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第253話 狒々の行動真意

 次に狒々が正気を取り戻したとき、自分が立っている場所はさっきまでいた路地裏とは全く違う景色が見えました。


 一体どうなっているのかと周りを見ながら動揺していると、正面にさっき美照とのやりとりに横槍を入れてきた男の姿がありました。しかしその姿は人間のそれではありません。


 「お前、お前も魔人か!!」


 赤い肌に頭に生えた二本角。腰から引き抜かれた短剣。その風貌に、狒々はある存在が頭に浮かびました。


 「そうか・・・ お前が噂に聞く『獄炎鬼(ごくえんき)』か!!」


 二人の間に入り、今狒々をここまで連れてきた男、『獄炎鬼』ことフィフスは、その呼ばれ方をされて少し不機嫌になりました。


 「その呼び方は止めろ。」


 「どうして俺の場所が分かった!?」


 狒々からの質問にフィフスは歩いて距離を詰めながら説明しました。


 「この前見つけた器用な破壊後。まずは怒った場所はと思って調べてみた。するとどうだ。ここ数週間の間、この辺りで若い女の行方不明事件が多発してるらしいじゃないか。」


 フィフスは左手をズボンのポケットに入れ、パックに入れられた狒々の毛を取り出します。


 「んで、昨日見つかったこれを元に追った。」


 「追っただと!? そんなものでどうやって!!?」


 「体は綺麗にしておくんだったな。残り香で道筋までくっきりだったぞ!!」


 そこでフィフスが足を動きを速めて間合いを詰めて術装をした剣を振り下ろしますが、ギリギリの所で狒々はそれを回避し、彼を返り討ちにしようと腕を動かします。しかし・・・



 バシッ!!・・・



 「ガッ!!?・・・」


 狒々は突然後ろから頭に蹴りを入れられ、フィフスに攻撃できずに距離を付けられてしまいました。何が起こったのかと首を向けると、丁度自然に着地したルーズがいました。


 「全て自分一人でやったように言わないでください。このことのせいで僕まで学校をサボる羽目になったんですから・・・」


 「んだよ、ノリの悪い。」


 「貴方と違って僕は執事の仕事で忙しいんです。早く帰らせてください。」


 「お前! それが主人に対する態度かよ!!」


 「この世界での僕の主人は鈴音様です!!」


 いつの間にか狒々は蚊帳の外に置かれ、フィフスとルーズによる言い争いが始まってしまいました。狒々が二人が会話をしている間に逃げようとすると、横を向いて動きかけた彼の顔のすぐ前を銃弾が横切りました。


 「!!?」


 首を向けると、今度は既にスーツを着込んだ白兎がマグナフォンの銃口を狒々に向けていました。


 「逃がしはしない。」


さっきの音で我に返った二人も、白兎の横に並んで狒々を追い詰めます。狒々はこの状況に段々苛立ち、とうとう三人に向かって唾を飛ばしながら怒鳴り出しました。


 「お前ら! 人の楽しみの邪魔をするな!!」


 「()()()?」


 三人はその単語に引っかかりました。魔人は大抵契約者の願いを叶えることに関してあまり楽しそうにしている例がなかったからです。


 「契約者の願いを叶えるのが楽しみなのか? 随分変わった奴だ。」


 フィフスが話の流れでそう言うと、狒々は顔をしかめてこう答えていました。


 「あ? そんなこと、もう二度とやる気はない!!」


 「()()()だと?」


 狒々が言った事に三人は吹っ飛びかけていた緊張感が一気に戻ってきました。そして息を呑みかけたフィフスが口を開けました。


 「まさか・・・ お前、もう契約を・・・」


 「終わらせたさ。獄炎鬼、お前が船の上で暴れていたときにな。」


 そのとき、フィフスは頭の中に以前乗ったあのクルーズ船での事件のことがフラッシュバックしました。あの時彼は怒りのままに渋木を殺し、結果的に全て魔革隊の筋書き通りに動かされていました。


 今にして思えば、カオス達がわざわざ渋木に頭を下げて豪華客船に乗ってまでやりたかったことがなんなのか分からなかった。しかし、思い出したことでなんとなくの筋書きが読めました。


 「お前ら・・・ 人身売買会場の売り物にされかけてた人間に契約させたのか!?」


 「勘がいいなお前、その通りだ。」


 へラッと軽く笑ってそう返事をした狒々の態度にフィフスは目が血走り、隣にいた二人を放って走り出し、笑い続けていた狒々の左頬に、殴り込みました。


 その単純な攻撃は狒々の左手で受け止められてしまいます。


 「話を聞いて冷静さを欠いたか? 自ら隙を作るとは・・・」


 フィフスを罵り、爪で相手を切り裂こうとする。しかしその瞬間、彼は無防備になっていた狒々の腹に左膝蹴りを決め、怯んで手を離した狒々に彼は連撃を叩き込み、狒々は完全に参っていました。


 「あらら・・・ 俺らの出番ないじゃん・・・」


 「王子・・・」


 ルーズはどこかおかしいフィフスの様子に何か胸騒ぎを感じながらも、そこからすぐして狒々はフィフスの猛攻に参っていました。攻撃が止まったフィフスの拳や膝には、狒々の血が付き、その一部がポタポタと地面に落ちていました。


 「アンタが調子に乗ってムカつかせてくれたおかげで、キレが増した・・・」


 「アッ!・・・ ガガッ・・・」


 深くダメージを受けて尻餅をつく狒々。フィフスはてに付いた血を振り払い、目付きを元に戻すと上から目線で狒々に問いかけました。


 「さて・・・ お前からは色々と聞きたいことがあるんでな・・・ 素直に話してくれんなら、これ以上の暴力はなしだ。」


 「ほ、本当か?・・・」


 狒々は完全に負けを認め、恐怖に顔を引きつっています。


 「そ、それなら、話す!!・・・ 話すから!! これ以上は!!」


 フィフスもこの弱腰に強気のままで見張り、狒々は自分の知っている魔革隊の情報を言い出した。





 と、する直前でした・・・





 ドガアァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!



 突然、四人のいる位置から少し離れた所から大きな轟音が響き渡って来ました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・フィフスからは匂ったと言われていましたが、実は狒々はモテるために匂いには気をつけています。


 ただし匂いを気にするあまり若干甘ったるい匂いが流れ、それをルーズに特定されてしまいました。





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