第247話 出会っちゃった!!
気を失い、倒れ込んでいた美照。そこに一人の男が近付いて来ました。後ろ姿から見てさっきのナンパ男とは違うようです。
彼は美照を見て参ったように頭をかいています。
「おいおい、気絶しちまってるよ・・・ 参ったなぁ、このままおいておくって訳にもいかなそうだし・・・」
口元をむず痒くしながら頭から手を下ろすその人は、もう一度よく彼女の姿を見てその服装に気が付きました。
「ん? この服は・・・
・・・!! ウチの制服じゃねえか!!」
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「う~ん・・・」
そこからしばらくして気を失っていた美照は目を覚ましました。その目の先には、彼女の知らないどこかの天井が映っています。
「ここって・・・」
「よかった、気が付いた・・・」
美照が頭をぼんやりさせたまま顔を横に向けると、そこには中学時代からの彼女の友人、『ユキ』がホッとした様子で彼女を見ていました。
「ここは、貴方が今日から通う高校の保健室よ。」
「ユキ・・・ 私・・・ どうして・・・」
「さっき私の所に運ばれて、それで保健室に運んだの。驚いたわ、入学式一緒に行こうって言って待ち合わせ場所に来ないと思ったらこんなとこになっていたなんて・・・」
「・・・そうだ! 入学式!!」
美照はベッドから立ち上がり、すぐにその部屋から出ようとします。しかしそんな彼女にユキは悲しい現実を伝えました。
「入学式ならもう終わったわ。貴方が気を失っている間に・・・」
「ガーーーーーーーーン!!!・・・」
美照は頭の上に隕石が落ちてきたような衝撃に襲われ、そして周りから黒いオーラが見えるほど落ち込んでその場で魂が抜けたように崩れてしまいました。
「そんな・・・ 間に合わなかったなんて・・・ せっかくの高校生活・・・ 最初の重要な一ページが・・・」
「どうせ道に迷ってたんでしょ? だから美照ちゃんの家まで迎えに行くって言ったのに。」
「そ、そこまで迷惑かけたくなくて・・・」
口を3の字に出しながら自分の言い分を語る美照に、ユキの方はバッサリと正論を言って説き伏せました。
「そんなの、友達が入学早々倒れられた方がよっぽど迷惑です!!」
「ウグッ・・・」
美照はもう過ぎてしまったことに取り返しがつかないことを落ち込みましたが、そこで次に別の事が気になりました。
『あれ? そういえば・・・』
彼女は、自分が何故学校にいるのかが気になりました。
「ねえユキ・・・ 私、どうやってここまで来たの?」
それを聞いてユキはそうそうと話したがっていたようです。
「そうそう! 私もそのときはビックリしたのよ。だってあのとき・・・」
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ユキが言うには、それは彼女が待ち合わせ場所で待ち続け、一度腕時計で今の時刻を確認していたときでした。その時刻は、もうそろそろ学校に向かわないと間に合わない頃でした。
「ハァ・・・ テルちゃんったら、これってまた迷ったのね・・・」
彼女が腕を降ろし、ため息をして仕方なく一人で先に学校に向かっていくと、一が詰まる校門でひときわ目立っている存在がいました。
その人は丸っきり私服の姿でしたが、堂々と正門から入ろうとしているのを教師に止められているところでした。周りにいる新入生がザワザワと騒ぎながら二つに割れた入り口を通っていきます。
「?」
気になった彼女がそこに近付くと、その止められている人の腕には、誰かが抱きかかえられているように見えます。志歌その抱えられている人は、どこかで見覚えがあります。
『あれ? まさか!!』
彼女が走るとその二人の会話の内容が耳に入っていきました。
「何をしているの君!? そんな格好で学校に来て!! 今日は貴方の登校日じゃないでしょう!!?」
教師が話をしているのはアポもなくやって来たこの学校の生徒のようです。
「たまたまぶっ倒れてる生徒を見つけたんだよ。生徒手帳もないし荷物も名前がなかったからここに連れてくるしかなかったんだ。とにかくそっちで保健室にでも・・・」
「テルちゃん!?」
近付いて彼女が見たのは、見知らぬ男にお姫様抱っこで抱きかかえられている美照だったのです。すると声が聞こえた男が彼女の方を見て声をかけてきました。
「おお、お前、コイツの知り合いか?」
「え? ああ、ハイ・・・」
「悪い! 急ぎの用事があるからコイツ預かってくれねえか?」
「はい!?」
するとその男は唐突なことに戸惑っているユキに気絶している美照を託し、そのままモンと反対方向を向いて走り去っていき、瞬きする間にその姿を消してしまいました。
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「・・・て、ことがあったのよ。」
「・・・」
ユキが事の経緯を話し終わると、それを聞いていた美照は立っていたその場で石のように固まってしまいます。
「本当、あの人がわざわざ運んできてくれなかったらどうなっていたのか・・・ ってあれ? テルちゃん? 聞いてるの?」
一言も彼女の話に関する返事をしませんでした。自分の世界の中に入っていたのです。
『気絶する前のこと・・・ あれは、夢じゃなかったんだ!! 襲われていた私を助けてここまで運んでくれたなんて・・・
・・・どんな人なんだろう、その人。』
「ユキ!!」
「?」
ユキがようやく口を開いた美照に何を言い出すのかと気にしていると、彼女は振り返ってこんなことを言い出しました。
「私! その人にまた会いたい!!」
「エェ!!?」
ユキは驚きました。友人の言っていること。ではなく、そのときの友人の表情に・・・
そのときの美照の表情は、まさしく恋に落ちたように頬が真っ赤になっていました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
待ち合わせ場所でそれなりの長時間待っていたユキ。
ユキ『遅いな~・・・ 自販機のコーヒーもう何杯目だろう?』
ユキ 実は結構お金持ちの家の子
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