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第244話 裏隣

 青年は影鰐の戦闘が終わり、宙に取り残されていたウインチを元の位置まで回収します。見慣れないことの連続に呆気に取られていたフィフスと瓜は、ようやく青年の元に近付くことが出来ました。


 すぐにフィフスは頬に汗を流しながら少し引きつった表情で話しかけます。


 「えっと・・・ その、色々と聞きたいんだが・・・」


 しかしそのとき、彼の左腕のライフルの装甲の一部が開き、そこに空いた排気口らしき穴から白い煙が足下を包み込むほどかなりの量が排出されました。「プシュー!!・・・」突然鳴り響いた音に二人はまた驚かされます。対して青年の方は


 「あ~・・・ やっぱまだ一発が限度か~・・・」


 とガックリしたような様子で呟くと、彼が人の話を聞いていないことにフィフスは流す汗の量が多くなり、瞼をピクピクしながらももう一度彼に話しかけました。


 「あの~・・・ で、結局お前って何者なんだ?」


 青年はフィフスに声をかけられて始めていたことに気が付いたような反応をしてから彼らを見ると、坦々と返事をしました。


 「俺? 俺は『因幡(いなば) 白兎(はくと)』、エデンコーポレーション所属の『人工魔人』。」


 「人工魔人!?」


 フィフスが聞き慣れない『人工魔人』というパワーワードに、それが何なのかを続けて質問を飛ばそうとしますが、先にそれを遮るように彼が話します。


 「またどこかで会うだろう。話はそのときにでも。」


 「オイ!!」


 すると青年こと白兎はまた片手を胸に当て、今度は両足がバッタのような形に変形させ、その姿で大きなジャンプをして消えていきました。変わった足の能力か、その跳躍力は人間が出来る限界を軽々と超えています。


 「!!・・・」


 フィフスはこれを見て驚き、すぐに彼を追って塀のところで攪乱されたことに説明が付いたことを自覚しました。


 『あのジャンプ力・・・ さっきの塀を跳び越えれたのにも説明が付いたか・・・』


 「ゴー君・・・」


 瓜は何もすることが出来ずにおどおどするしかないでいると、フィフスは顔を下げてもやついた顔で彼女にため息じみた声を出しました。


 「瓜、帰るぞ。」


 「い、いいんですか?」


 瓜はこれでいいのかと言いたそうにしますが、フィフスは冷静に現状を彼女に説明しました。


 「魔人はアイツに討伐されたし、もうここにいる必要はないだろ。」


 「そ、そうですね。」


 そのとき瓜はフィフスが内心引っかかりが取れていないことに気が付いていましたが、ここにいても仕方がないのも事実だったので彼の言葉を聞くことにしました。


 二人が足を進め、誰もいなくなった広間。その少し離れた所の物陰に、もう一人この戦いを見ていた人がいます。


 『影鰐は死んだか・・・ まあいい、手間が省けた。』


 口には出さず、心の中でそう思いながらその本人、フログはその場から歩いて離れていきました。


______________________



 そのまま二人はドタバタの道草を食い歩いた形で帰路につくと、まず目に入ったのは部屋のいたるところにあったホコリでした。


 「あ~・・・ これは・・・」


 試しにフィフスが側の靴入れ棚の上を指でなぞると、ハッキリと指の上にホコリが付いていました。


 「ハァ・・・ 一ヶ月近くも家を開けているとこうなってもおかしくはないか・・・」


 「まずは掃除ですね。」


 「だな。」


 二人は手に持っていた荷物を出来るだけ汚れの少ない場所に置き、瓜は掃除機、フィフスは箒とちりとりを持って、それぞれ役割分担をしながら家の掃除を始めました。


 しかしいそいそと掃除をしている中でも、二人の、特にフィフスの内心の引っかかりは取れませんでした。


 瓜がリビングの掃除をしている最中、彼は掃除機で届かない細かいところを掃除しようと彼女の邪魔にならない位置に移動していきます。


 その途中で彼は換気のためにと、丁度玄関の反対側にある窓を開きに行きました。その行動中も、頭では青年から言われた事が強く残っています。


 『人工魔人か・・・ 具体的には分からずじまいだが、個人的に洒落にならないものの気がしてならない・・・ ぶった切られた腕が生えてきてるんだからな。


  あの白兎って奴がそのうちまた会えるとか言ってたが、今度こそとっ捕まえて事情を聞かないとだな・・・』



 ガラガラガラガラ・・・



 彼が考え事に意識が向いて目を閉じたまま窓を開くと、そこから・・・





 「やあ。」





 ふと耳に聞こえてきた声にフィフスは閉じていた目を開いて前を見ます。するとそこには・・・










 「さっき言ってた通り、また会ったな。」


 「・ ・ ・ ハアァ!!!?」


 さっきまでフィフスが考え、捜そうと思っていた青年、『因幡 白兎』が向かいの建物の窓の内からこちらをにこやかに見ていたのです。


 「どうした? そんな黄昏れて・・・ ウゴォ!!」


 フィフスはこのことで思い浮かんだ苛立ち、怒りを全てぶつけるように咄嗟に持っていた箒を白兎の顔面に槍のように投げて当て、怯んだ間に窓を「ドンッ!!」と音が響く速さで閉めてリビングに行きました。


 険悪な顔をした彼を見て瓜は掃除機の電源を切って心配の声をかけてくれます。


 「ど、どうしたんですかゴー君!?・・・」


 「今すぐ警察に通報しろ!! 不審者が裏隣に住み着きやがった!!」


 「不審者!?」


 瓜は彼が何を言っているのか訳が分からないでいると、そこに唐突にインターホンが鳴り響きました。


 ピーンポーン!!・・・


 瓜はそそくさと声をかけます。


 「はーい。」


 「どうも~、この度、そこの裏隣の家に引っ越してきました、因幡 白兎で~す。」


 「・・・」


 瓜はそこでフィフスが突然焦った理由を理解しました。二人は降参し、白兎を家の中に招き入れました。



※フィフスが投げた箒は玄関にて白兎から返却されました。


白兎「これ返すよ。


瓜『顔の一部だけ赤い・・・』





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