場に歩いて戻ってきました。怪物騒ぎが起こったこともあって、大きく陥没した部分がハッキリ見えるほど人気がなくなり、最初に入った時では信じられないほど静かになっていました。


 「・・・」


 彼がこの事態を止めきれなかったことに責任を感じていると、静かだった耳元に段々大きくなる足音が聞こえて来ました。音の方に首を向けると、鈴音が走ってきました。


 「小馬ッチ! 大丈夫か!?」


 フィフスは千年モグラを倒せなかった後ろめたさに目線を逸らしながら事の報告をしました。


 「悪い、逃がした・・・ というか、相手にされなかった。」


 「小馬ッチ・・・」


 鈴音は彼の予想していた文句を言うどころか、どうにも調子が変な彼のことを心配した表情でした。隣の瓜も同様です。そこに遅れてルーズも到着しました。


 「王子、戻りましたか。ッン!・・・」


 今鈴音が心配したフィフスの表情、ルーズはそれを見て一度歩いていたのを止めてしまい、鈴音は彼の異変に気付いて振り返りました。


 「ルーズ?」


 契約主人から声をかけられた事で彼はハッとなり、優しい笑顔を作って彼女に返事をします。


 「どうかしましたかお嬢様?」


 「い、いや、何でもないぞ・・・」


 鈴音も気のせいかと心でまとめて顔を戻し、ルーズも再び足を進めてフィフスに話しかけました。


 「何かありましたか? 随分気が立ってるようですが・・・」


 「何でもない。」


 フィフスは自分の個人的なことで話を長くするのはよろしくないと考え、目付きを作って誤魔化し、彼自身が気になっていることを聞き返します。


 「それより、撮影はどうなった?」


 「残念ながら、魔人の騒ぎとなってはスタッフも対応できないようで、中止だとの連絡が入りました。」


 「そうか、すまない鈴音・・・」


 申し訳ない顔になるフィフスに鈴音はフッと小さな作り笑顔で遠慮してくれます。


 「仕方ないぞ。大物女優が怪我しちゃいけないしな・・・ 小馬ッチ達は、ここからも花さん達に付き添っていくのか?」


 「おう、そうだった・・・ それで、瓜と当の守る相手はどこに?」


 「ベッドがなかったので、彼女の楽屋のベンチに運びました。この危険な場に長時間いさせるのもなんでしたので・・・ 場所はメモしています。」


 ルーズはズボンのポケットに入れていたメモをフィフスに渡し、彼もそこに書かれた簡易の地図を確認します。


 「そうかわかった。二人とも、後は任せておいてくれ。」


 フィフスは話を区切って瓜や花を捜しに歩いて行きました。残された鈴音がふと隣を見ると、ルーズのフィフスの後ろ姿を見る表情がまたしても険悪なものになっています。


 「ルーズ?」


 またしてもルーズは鈴音の声に優しく返事をします。


 「はい?」


 「やっぱりどうかしたのか?」


 「いえいえ、この事態ですので警戒を怠らないでおこうと意識していただけですよ。」


 と、言葉では誤魔化しますが、彼が内心で思っていたことは警戒なんてものではなく、少々恐怖があるものでした。


 『あの表情は・・・ 似ている、あの時に・・・』


 ルーズは先程から一つの場面、ここに戻ってきたときのフィフスの表情が焼き付いて離れなかったのです。何故ならその表情は、彼が過去に見た死体の山に立っていたときの彼の姿ととても似ていたからです。


 『王子・・・』


 ルーズはそんなフィフスの事を心配に思いながらも、今回はこれ以上この場にいても魔人の対策には役に立てないことが分かっていたため、鈴音に自分から話を切り出します。


 「鈴音様、この場もいつ危険になるか分かりません。今のうちに帰るとしますか。」


 しかし鈴音を出来るだけ傷つけないために普段以上に優しくかけた声に、彼女は目線を下にしてどこか言いたそうなことがありながらも、我慢して受け入れていました。


______________________



 その頃、ルーズから貰った情報を元に花が隠れている楽屋に向かう一人向かうフィフス。その頭には、先程カオスから言われた言葉が印象に残っていました。



______________________



 「今回のこと、放っておいた方が、君らが守ろうとしている女優のためだと思うよ。」



______________________



 『放っておいた方があの女優のためになる・・・ 奴は確かにそう言った。それがどういう意味なのか・・・』


 フィフスは考え事をしたまま花の楽屋に到着し、部屋の扉を開きます。中には未だに気を失っている花に寄り添う根須、そしてそれを心配そうに見ている瓜がいました。彼の存在に気付いた根須が始めに話し出します。


 「ありがとうございます。おかげで助かりました。」


 「いや、邪魔が入って取り逃がした。おそらくまた狙ってくるだろう。」


 「そう・・・」


 安心できないことは変わらない事実に目線を下げる根須。そこにフィフスは戦闘前から気になっていたことを質問しました。


 「そういや思ってたんだが、このスケジュール。」


 「?」


 「丁度一週間前からトラブル続きでグチャグチャになっている。この魔人騒ぎと関係無いとは思いにくい。何があった?」


 根須はその質問に答えにくそうな顔をします。しかし、ここからも自分達を助けてくれる彼らに隠し事をするのはマズいと思ったのか、自身の手持ち鞄から一枚の紙を取り出しました。


 「それについては、これを見てもらえれば・・・」


 フィフスはそれを受け取り、瓜も彼の隣にまで移動して書かれている内容を見ます。


 「これは・・・」


 二人が見た文章の内容は、脅迫文のそれでした。

<没案>


 「王子、戻りましたか。ッン!・・・」


 今鈴音が心配したフィフスの表情、ルーズはそれを見て一度歩いていたのを止めてしまい、鈴音は彼の異変に気付いて振り返りました。


 「ルーズ?」


 「王子のあの目・・・






  ・・・ドライアイ。」


 「違う!!」





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