第24話 最悪の罠
緊迫した二人。相手の出方を伺い、フィフスは考え事もあって動けないでいた。そこに化けゴウモリは容赦無く責め立てる。
「さて、手の内をさらしたところで、消えてもらいますか・・・」
『なるほどな、さっきの切り返しの速さもそれなら説明がつく。不味いな・・・ 明らかに地の利はは向こうにあるってことだ。』
フィフスは危機的状況からか、普段以上に頭が回転し、それによってあることを思いだした。
『待てよ、もしこいつの言ってることが事実なら、一つ矛盾がある。』
フィフスはさっきの自分たちの会話を思い出した。
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「チッ、また本体は別の所か。」
「ええ、貴方が追っていたバスの中ですよ。ここへ来たのは外れでしたね。」
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『だがさっきのことから制限については本当。なら奴の本体も、同様にここからは出られないはず。てことは部屋のどこかには隠れているはずだ・・・ ならそれを見つけてすぐに潰せば・・・』
フィフスは自信の感覚を集中させて音波攻撃を避けながら辺りを細かく見回した。しかしそれを何度もやったところで、めぼしいものは見つからなかった。
『どうなってんだ? いくら見渡してもそれらしき物が無い。かといって物に隠してんなら容赦無く攻撃をしすぎてる・・・』
当ても無い中のフィフスは、相手の攻撃にいつ巻き込まれるやも分からない瓜の救出を優先することにした。流石の化けゴウモリも、契約者の望みの品に傷はつけられないと思ったからだ。
「よくよけ続けますねえ・・・ さっきと違って音波攻撃なのに。」
「バカスカ単純に打ち過ぎなんだよ。『おかげで逃げ道は見えたがな。』」
フィフスは瓜の腕を引き、そのまま引っ張りながら目測で測った脱出路を早足で進んでいった。
「人一人引き連れて、ここから出れるとでも?」
化けゴウモリは瓜にあたらない範囲で超音波を繰り出した。しかしフィフスは剣に上手い角度でそれを弾き、別の音波にぶつけることで相殺した。
「何!?」
「じゃ、お前の相手はまた今度で。」
直接攻撃した相手の手をかわし、フィフスは出入り口まであと少しになった。
「よし、とりあえず出るぞ。」
そして二人はとうとう部屋から抜け出した。
・・・かに思われたが・・・
「ナッ!!?」
フィフスの動きは部屋を出てすぐに突然止まった。いや、正確には止められたのだ。どういうことかとフィフスが振り返ると、その理由がわかった。
「マジか・・・」
それは、瓜が出入り口から先へ体のどこも出せていなかったからだ。それにより、彼女を引っ張っていた腕が引っかかったのである。
「これは、まさか・・・」
「振り払いなさい。」
瓜は彼の命令を聞き、フィフスの手を振りほどいた。彼女の後ろにいる化けゴウモリは、戸惑っている彼の様子を見て、あざ笑うかのようにニヤけた目線を返して来た。その上口を手で抑えている。
「残念でしたねえ。貴方はまだしも、彼女はこの部屋から出ることはありませんよ。」
「・・・どういうことだ?」
「ククク・・・ さあ、自分で考えたらどうですか?」
フィフスはすぐに思い付く当てが二つあった。一つは催眠術によって動きを止められたこと。しかしその線は薄いと見ていい。それで止めたにしては瓜の位置が綺麗すぎたからだ。今の瓜は、丁度捕まれた腕の先が部屋の出入り口の手前で止まっている。指示をして止めるなら、もっと中途半端な位置になるのが普通だ。
『これは、どう考えてもタイミングがよすぎるよな・・・』
となると思い当たるのはもう一つの方だ。しかし、フィフス自身はこのことは内心当たって欲しくなかった。しかし、彼の考えを察したのか、化けゴウモリは笑顔で白状した。
「どうやら分かったようですねえ。なら答え合わせといきましょう。」
そう言って彼は軽く指ぱっちんをした。すると、瓜の胸の中心辺りから、黒いもやのようなものが出現した。これが何を刺しているのかは明白である。
「やはりか・・・ 『悪い予感は当たるもんだなぁ。』」
「そう、彼女がこの部屋から出られない理由。それは私の本体が、この娘の中に入っているからですよ。」
フィフスが完全に手詰まりになってしまった。相手が言うことの意味、それは『瓜を巻き込まなければ化けゴウモリは倒せない』と言うことだからだ。
『おいおいおいおいどうすんだ、これ・・・・」
「さあ、これで私の秘密については全て話しました。この場において、貴方は一体どうしますか?」
流石のフィフスも、この事実はキツく響いていた。
『さぁて、どうすりゃ良いんだよ・・・』
<魔王国気まぐれ情報屋>
魔人のモチーフ
・土蜘蛛
『蜘蛛の糸』より蜘蛛
・化けゴウモリ
『卑怯なコウモリ』よりコウモリ
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