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第261話 人気者の輝き

 撮影場所の楽屋にて今だ待機中の鈴音。外からの音がより騒がしくなっていたことで流石に気になってきていました。


 『やっぱり変だわ。全然ルーズも戻ってこないし、何かあったのかな?』


 気になった鈴音が部屋を出てみると、外からのより大きな声が聞こえてきました。


 「まだ親指 花の所とは連絡が付かないのか!!?」


 「す、すみません・・・」


 「分かってるのか!? 主役がいないんじゃ始まらないんだぞ!!」


 『親指 花と連絡が付かない!?』


 話を聞いてしまった鈴音は息を飲んで驚きました。


 『もしかして、ルーズがいなくなったのって、それが原因じゃ・・・ 待っていても仕方ない! 私も捜さないと!!』


 そんなことを聞いてはいても立ってもいられなくなった鈴音は、現在どこにいるのかも分からないルーズを探し出そうと廊下に駆け出したそのときです・・・





 「親指さん! 入られましたぁ!!」


 「ズコォ!!!・・・」


 勢い良く駆け出したがためにそのまま鈴音は前方に転けてしまい、被っていたウィッグも外れてしまいました。それと共に口調も元に戻ってしまいます。


 「イタタ・・・ 何なんだぞ一体・・・」


 現場はさっきまでよりもより慌ただしくなり、スタッフ達は後ろにいる鈴音を気にせずバタバタと移動し出しました。彼女も何があったのか気になってウィッグを拾いながら撮影現場の入り口に行きます。


 「チョッ・・・ 皆速っ・・・」


 息切れしながら走っていた鈴音。一度上がった息を落ち着かせるために立ち止まって目を開けると、彼女はさっきまでのことを忘れてしまったように何かに包み込まれたような感覚になりました。


 「ッン!!・・・」


 そのとき、彼女は初めて現在絶讃人気の女優の姿を目にしたのです。同じ人に楽しみを与える仕事をしている彼女にとって見る花の存在は、フィフス達一般の人が見るそれとはどこか違っていました。


 『あれが、『親指 花』・・・ 凄い、なんだか凄い雰囲気を纏っている・・・ スタッフの皆が、光に集まっているように見えるぞ・・・』


 「凄いな、あの女。」


 「うん・・・ って!!・・・」


 ごく自然な流れで会話をしてしまった鈴音ですが、明らかに不自然な上、聞き覚えのある声であることに気が付いて驚きながら顔を向けると、やはり彼女の思ったとおりそこにはいつの間にかフィフスがいました。


 「小馬ッチ!? 何でここにいるんだぞ!!?」


 「成り行き~・・・」


 フィフスはそのまま腕を組んで花の周りに人が集まっている様子に感心していました。


 「にしても流石は人気者、顔を出した途端にこれかよ。」


 「一国の王子が何言ってるんですか?」


 「ですね・・・」


 鈴音がフィフスの横をよく見ると、ルーズに瓜と続けざまに並んでいました。


 「み、皆いたのか!? ルーズ、一体何があったんだぞ!!?」


 「ここじゃ話しにくいので楽屋に行きますか。」





 ルーズから言われたことを聞き入れ、鈴音が自分がいた楽屋に戻って事の顛末を聞きました。


 「エェッ!!!・・・ 親指さんが魔人に襲われていた!!?」


 「ドライヤーを買った帰りに魔術の気配を感じてな。そこでルーズ(コイツ)とかち合った。」


 「それじゃあ、親指さんはその魔人に狙われてるって事なのか!?」


 鈴音からの質問にフィフスはむず痒い顔をしました。


 「なんとも言えねえな、あれだけじゃ・・・ たまたま襲われたのか、意図的なのかすら分からん。今となっては、出てくる魔人が契約魔人かどうかも分からなくなっちまったし・・・」


 その事情を知っているルーズは少し顔を暗くしてフィフスを見ます。


 「それで、どうするんだ? 事情を言って撮影を中止にするか?」


 「お前がもしこの場の責任者だったとして、人間じゃ無い奴に襲われて死にかけたから撮影中止にしろって言われて、するか?」


 「た・・・ 確かに、しないぞ・・・」


 そう言われてしまえば何も言い返せません。フィフス達自身の身の安全のためとはいえ、この場のほとんどの人が魔人の存在を知らないのです。


 「でも、このままじゃ親指さんが危ないぞ。せめてどうにか守れればいいんだけど・・・ そうだ! 元々ウチのマネージャーなんだし、その立ち位置を利用してルーズが付けば・・・」


 鈴音が思い付いた意見にフィフスは苦虫をかみつぶしたような表情になって右腕を肘から上げ、親指でルーズを差して即座に却下しました。


 「コイツは今回役に立たん! なんせ動けないんだからな。」


 「う、動けない?・・・ じゃあどうすれば・・・」


 「安心しろ、ちゃんと手は打ったさ。」


 するとフィフスと瓜がそれぞれポケットから首にかける名札を取り出し、彼はまたも悪知恵を考えつくときの満面の笑みを鈴音に見せつけました。


 「ニシシッシ・・・」



______________________



 そして準備が整った撮影現場にて・・・


 「親指さん! 入られまーす!!」


 一人のスタッフの呼び声を受け、衣装を着替えた鼻が現場に入ります。しかしその隣には、何故か黒ずくめのスーツを着てサングラスをかけている一組の男女がいました。


 「あ、あの・・・ あなた方は、一体・・・」


 そのスタッフが困惑して聞くと、男の方がポーズを取りながらサングラスを上へクイッと動かしながら自己紹介をしました。


 「この度、我が所属の親指 花のスケジュールの遅延を聞きつけ、事務所の方より駆けつけました、臨時マネージャーの・・・」



 シャキン!・・・



 「小馬でぇす!!・・・」


 「ま、町田です・・・」


 中央で冷や汗を流しながら微苦笑して見過ごす花。そういうわけで、フィフスと瓜もこの撮影に参加することになりました。





 それはそれをして・・・



 「あの、分かりましたので、下がって貰っていいですか。」


 と、スタッフに冷静に突っ込まれた二人でした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・スーツを見繕うフィフス。魔人騒ぎでゴタゴタになっていた服屋からしれっとパチる。


フィフス「う~ん・・・ 中々サイズが合うのがねえなあ・・・」


瓜「ごめんなさいごめんなさい!! おつりは大丈夫なので・・・」


気持ち分人のいないレジにて多く払う瓜。




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