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第263話 チキンなモグラ

 撮影合間の休憩でペットボトルのお茶を飲んでいる鈴音とタオル片手に隣にいるルーズ。ウィッグも取り、気を緩ませています。


 「フゥ~・・・ こうも大勢の前だとやっぱり違うぞ・・・」


 「一つ一つの辛抱ですよ、お嬢様。」


 鈴音がもう一度ペットボトルを口に付けたそのとき、目線の先に同じく休憩中の花の姿を見かけました。どうにも難しい顔をしながらスマートフォンとにらめっこしています。


 「・・・」


 鈴音が少し気になっていると、目線に被さる形でさっきのメモのことが気になったフィフスは瓜と共に根須に聞こうと捜していた所にすれ違いました。


 「おお、二人ともどうした?」


 「ちょっと気になることをマネージャーに聞きにな。」


 「気になること?」


 「大したことじゃない。お前は自分のことに集中しとけ。」


 フィフスが周りに目を配りながら放している最中、その目線にスマートフォンでどこかと連絡を取り合っている根須を見つけました。二人はその場を離れ、丁度連絡を終わらせた彼女に話しかけました。


 「あの・・・」


 「根須マネージャー、気になることが・・・」


 「ハッ! ハイィ!! 何かな?」


 突然声をかけられたからか変な声男が出る彼女にフィフスは一瞬ピきりと反応し増すが、すぐに調子を戻し、遅れ気味のスケジュールについて質問します。


 「すんません、これらのことがどうなってんのかと思いまして・・・」


 「ああ・・・ それは・・・」


 と根須が質問に返事を仕掛けたその瞬間・・・





 ドンッ!!!・・・





 「「!!?」」


 後方から突然大きな音と地響きがそこに伝わり、何事かと二人が振り返って目を懲らして見ると、今度は女性のものらしき悲鳴が聞こえてきました。


 「キヤァーーーーーーーーー!!!」


 危機を察したフィフスは目線を叫び声の聞こえた方向に向けながらすぐに真剣な声で瓜にこう言い付けます。


 「瓜、この場から動くなよ。」


 「ゴー君?」


 「・・・ッ!!」


 フィフスはその場に瓜と根須を残してメモを着ているスーツの内ポケットにしまいながら走り出しました。彼女にはユニーを付けていたので、彼を信用したのです。


 そうして彼が叫び声が発生した現場に到着します。そこは上から重いものでも降ってきたように床が陥没し、そこから周囲にヒビがびっしりと出来ていました。その中心に、フィフスが仕留め損ねた相手が立て膝から立ち上がっています。


 「お前、まさか真正面から来るとはな・・・」


 ふと奥を見ると、制限のことで後ろを向きながらもさっきの衝撃から鈴音を守っているルーズ。そしてそれより千年モグラに近い箇所に椅子から転げ落ちた花が腰を抜かしていた。


 『マズい、かなり近くに・・・』


 スタッフ達は突然現れた人間で無い存在の常識を越えた行為を見せつけられたことで我先にとこの場から逃げ出し、花を助ける余裕などとてもありません。


 当然千年モグラの方もこの状況下で近くにいる花を見逃すわけもなく、すぐに後ろを振り向いて怯える彼女をの捕まえようとします。彼女はあまりのショックに気絶し、その場に倒れてしまいました。


 『普通の移動じゃ間に合わねえ。さっきインターバルが過ぎたばかりだがやむを得ん・・・』


 フィフスはスーツの上着を脱ぎ、その内の背中に隠していた剣を右手で引き抜き、千年モグラの手が花に触れる前にコウシンで追い付いてまたもその手を剣で止めました。


 「カンッ!!」と響く音を間において二人は緊迫したまま魔人の姿に戻ったフィフスと千年モグラは話し出します。


 「随分はやかったな。もう少し後にしてくれこっちは忙しいんだ。」


 「こっちこそお前を相手しているほど暇じゃない! 用があんのはそこの女だ退け!」


 千年モグラは空いていたもう一方の腕をフィフスの右脇腹に向かってストレートパンチを浴びせにかかります。しかし彼がそれを受けるわけもなく、剣を放しながら頭を下げ、相手のバランスを崩させて回避しました。


 隙が出来たのを見計らい彼は花の元に走り、彼女を抱えてルーズと鈴音の近くに行きます。


 「小馬ッチ!?」


 「王子!!・・・」


 「奴を目で見てないから動けるだろ。二人連れてここから離れろ。」


 「了解しました・・・」


 ルーズは自分が戦闘において何の役にも立てていないことにふがいなさを感じながらも、これ以上フィフスの足手まといになることだけは防ぐために、彼の指示に素直に従うことにします。


 「走ります・・・ 捕まってください。」


 途端にルーズは二人まとめて離れていき、ボロボロの撮影現場にはフィフスと千年モグラのみが残されました。フィフスも相手に体を向け、戦闘の意思を示します。


 「邪魔はいない・・・ 思いっ切り暴れようかモグラさんよぉ・・・」


 見開いた目で威嚇をかけるフィフス。千年モグラはそれに少し身を縮めますが、彼はそのまま戦うどころか後ろに下がり出しました。拍子抜けな行動にフィフスも表情を崩してしまいます。


 「オイオイ・・・ 事故起こしたときといいチキン過ぎるだろアイツ・・・ モグラなのに・・・」


 このまま見失うわけにはいかないとフィフスも逃げ出した千年モグラを追いかけますが、相手はこれを妨害しようと前回と同じく砂雹(すなひょう)を使って目くらましをかけてきます。


 しかし二度も同じ方法が通じる彼ではありません。事前に左手を前に出していた彼は相手は発車する直前に爆破裂を起こし、技を防ぐと同時に千年モグラを転倒させることに成功しました。


 「ウグッ!?・・・」


 「んな単純な手二度も通じるかよ。観念しろ。」


 それを言われても千年モグラは意地を張って立ち上がり、たまたま近づいた出入り口を抜けて未だに逃げようとします。しかしそのスピードはさっきまでより明らかに低下し、フィフスに追い付かれるのもすぐでした。


 『もうじき追い付く・・・ しかし何だ?』


 もやついたところがありながらも、そうして彼が間合いに入りかけたそのとき・・・


 「ッン!!?」


 攻撃仕掛けたフィフスに突如複数本の槍が向けられたのです。


 「これは・・・」


 妨害を受けて千年モグラに距離を離され、息を整われてしまいます。フィフスもじゃあが入ったことに少し苛立ちながらも、は視界にある槍の形にあることを思い出しました、もしやと周囲を見回してみます。


 すると、その予想の答えは千年モグラの隣にまたも突然に現れました。





 「ヤッホー! 魔王子君。」





 フィフスの視界に入るその男、よく使う黒い魔道書を片手に今までと同じく飄々としているカオスがいました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


モチーフ紹介


・影鰐

 『因幡の白兎』よりサメ


・千年モグラ

 『親指姫』よりモグラ





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