第255話 処刑人フログ
距離が空いた三人と一人の間。向こうにそんな様子はありませんが、三人は彼にどう攻めるか模索しながらまたも会話を始めました。
「処刑人・・・ 組織内にそんな役職があったとはな・・・」
「組織とは秩序が必要。それを破れば罰を与えるものだ。最も、その道中でお前達に先に殺されても自業自得だがな。」
「冷め切った考え方で・・・」
「でも確かに、意味はありますね・・・」
微苦笑をして白兎がリアクションとります。ですがこれは会話の内容に対してというより、相手の立ち位置に不利なものがあったのです。
『どうにも攻めずらい・・・ 見晴らしのいいところに来たのが仇になったな。
向こうはぱっと見で後ろ以外を見張らせる。対してこっちは三人仲良く横並び。さっきのアイツの速度から見て下手に動いても不利になるだけだな。コウシンも狒々の移動で使っちまった・・・ だったら!!』
「怖いな・・・ そんなのに追われる魔神の気持ちになるとな!!」
フィフスは会話をすると見せかけてフログに向かって真正面から放射炎を放ちました。当然そんな攻撃が通じるわけがなく、バックステップで範囲外に逃げられてしまいます。
しかしその隙に足の速いルーズがフログの後ろを取り、部分変化させた右手の爪で攻撃します。フログは右腕を後ろに回して剣の刃で受け止めました。
『ノールックで!・・・ しかもかなりのパワーだ。このまま我慢比べをしたら押し負ける。だけど!!・・・』
ルーズはフログの力を受け流すように手を離しながら後ろに下がります。力んでいたことが災いしてフログが少し前のめりになると、放射炎が晴れかけたところからフックとワイヤーが飛び出し、彼の体に巻き付いてしまいました。
「ッン!!・・・」
炎が晴れた先には、ウインチハンドの持ち手を彼に向けている白兎の姿がありました。
「拘束完了!!」
フログが巻かれたワイヤーをほどこうともがいていると、そちらに意識が向いてあることに気付いていません。さっきまで放射炎を出していた位置からいつの間にかフィフスがいなくなっていたのです。
フログは一瞬そうした後、自身の足下に不自然な影の形をしていることが見え、もがく力をそのままに真上を見ると、そこに移動したフィフスが頭の上で組んでいた両腕を肩の真横に動かしている姿がありました。
「!!?」
「王子・・・」
「念には念を入れて・・・ あぶり焼きだ!! <火炎術 破壊炎>!!」
フィフスはそのまま両腕を前に出して破壊炎を発射し、フログに頭から直撃させました。彼が炎に包まれ、周辺ごと燃えているままにフィフスは地面に着地し、ルーズが彼の隣にまでやって来ました。
「王子、これではトドメになったのでは?」
「手加減はしてある。情報がはけなきゃ意味無いからな。」
「王子・・・ 貴方は・・・」
「ウオッ!!?・・・」
白兎の異常な声に残りの二人が反応すると、彼は前に伸ばしていた右腕。その先のワイヤーが腕ごと揺れ始めていたのです。そして次の瞬間には・・・
ガガガガガァ!!!
「やばっ!!・・・」
白兎のワイヤーは激しく揺れ動き、その力に白兎自身も引っ張られて前に転けてしまい、そのまま右腕が引きちぎられてしまいました。
、破壊炎が晴れたところには白兎のワイヤーを引きちぎり、その上纏っている甲冑にすらどこもダメージを受けたのが見受けられないフログが立っていました。
「ナッ!!・・・」
「「!!?」」
一番驚いたのは、技を発射した張本人のフィフスです。
「オイオイ・・・ 破壊炎を真正面から喰らってこれかよ・・・」
動揺しながらもフィフスはすぐに次の技を出そうとしますが、対してフログが剣を真上に上げ、そこから小さな謎の物体を出しました。
「これ以上は無駄だな・・・」
「?」
フログがボソッとそう言った直後、剣から一瞬だけ飛び出した物体は上空にて彼からフィフス達の上に被さるまでの周囲一帯に黒い雲を発生させました。
「エッ!?・・・」
一瞬で大規模な技を出した事にフィフスは技の動きを止めてしまうほど度肝を抜かれたリアクションを取りました。
「これは・・・ マズくね?」
すぐに雲からは雷がゴロゴロと鳴り響き始め、そしてフログは剣を振り下ろしました。
「ヤバッ!!」
フィフス達三人は逃げることももう出来ない事を悟り、降り注ぐ落雷の速さにどうすることも出来ず、せめてもと受け流す態勢を取り、無理がありながらもこの場の難をどうにか凌ごうとしました。
落雷が地面に激突すると共に「ピカアァ!!!」っと強い稲光に四人まるごと包み込まれ、フィフス達はあまりのまぶしさに目を閉じてしまいました。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
たった一瞬の大きな出来事が終わって音と光が収まると、その場には三人がさっきと同じ体勢のまま立っていました。
自分達が無事なのかもよく分からないままゆっくりとその目を開くと、変化があったのは自分達ではなく、その目の前にいた相手の方でした。そこにはさっきまで立っていた場所からフログの姿が影も形も綺麗になくなっていたのです。
「これは・・・」
「逃げていった・・・ と言うか、帰っちゃったのかな。」
「・・・」
一応警戒を継続させて目付きを鋭くさせながらも三人は構えを解き、改めて前を見ました。そこには、またも同じ器用な破壊後が残っていました。これでこれを作ったのはフログであることが確定しました。
「あの甲冑の男は・・・ 始めからこちらを相手する気はなかったって事かよ・・・」
フィフスはフログに自分達が相手にすらされていなかった事実に言葉に出来ない憤りを感じ、狒々の血が付いた拳を強く絞るように握りしめました。
「王子・・・」
そんな彼のどこか変な様子を、ルーズは黙って見ていることしか出来ませんでした。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・フログが最低限の動きで攻撃をよける理由
カオス「鎧着てると蒸れるからね。」
フログ「勝手に答えるな。」
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