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第254話 甲冑の男

 突然聞こえて来た轟音。それと同時に背中の方から一瞬強力な光が点滅するのが見えました。この不自然な三人が全員反応し、フィフスは剣を狒々に突き付けて警戒をしたまま全員で顔を後ろに向けます。


 轟音が聞こえて来た場所には煙が発生していましたが、徐々にそれが晴れていきます。そうして見えてきたのは、全員に甲冑を着込んで顔も覆い隠している男がまるで起動前のロボットのような出で立ちで出現していました。


 しかし三人が驚いたのは、その男の周辺に出来ていた破壊後が、自分達が調査していたあの器用な破壊後に非常に酷似していたのです。


 『甲冑を着込んだ男!! 前にドクターのラボで姉貴が見かけたって奴か!!』 ※第118話より


 いきなり現れた敵の加勢に三人が身構えます。登場時の破壊の跡から、下手に近付くのも危険だと判断していたのです。


 しかし相手がこちらの都合を考えてくれるはずもなく、フログは右腕の装甲の中にしまわれていた剣の刃を出現させ、彼らに向かって無言のまま足を踏み出します。


 すると次の瞬間、一瞬稲光のような閃光が発生すると、瞬きも与えぬ間にフログはフィフスの隣の位置にまで移動していました。


 「ッン!!・・・」


 「王子!!」


 フィフスも狒々に向けていた剣を戻して対応しようとし、ルーズと白兎も彼のアシストに走り出しましたが、とても間に合いそうにありません。フログはその場でも何も言わないままに、既に上げていた剣を振り下ろしました。





 「ガアアァ!!!・・・」




 フログの攻撃の痛みに叫び上げる声。しかし・・・





 ・・・その叫び声はフィフスではなく、その後ろにいた狒々が発したものでした。


 そう、フログが攻撃したのはフィフスではなく、狒々だったのです。元々ダウンしていたところに追撃を受けた痛みで逆に立ち上がり、一目散にその場から逃げ出したのです。


 「ガアァ!! アアァ!!!」


 仲間内で攻撃したことにフィフス達が目が点になって驚いて固まってしまいましたが、フログは逃げ出した狒々を追うこともなく数歩だけその場から前に出ました。


 「まだ逃げるとは・・・」


 そう言うと彼は左手を広げ、その手のひらに描かれていた魔法陣に、先の攻撃で刃についた狒々の血を付けました。


 すると魔法陣は青黒く光り出し、それと連動するように息を荒げながら走っていた狒々の動きが、そのまま氷で固められたかのように突然止まりました。


 「ンガッ!!?・・・」


 フログは血を付けた左手の平を狒々に向け、その手をゆっくりと握り始めました。同時に固まっていた狒々の体はみぞおちを中心として、フィフス達から見て左巻きの渦を巻いて圧縮されていきます。


 「狒々が・・・ お前、何を・・・」


 「・・・」


 「嫌だ!・・・ イッ・・・ ヤッ・・・ ダアァーーーーーーーーー!!!」


 狒々は必死に声を上げて抵抗しますが、その行為もむなしく、フログが左手を完全に握りしめると同時に、その体は渦の中心に吸い込まれ、その存在を完全に消されてしまいました。



______________________



 同時刻、新たな契約者を捜すために町中を徘徊していたカオス。ふと何かを感じ取ったように黒い魔道書のいつもとは違うページを広げ、そこから一冊の別の魔道書を召喚しました。


 「あ~あ・・・」


 カオスはそれを右手に掴み、弄ぶように見ます。


 「また一人・・・ ほんと手綱が外れた途端に自由奔放だなぁ・・・ ウチの構成員は。」



______________________



 終始この異様な光景に三人は見ていることしか出来ませんでしたが、フログは今だ無表情のままに立っています。


 フィフスは事が終わり、フログが動かないことを見るとすぐに剣を振り上げましたが、フログはそれを見向きもせずに剣で受け止めます。


 フィフスは初手を軽々と防がれながらもここでは驚くこともなく、もう一度フログに声をかけました。


 「お前・・・ 何故自分の味方を殺した? こちらに協力した・・・ わけないよな?」


 そこでフログはようやく彼に口を開きました。


 「俺は俺の仕事をしただけだ。」


 「は? 仕事だと?」


 「・・・」


 またフログは黙り込みました。フィフスはどうにも決まった言葉にしか返事をしないロボットと話をしている思いになりました。


 若干気持ち悪さがありながらも、フィフスとて何も考えていないわけではありません。彼が会話を持ちかけている間にルーズと白兎をフログまで近付けていたのです。


 二人は合わせたように動いて一気にフログに背中から攻撃を仕掛けます。その攻撃がフログに届きかけた直前、彼はフィフスとぶつけていた剣を動かす方向を変え、素速い動きで後ろの二人の攻撃を軽々と捌いてみせました。


 「「ナッ!!?」」


 続いてフィフスも放射炎を撃ち出します。ですがそれすらフログは最低限の動きで回避され、そのまま距離を取られました。


 「アイツ・・・ 動きに無駄がない。」


 「その上、見てるところ反射速度は僕と同等、下手したらそれ以上ですね・・・」


 「感覚が鋭敏な人狼と同等って・・・ 洒落になんないんだけど・・・」


 三人は再び横に並び、中心にいたフィフスが相手に剣の先を向けて問いかけました。


 「お前、何者だ?」


 彼は武器を下ろし、この質問にも手短にこう淡々とした口調で答えました。





 「俺の名は『フログ』。魔革隊が幹部の一人。組織に所属する魔人の管理人・・・




  ・・・もとい、()()()だ。」





 「処刑人!?」


 三人とフログの間に、狒々を相手にしていたときとは比べものにならない緊迫した空気が流れ出しました。

・小ネタ


 「人事部 カオス!!」


 「副社長 セレン!!」


 「管理職 フログ・・・」



 「「「株式会社 魔革隊!! 新入社員募集中!!!」」」




 ※してません





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