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第257話 なくしたもの


 ゴソゴソ・・・ ゴソゴソ・・・


 美照と初めて会ったその日の夜。家に帰ったフィフスはその中でゴソゴソと動き回りながら、日中に起こった出来事を考えていました。


 『魔革隊のフログ・・・ 移動の時には必ず落雷を発生させてた・・・ 使う術は『雷鳴術』と見て間違いないだろう・・・ ルーズが拾った狒々の毛がアイツが切ったのなら納得がいく・・・


 ・・・だが気になるな、あれだけ俺らに余裕ぶっこける強さがあるような奴が、どうして狒々を一度逃がしたのかが謎だな。』



 「あ、あの・・・ ゴー君?」



 「・・・ん?」


 一人考え事をしていたフィフスは、テレビのドラマを見ていたはずの瓜が彼の後ろ姿に一筋の汗を流してリアクションに困っていました。


 「さっきから、何をしてるんですか?」


 微妙な顔をして聞いてくる彼女。現在フィフスは変に家中を動き回っていた上、急にしゃがみ込んだり立ったりを繰り返していたのです。正直周りから見ればただの変な人になっていました。


 声をかけられた事で我に返ったフィフスは顔を彼女に向けて口元を引きつらせて返事をしました。


 「あ! あぁ・・・ それは・・・ ス、ストレッチだ! 今日はちょっと激しく動いて疲れたからリフレッシュをだな・・・」


 「動いて疲れたのなら寝た方が・・・」


 「いいからストレッチしてんだよ!!」


 「は! はいっ!!・・・」


 強引な大声でその場を誤魔化したフィフスはここじゃマズいと思ったようでリビングから離れていきました。


 一人になった瓜は目をパチクリとさせながらも空気を読んで再びテレビを見始めました。ドラマの中の女優が丁度相手役の男性に台詞を話しているところでした。


 「どうして、私には何も話してくれないの? 私のこと、どうでもいいの」


 「よくない! よくないからこそ・・・ 話せないんだよ!!・・・」


 「そんなの・・・ ずるいよ・・・」


 その二人の会話を見て、瓜はそれぞれが自分とフィフスが重なり、無意識に口を開いて見入っていました。



______________________



 対して廊下に移動していたフィフス。船での一見で瓜に遠慮は無しと言われた彼ですが、こればかりは彼女には相談することの出来ない捜し物をしていたのです。


 『クッソ・・・ リビングにはなかったか・・・ 』


 彼は左手首を右手の指で摩ります。しかしそこには瓜から貰ったブレスレットを付けていませんでした。彼は今、そのブレスレットを捜していたのです。


 『てっきり家に置いたままにしていたと思ったが・・・ まさか戦闘中に俺の熱で溶けちまったとかじゃないよな・・・』


 あのブレスレットは瓜から貰ったもの。船の上での一件もあって大切にすると心に決めていたあれをこうも簡単になくしては示しが付かないと思っていたのです。





 そしてそのブレスレットは現在・・・





 「ハァ~・・・」


 石導家にて、自室のベッドの上に座っていた美照の左手首につけ、ニヤけた目でまじまじと眺めていました。


 瞳をキラキラさせながら楽しんでいる彼女でしたが、突然部屋の扉が開く音が聞こえてきたことで我に返り、咄嗟にブレスレットを腕ごと背中に隠して扉の方に体を向けました。


 「ナッ!! ノックぐらいしてよ!!」


 しかしそこに入ってきた鬼の形相になってどす黒いオーラを放っている平次を見たことで血相が変わってしまいました。


 「み~て~る~・・・」


 「お! お兄!? どうしたのよそんな怖い顔して・・・」


 「そんなことより、お前今何か隠さなかったか?」


 「隠してない!! 隠してないわよ何も!!・・・」


 焦って詰まった声を出してしまう美照に平次はほとんど変顔のそれで表情を変え、怖いくらいの笑顔になりました。


 「妹よ・・・ 何かこの兄に言うことがあるのではないか?」


 「い、言うこと?」


 ピエロのお面のような笑顔になっていた平次は、不気味に首を傾げながら美照に聞き出します。


 「なんでも・・・ お前に好きな人が出来たとかどうとか・・・」


 「えぇ!?・・・ な、なんでそんなことお兄が気にするのよ!!」


 「気にするさ、実の家族なんだから・・・ さあどんな奴だ? どんなゴミ虫がお前にまとわりついたんだ? さあ教えろ!!」


 どんどん威圧を強めて聞き出そうとする平次に美照が左腕をベッドに押し込みながらどうにか誤魔化す言葉を考えいると、その平次が突然背中から冷気を当てられ、氷で体を丸々固められてしまいました。


 「・・・ほえ?」


 美照が目をパチクリさせて動揺すると、凍らせた平次を退かせる形でグレシアが部屋に入ってきました。


 「乙女のプライバシーにズケズケ踏み込まないで。」


 「グレ姉・・・」


 「悪いわね。まあでも、兄っていうのは妹に中のいい男が出来たら気に入らないものなのよ。そこは分かってあげて。」


 美照はグレシアの言うことが少し気になりました。


 「? その言い分、グレ姉にも兄がいるの?」


 それを言われて平次を押し運んでいたグレシアが一度動きを止めました。そして顔を向けないまま、どこか気を落としたような声で返事をしました。


 「ええいるわ・・・ とても尊敬している。今も異世界(向こう)にいるの・・・」


 そこで話を切ってグレシアは部屋を出て行きました。そこからいつもと違い黙って廊下を進んでいると、ポケットの中のスマートフォンから着信音が鳴りました。


 「?」


 画面を見ると、メッセージを送ってきたのは鈴音でした。


 「明日重大発表あり! 乞うご期待!!」


 このメッセージに関することが、今度の事件にフィフス達が巻き込まれる発端となるのですが、それを彼らが知るのはもう少し先の話です。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・石導 平次


 自分の恋愛には甘々だが可愛い妹の恋愛事情となると物理的に壁を壊して関わってこようとするダメなシスコン



グレシア「それだけ愛されてるってことじゃないの?」


美照「度合いぐらいは考えて欲しいわよ・・・」




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