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第245話 きな臭いこと

 白兎は玄関にやって来た顔が暗くなっている二人に案内され、リビングの食事用のテーブルの席に腰掛けました。彼が息をつく間に、瓜がいそいそと客人用の湯飲みにお茶を入れ、トレイに乗せて持ってきてくれます。


 「お、お茶です・・・」


 「あ、どうも~」


 白兎は受け取ったお茶をすぐに飲み出します。瓜がトレイを持ったまま既に座っていたフィフスの隣の席に縮こまるように座り、そのフィフスがしかめっ面で機嫌が悪いのを隠しもせずに話しかけます。


 「何の用だ? わざわざ人の家まで覗いて。」


 白兎は湯飲みを口元から離し、手に持ったまま話を返します。


 「そう怖い顔をするな。あの場じゃ話しづらかったことを言いに来ただけさ。」


 「それはまたご苦労なことで・・・」


 瓜が無意識にトレイを強く握り、フィフスは更に目付きが狐のように鋭くなりながら続けます。


 「なら話してもらおうか。ここまで追ってきて、たまたまなわけないよな?」


 フィフスは警戒を怠りません。彼は白兎のことを信が言っていたエデンコーポレーションの別勢力の刺客だと思っていたのです。なので家の場所が割れているのならと、敢えてここに入らせ、助太刀がいても入るのに多少の時間が稼げるようにしたのです。


 『今のところ周りに人の気配はない。だがコイツも窓を開けるまでその存在に気付かせなかったような奴だ。高をくくるのは良くない。


  瓜はすぐ隣にいる。念のため机裏にユニーの召喚用の魔法陣も用意した。下手したら家が壊れるが、地の利がこっちにある分は利用させて貰う。』


 「お前は何者だ? どこの回し者だ?」


 すると白兎は湯飲みをテーブルに置き、目を閉じて何か悪巧みでもしているような顔で笑い出しました。


 「フフフフフ・・・ ご明察。俺はお前ら二人を監視しにやって来た。」


 「誰の指示だ!?」


 緊張感の増す空気が流れます。瓜が手に汗を握り、フィフスが少し剣に手を向ける中、白兎が次に言った事は、二人にかなりのインパクトを与えました。





 「誰って・・・ そちらさんも知ってるドクターだよ。」


 「「ドクター!?」」


 瓜は思わずトレイから手を離し、フィフスは組んでいた手を離して動じに声を上げてしまいました。





 「イヤ~ごめんごめん。色々準備でバタバタしてて伝えるの、忘れてた。」


 白兎が用意したマグナフォン越しから聞こえてくる信の声に、フィフスは開始早々腹を立てました。


 「忘れてたじゃねえよ! んな重要なこと!!」


 「ゴ、ゴー君、落ち着いて・・・」


 隣の瓜に(いさ)められて怒りを落ち着かせながら、次に気になったことを聞きました。


 「んで、なんでまた俺らに監視なんて付けたんだ?」


 その質問には信と白兎が代わる代わるに答えてくれました。


 「きっかけはこの前の船の件さ。あれにはどうにもきな臭さを感じてね。信頼できる子に見張りって名目の護衛を任せたのさ。」


 「きな臭さだと?」


 「ああ・・・ 今回の件、どうにも円滑すぎると思ってね。」


 「魔革隊の動きのことか?」


 フィフスがこぼした言葉に相手側二人が微かに反応した素振りを見せました。


 「気付いてたか?」


 「なんとなくな。」


 「ど、どういうことですか?」


 一人だけ話しについて行けてない瓜は焦りながらフィフスに問います。彼はすぐに詳しく話しました。


 「俺達があの船に乗ったところに渋木がいて、それを利用する魔革隊がその船に下準備をしていたいた。


  ・・・こんな芸当、事前に全て知っていないと出来やしないだろ。」


 瓜はそれを聞いてハッとなりますが、すぐにこれなら筋が通ると意見を言います。しかしどこまでもお人好しな彼女は犯人を確定して言うことを躊躇い、声が小さくなっていきます。


 「!! そ、それは・・・ 例えば、さ・・・」


 「それはない。渋木も操られた一人だろう。ああも簡単に見限られてるしな。」


 「ついでに言うと、彼の父親がここ数日行方不明になってるしね。」


 「ッン!! じゃあ・・・」


 瓜は自分の予想が外れたことで余計に答えが気になりました。フィフスはそのタイミングに合わせたように彼の仮説を出します。


 「まさかと思ったが・・・





  ・・・ドクター、アンタの言うエデンの別部署が魔革隊と繋がっている。そうだろ?」


 フィフスの言った仮説に、白兎は少し眉にしわを寄せ、微苦笑しながらこう返しました。


 「それだけで済んだのなら、俺が来る必要もなかったんだがね・・・」


 「何? まだ何かあるのか!?」


 白兎の含みの有る言い方に二人が驚くと、信がその続きを話します。


 「実のところ、君達の上方は僕の所で秘密裏に取り扱ってたんだ。」


 「え!? そうなの?」


 フィフスは目をパチクリとさせると、瓜は目を閉じ顔を下に向け、冷や汗をかいてそれもそうだと今更ながら作り笑いをします。


 「仮にも魔人だよ。下手に広めたら臆病な連中に殺されかけない。だから隠していたんだ・・・


  ・・・それがこうも簡単に相手側に渡っていたことに驚いてね。ここまで言ったら、護衛を付けた意味が分かったでしょ?」


 そう言われても瓜はちんぷんかんぷんな表情ですが、フィフスはより真剣な、というより、こうは思いたくないとでも言いたそうな様子でした。


 しかし、ここまで来たら瓜に黙っているのも申し訳ないと感じ、目を閉じ、片目だけ開けて返答します。













 「俺達の陣営の中に、相手側の内通者(裏切り者)がいるって言うのか?」













 瓜は息をのんで黙り込んでしまった。今まで自分達が仲良くしていた人達の中に、その裏で悪事に荷担していると言うことだからです。人を信じたい性格の彼女にとっては、これほどいやなことはありません。


 それを言葉にはしませんでしたが、一周回って力が抜け、床にトレイを落としてしまいました。彼女は手を離した瞬間に気が付きましたが、それを白兎は伸ばした足で受け止め、そして彼女の手元まで上げました。


 「ア!・・・ すいません。」


 「いいよ、このくらい。」


 白兎は遊ばせた足を床に戻し、湯飲みを再び掴みました。


 「そういうこと。俺はそんなピンチから君らを守りに来たって事だ。」


 彼は席を立ち、湯飲みのお茶を飲みきると、ウインクをして調子よく言います。そこに信も合いの手を入れました。


 「と、いうことだから、これからもよろしく頼むね、お二人さん。」


 「「アハハ・・・」」


 フィフスも瓜も、また濃いキャラが増えたことに同じような苦笑いで反応することしか出来ませんでした。


 『変な護衛にスパイか・・・ また自体がややこしくなったな・・・』


 フィフスはこのことに精神的な重しが増えた感覚になりました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 その後、白兎は窓から窓へ飛び移って帰って行った。


白兎「じゃ、これからもよろしくね~」


フィフス「ドアから帰れ・・・」




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 内通者のヒントは既に作中に出ています。


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