第249話 女子達集合!!
学校の屋上。始業式のためはやく授業が終わった面々は、各々鞄を持って次々家路や部活に向かって行きました。その中で鈴音はまたも二人に声をかけてきました。
「ふったりっとも~!! 放課後お昼でも食べに行こうぞ~!!」
しかしその二人はそれぞれ言い分を出してそれを断ってきました。
「ア~・・・ スマン。俺はこれから用事だ。」
「私は・・・ 志歌さんと、先約が・・・」
「えぇ~・・・ それじゃマッチーに便乗させて~・・・」
鈴音は可愛らしく頬を膨らまして瓜にすり寄り、彼女はそれに困惑して鞄に荷物を入れていた手が止まってしまいます。
「あの・・・ ちょっと・・・」
しつこく頬を刷り続ける鈴音でしたが、後ろから制服の裾をつままれて瓜から離されてしまいます。なんだと思って彼女が振り返ると、目を細くしたグレシアがいました。
「お~、シカシカ・・・」
「高校生にもなって子供っぽいわよ・・・ 別に来るならいいけど・・・」
「ホントか!!」
遠回しに許可を貰ったことで鈴音は瞳を輝かせて掴まれた体を降ろされます。そんなことを聞いて彼女の契約魔人が黙っているわけがありませんでした。
「お待ちくださいお嬢様!! それなら僕も!!・・・」
「男子は厳禁よ! それに招集したのはアタシじゃないし。」
「そんな!!・・・」
と、文句の十や二十程軽く言いたそうなルーズでしたが、今度は彼がフィフスに制服の裾を引っ張られて教室の外に連行されていきました。
「お前は俺を手伝え。今回はお前がいた方がはやく片付きそうなんでな・・・」
「あの~! 僕をお嬢様から引き剥がさないでくださいぃ!! というかまだ僕帰りの支度すんでないんですけどぉ!!?・・・」
しれっとそのすぐ後に白兎もついていき、三人は教室を離れていきました。
「連れてかれちゃったぞ・・・」
「ま、まあ・・・ これで割り込む男子もいなくなったし、アタシ達も行きましょっか。」
グレシアが話に区切りを付けて瓜と鈴音を引き連れようとしますが、その前に瓜はふと気になったことを質問してきました。
「あれ? 男子というと・・・ 平次君は・・・」
「ああ、アイツなら・・・」
グレシアは台詞の途中に顔の向きを変えないまま自身の右に指を差した。その指された先には、先程一年生の群れの中でとことん眼中にかけられなかった平次が真っ白になって崩れ落ちていました。
「既に自爆してミンチになっているから大丈夫。」
「「・・・」」
二人は平次の姿を見て哀れに思いながらも、グレシアの言葉に従って移動することにしました。
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リュックを背負い、帰り道とは違う道を進んでいる瓜と鈴音。グレシアはその招集した人とさ気に入っているとのことです。
その移動中に、瓜は時折並んで歩いている鈴音を探るように見ていました。この前フィフスが白兎との会話の時に言っていたことが心の奥に突き刺さっていたのです。
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「俺達の陣営の中に、相手側の内通者がいるって言うのか?」
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『もしかしたら、鈴音さんや志歌さんがゴー君が言っていた内通者がいるかもしれない・・・ いやいや! そんなこと、この人達に限ってあるはずない!! でも・・・』
瓜は自分の友達を疑いたくない一心と、その内通者の行動で自分以外の誰かが被害に遭う事への懸念で揺れ動いていました。
こんな事を考えている自分が醜いことも、彼女は重々承知しています。
『こんな事を考えているのは自分だけ・・・ ダメダメ! せっかく手に入れた友達を遊ぶってのに、こんなこと考えてちゃ・・・』
心のもやつきは残ったまま、二人は目的地にたどり着きました。
「あ・・・ ここは・・・」
小声を漏らす瓜。やって来た場所は、以前平次と来た喫茶店だったのです。まさかと思った瓜と残り二人が入店すると、そこで店員、どころか瓜の予想通りの人物がやって来ました。
「いらっしゃ~・・・ アッ! ウリーちゃん。それにベルちゃんも!!」
「あ! 小馬ッチのお姉ちゃん!!」
鈴音はサードが現れたことに驚きますが、特に調子は崩さず話を続けました。
「ここでバイトをしているのか?」
「そうよ。さっき魔女っ子ちゃんが別の子を連れて入ってきたけど、二人はそれに合流しに来たの?」
「別の子?・・・」
固くなる瓜にサードは彼女の肩に「ポンッ」と手を置いてクスリと笑います。
「フフッ、相変わらず固いわね。ついてきて、案内するわ。」
サードに連れられて二人が店の奥を進むと、窓の側の席にグレシアと、その隣にもう一人、瓜達が知らない別の少女が座っているのが見つかりました。向こうも気が付いたようで、声をかけてくれます。
「あ! 来た来た。こっちよ。」
そして二人が反対側の席に座ると、早速サードが注文を聞いてきました。
「それで、二人は何飲む?」
「ミルクティーを・・・」
「オレンジジュースお願いするぞ!」
「分かったわ。」
サードは女子高生達の会話を邪魔するのも野暮だと思ったのか、素直にその場から下がっていきました。
そうしてその場が静かになると、グレシアの隣の少女が最初に話し出しました。
「この人達が、グレ姉のお友達?」
「そうよ。」
「町田 瓜です・・・」
「日正 鈴音だぞ!」
二人が自己紹介をすると、次にグレシアが隣の少女に手を向けて紹介しました。
「この子は『石導 美照』、平次の一つ下の妹よ。」
「この子が!? なんというか・・・ 全然似てないぞ。」
「そ、そうですか?」
「は、初めまして。」
初対面の先輩が相手だからか、美照の態度がグレシアに対するものと違ってよそよそしくしていました。しかしグレシアはまるで瓜に対するサードのようにグイグイと接しています。
「どうしたのよ。いつもならもっと元気いいのに・・・ それとも何? これから話すことに今になって恥ずかしくなってきたとか?」
「そんなことないわ。グレ姉ったら意地悪よ・・・」
すると美照はグッと表情を決めて、机をドンッと叩いて身を乗り出し、目の前の二人にハッキリ言いました。
「その!!・・・」
「「!!?」」
「先輩達に、探して欲しい人がいるんです!!」
「探して欲しい人?」
「誰を・・・」
美照は高ぶった気を落ち着かせるために鼻で深く息をし、そして小さな声で捜す人の詳細を伝えました。
「私を・・・ 助けてくれた、『ヒーロー』・・・」
「「ヘッ!!!?」」
二人は白目を向いて驚きの表情に石のように固まってしまいました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
側からは離れたものの話は聞こえる位置にいるサード
『フフフ・・・ 可愛い子がこんなにたくさん、眼福だわ・・・』
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