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第259話 トラブル発生

 その週の週末。フィフスと瓜は家電量販店に来ていました。


 「艶出し・・・ 速乾・・・ 機能がごちゃごちゃ付いててややこしいな。」


 「そこまで高くなくていいですよ。使うのも私だけですし・・・」


 二人は先日壊れてしまったドライヤーの代わりを買いに来たのです。種類の多い商品を見てフィフスは難しい顔をしながら選んでいると、宣伝用のポスターが目に入りました。


 「・・・?」


 そのポスターには、モデルとしての女優がここに飾られている商品を使っている様子の写真がありました。よく見ると、写真の隣に小さい文字で彼女の名前が書いてあります。それは、この前鈴音から聞いた『親指 花』でした。


 「ほ~・・・ これが例の女優・・・」


 そのとき、後ろの瓜が思い出したようにアッとなって言い出しました。


 「そういえば今日でしたね、撮影日。」


 フィフスはそれを聞いて商品を見ていた目を一度あさっての方向に飛ばしました。


 「今頃か・・・ ルーズもいるんだ、パパッと終わらせてるだろ。」



______________________



 と、二人に噂話をされていた鈴音。その当の本人は今・・・


 「アワワワワワワ!!・・・」


 思いっ切り緊張して前に進むことすら出来なり、全身が残像を生むほどガタガタと震えていました。ルーズもこれには対応に困ってしまいます。


 「鈴音様・・・ いい加減前に進んでくださいよ。」


 「ワワワ分かってるぞ!!・・・ ででででも! ひひひ人が多くて・・・」


 個人的な動画配信をしている彼女は今まで裏方の仕事を全てルーズにやって貰っていました。しかしここでは本格的な撮影のため、各所に大勢のスタッフが準備をしています。


 『う~む・・・ いつも裏方を僕一人でやっていたのが仇になってしまいましたか・・・ しかしここまで来てしまってはもう引き返せない、こうなれば・・・』


 「お嬢様。」


 ルーズはすぐに鈴音にいつも使っているウィッグを被せました。すると・・・


 「よっしゃ!! 夢のための道は目の前! 行くわよルーズ!!」


 その瞬間一瞬にして性格が変わったように両目から火が出るように燃え上がって右腕でガッツポーズを決めながら撮影場所に歩いて行きました。 


 「はい、お嬢様。」


 『カツラ被ると性格が変わるのが役に立った・・・ 未だにメカニズムがよく分からないけど・・・』


 ルーズも表情を真顔に戻して意気揚々とする彼女の後ろを付いていきました。





 しかしそこからその場に異変がありました。鈴音とそのマネージャーとして通されたルーズは撮影場所の楽屋に待機させられてから一向にこの場のスタッフから呼び出しの声がかかってこなかったのです。流石に長時間待たされたことで鈴音も痺れを切らしてルーズに話しかけました。



 「遅いわね・・・ 何かあったのかな?」


 「少し聞いてきましょうか。鈴音様、もう少し待っていてください。」


 ルーズは鈴音に許可をを貰ってから自分達の入り楽屋を出、その場にいるスタッフに紛れ込むように歩きながら、発達した聴覚を利用して周囲の人達の話し声を的確に聞き分けました。


 「どうすんだよ! もう時間ないぞ!!」


 「て言ったって! 連絡付かないんだから仕方ないでしょう!!」


 『連絡が付かない? 誰と?』


 ルーズは引っかかった情報元の話に意識を集中させます。すると聞こえてきた話の内容は、今の彼にとって衝撃的なものでした。





 「だからって主役無しじゃ何も出来ないだろう!! はやく『親指 花』の事務所と連絡付けてこい!! ドタキャンなんてされたら洒落になんねえんだから!!」



 『!?・・・ 親指 花と連絡が付かない!? 予定の食い違いか? どうにしろ、ここでお嬢様の晴れ舞台を壊されるのは絶対にあってはならない!!』


 ルーズは真剣な眼差しをして素速く動き出し、現在いる撮影現場から外へ出て行ってしまいました。どうにかして親指 花を探し出そうとしていたのです。


 『テレビで聞いた彼女の声・・・ いやこの都市街だそれはあまり得策ではない。一応調べておいたが、彼女の事務所はそう予定を間違えるミスを起こしているとは聞かない。


  それに大物のドタキャンとなると、今の時代悪い意味でマスコミが騒ぎ出す格好のネタだ。事務所としてもそれは避けたいはず。なら・・・』


 そこでルーズは敢えて人混みのある道路を走り抜け、さっきと同じように音を拾って調査し出します。すると少し離れた所から「キキィ~!!・・・」と急ブレーキをかけるような音が聞こえました。


 周辺を見ても車はスムーズに進んでいますが、もしやと思った彼は自慢の脚力で車の間をすり抜けて向こう岸に渡ります。


 すると大通りの外れにあった小道の中で、一台の自動車が事故の中、急ブレーキをかけながら左右にフラフラと揺れていました。しかもその車の先端には、人間では無い何かが乗っているようです。おそらく脇にそれたのもハンドル操作を誤ったのが運良く進んだのかもしれません。


 『このタイミングに!・・・ しかし見てしまった以上止めねば!!』


 ルーズが走る速度を速めると、スピードが急激に遅くなっていた車にどんどん近付きます。そして追い付くと同時に車を飛び越えるほどのハイジャンプをし、地面に落下する勢いを利用してボンネットにいたそれを蹴り落としました。


 「ガアァ!!?・・・」


 彼は地面に着地して服に付いた汚れを手で払いながら相手に勝手な文句を言い出します。


 「ハァ・・・ 今日は大切な日なんです。出来ればはやく降参して貰いたいんですが・・・」


 大まかなホコリを払い終わり、睨み付けるように前を見ます。しかしそれが仇になってしまいました。


 「ッン!!?・・・」


 ルーズにとっての災難。それは目の前にいた相手こと魔人の姿が・・・


 『あ、あれは!!・・・』


 「クッ・・・ 貴様・・・」





 まるでネズミを大きくして人型にしたような姿をしていたのでした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 ルーズの五感は通常の人より優れている分、悪い意味でも敏感になっています。


 過去に鈴音が普段のお礼にと料理をしていた最中、その匂いだけで鼻がやられて気絶したことがあります。



ルーズ「さ、殺人級の匂い・・・」


鈴音「材料入れて混ぜただけなんだぞ・・・」




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