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第262話 臨時マネージャー

 時は少し遡り、フィフス達が撮影現場に到着するまでの道中。実はこの時に彼は話を持ちかけていたのです。


 「つ~ことで、事情は言ったとおり。ここはお互いの利益のためにここは乗ってくれねえか?」


 フィフスは元の姿に戻ったユニーの背中に二人を乗せて移動しながら聞くと、助けた内の一人である花のマネージャー、『根須(ねず)』はそれに納得がいっていないような様子でした。


 「しかし、いくらなんでもそんな急な話は通せません! せめて事務所に確認を・・・」


 「待って!・・・」


 携帯電話で連絡を取ろうとする根須の腕を後ろに乗っていた花が止めました。


 「花・・・」


 「この人達にも事情があるんです。それに、命を助けられて、頼みを断る事なんて・・・」


 「でも、こんな素人にマネージャー業なんて無理よ。」


 「格好だけでいい。事が終わればすぐ退散する。」


 「根須さん・・・」


 花の眼差しとフィフスの何度も来る説得、そして何よりこの非常事態なのを考慮した根須は、一度ため息をしてからようやく了承の意思をしましました。



______________________



 「いきなり何をしてるの貴方たち!!」


 「「す、すみません・・・」」


 ということで現在、二人はスタジオから少し離れた所で並んで正座をさせられ、さっき派手に自己紹介をやったことを早速根須に咎められていました。


 「あのね! いくら護衛してるからってマネージャー業をおろそかにしてはダメ! 下手をしたらバレるかもしれないんだから、今後は注意してください!!」


 「うっす・・・」


 「いいですか! 私はこれからスケジュールの調整で話があるので、貴方たちはこれを見て頭に叩き込んどいてください!!」


 すると根須は少しボロっとした内容がびっしり詰まっていそうなメモ帳をフィフスに手渡しました。そのまま彼女は流れるように後ろを向いて忙しそうに走り出しました。


 フィフスはいつものようにちょっとしたお遊びでやったことに叱られて隣の瓜にだけ聞こえる程の小さい声で愚痴をこぼしました。


 「細かいな~・・・ あのおばさん。」





 「()()()()じゃありません!! まだ三十四の()()()()です!!」


 フィフスが思っていたよりも根須は地獄耳だったようで、駆け足で戻ってきてまた怒鳴り声を二人に浴びせました。自分のコンプレックスを言われたからなのか、表情も声の調子もさっきより過激になっています。


 「ああぁ! すんません!!・・・」


 それだけいって根須は再び自身の仕事に向かって行きました。ようやく解放された二人は「フゥ~・・・」ととりあえずの息をついて立ち上がりました。


 「聞こえてたのかよ・・・ 中々おっかね~な、あのマネージャー。」


 「でも、さっきのことは実際私達のせいですし・・・ あの・・・ 今更ですけど、魔人が出た場を見張らなくて大丈夫なんですか?」


 「あり得なくはないが、確率は低いと思うぞ。」


 「え? 何故です?」


 「わざわざ人気(ひとけ)の無い所で襲っていた。これまでの魔人は世間体も考えずに暴れてたのにだ。それに場所に拘っているのなら、すぐ逃げ出すわけもない。」


 「じゃあ、本当に花さんを・・・」


 「まあ一様連絡して暇人に見張らせておいたぞ。」


 



 魔人との戦闘跡が残っている現場にいる暇人こと白兎。


 「休日に呼び出された挙げ句見張りって、アイツも人のこと言えないぐらいひでえな・・・」


 ヒュ~・・・と寂しい風が吹き抜け、何の意味があるのかよく分からない時間がそこで経過していました。





 「ということだ。俺達はこの場を守ればいい。」


 『ルーズさんのことといい、この人本当に人使いが荒いです・・・』


 と瓜が後頭部に一筋汗を流して思っているとき、フィフスの方は少し険悪な顔になっていました。


 「ゴー君?」


 瓜が声をかけると、彼は表情を元に戻して根須から渡されたメモを広げ、そこに書かれていた今後の花のスケジュールを黙読し始めました。瓜も覗き見るようにして覚えようとします。しかし彼女はそれを見てつい心の声が漏れてしまいました。


 「オワッ・・・」


 「見て早々引くな。だがま、これは・・・」


 二人が見た内容だと、今日だけでも彼女は午前中にここで鈴音との撮影をした直後に移動し、午後はドラマの撮影をしてそのままバラエティ番組にゲスト出演。夜も楽曲の収録と間髪入れずに予定が詰まりきっています。当然食事も移動中の車で行なうようでした。


 中々にヘビーなスケジュールだ。何より、今日どころかそれが連日で続いていることに瓜は驚きを隠せませんでした。


 「す、凄い忙しいんですね・・・ 流石は売れっ子女優です・・・」


 「何言ってんだ。俺だって修業時代師匠(せんせい)に休みなくしごかれたぞ。」


 「それとこれではまた別では? この世界でこれは異常です。」


 ペラペラとメモのページをめくるフィフス。


 「ん? こいつは・・・」


 「どうかしましたか?」


 「・・・」



______________________



 その頃、一時撮影の合間を縫って休憩していた花。ポーチの中にしまっていたスマートフォンで誰かにメッセージを送っています。その文面を見て、彼女は気を落とすような息をしている中、その上の天井の鉄骨に体を引っかけて見下ろしている影が一つ・・・





 「よおし、情報通りだ・・・」


 そこにいたのは、さっきの戦闘ですぐに逃げていった千年モグラです。


 「さて、一暴れするか・・・」


 彼は目の焦点を花に向け、何か各欄でいるよう顔になりました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 そこから動こうとすると・・・


千年モグラ「あれ? なにこれ動けない・・・ 引っかかってる! 痛い痛い痛い!! ぎゅうぎゅうに引っかかってるよこれ!!!」



 無理に鉄骨に引っかけていたため抜け出るのに苦労したとか・・・




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