表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
246/344

第242話 手がかりを追って

 フィフスと瓜が身近で起こった魔人の事件の調査を始めたそのとき、彼らがいる場所から離れたとある廃墟。そこでは分かりやすい風貌の仮面の男、カオスがフラフラと歩いていました。


 「ン~フフフフ~ン・・・」


 「オイ。」


 カオスは後ろから呼びかけられた声に振り返ると、何か不満げな態度をしているフログがいました。


 「アッレ~? フログ、どうしたの?」


 「お前、やってくれたな。」


 「? 何が?」


 カオスは何も分かっていないようなとぼけた態度で返しますが、フログはそれに苛立ったような声を出します。


 「お前、魔人を勝手に動かしたな?」


 「せっかくこの世界で自由に動けるようになったんだよぉ~・・・ ガス抜きぐらいさせてやらないと統率なんて取れないでしょ。」


 「一人を許せばそいつが模範になり次々と同じ事をする奴が出る。お前のことだ、分かっていてやっているだろう。」


 「フフン、まあね。」


 カオスはフログに背を向けて歩きながら楽しそうにしています。


 「でもそのおかげで面白い土産物を伝えてくれたよ。」


 「何?」


 「船の件以来消息不明になっていた魔王子君を見つけたみたいだよ。」


 「!!・・・」


 「このまま自由にさせていた方が、面白くなると思うよ。また暴走してくれればなお良しだし。」


 フログは少し考えてから声のトーンを下げて話しました。


 「わかった。だが何かあればそのときは・・・」


 「分かってるよ。ご自由に~・・・」


 カオスが再び振り返ると、フログの姿は消えていました。


 「流石の仕事熱心。優先順位がよく分かってる。」


 カオスはまた歩き出しながら独り言を呟いていました。


 「さ~て、今回はどうなるかな、魔王子君。」



______________________



 視点が戻ってフィフスと瓜。さっき見かけたカップルを連絡を受けてやって来たエデンコーポレーションの隊員に預け、二人は青年の創作に出ていました。


 「悪いな瓜、思っていた以上に長丁場になりそうだ。」


 「いえ、何が起こったのかは分かりませんけど、止めないと!!・・・」


 瓜は腕をグッと握って自分に渇を入れます。彼女の少し前を歩くフィフスは、歩きながらも考え事を続けていました。


 『アイツがさっきのことの犯人なら、確かにどこに行っても俺達がどこへ行っても巡り会ったことにも説明が付く。


  おそらくは、魔革隊が船の件以来消息を絶っていた俺達を捜していた資格って所か。とすると今も奴はどこかから俺達を見ている可能性がある。どこだ? どこにいる?』


 フィフスが睨むような目付きで注意深く辺りを見回すと、捜していたその青年が、一瞬目線の先の道を横切っていく姿が見えました。


 「見つけた。」


 「え? どこに・・・」


 「今度は逃がさん!!」


 フィフスは青年を捕まえるために更に走る速度を上げ、瓜は彼の動きに焦りながらもどうにかついていきます。しかし二人が青年が進んでいった曲がり角を曲がった先には・・・



 「ンナッ!!・・・」



 その先にあったのは、コンクリートの塀でした。それなりの高さがある上に腕を引っかける穴も出っ張りもありません。この先へ進むには、それこそ飛び越えるしかありませんでした。


 『んなアホな!・・・ アスリートでもそう簡単に飛べないぞ、こんなモン・・・』


 フィフスは目の前の塀を触りながら驚いていると、彼が思っていた疑問の答えが出て来ました。


 「俺に何か用かな?」


 「「!?・・・」」


 二人は後ろからかけられた声に驚きます。なんと彼らが捜していた青年は、いつの間にか二人の背後に立っていたのです。


 フィフスはすぐに振り返り、瓜より前に出て青年に話しかけます。


 「そっちから声をかけたって事は、やっぱ始めから俺らを狙っていたのか?」


 フィフスはいつでも剣が抜けるように手を伸ばして警戒しながら接していると、青年はこう返してきます。


 「狙う? 言い方が悪いな。ま、確かにお前らに目を配っていたのは事実だけど。」


 「何者だ? 魔革隊からの刺客か?」


 睨み付ける視線に対し、鼻で笑うような態度をします青年。


 「俺は・・・」


 すると青年は後ろに隠していた腕を前に出すと同時に何らかのものを飛び出させ、フィフスは瓜に当たらないように彼女をしゃがませようとしましたが、フィフスは直前に動きを止めました。結果奇妙なポーズになった彼に瓜はまた困惑してしまいます。


 「ゴー君?」


 「・・・」


 すると青年が撃ち出した何かは二人・・・





 ・・・の間を通り過ぎ、その後ろに姿を出しかけていた魔人に命中させました。


 「ガァ!!?」


 「なるほどそういうことか。」


 フィフスは後ろを向き、状況を即座に察します。現れた魔人は頭から背中にかけて青く、口から足下にかけては白い、まるでサメを擬人化したようなものでした。次に姿を見た瓜は驚きます。


 「これは!!・・・」


 「影鰐(かげわに)か・・・ 魔術なしで動きが素速い上に、人の影を食料にしている。」


 「それって、島根県の伝承の・・・」


 「さっきのカップルを襲ったのもお前か?」


 影鰐はフィフス達を襲えなかったことに悔しがりながら文句をたれます。


 「チッ、人の食事の邪魔を!!」


 フィフスはすぐに相手を変えて戦闘態勢になりますが、そこに青年がポンと肩に手を置いて前に歩いて行きました。


 「まあ、ここは俺に任せてよ。」


 「あ?」


 フィフスが勢いを折られて転けかけるのを無視し、首につるしてある懐中時計に触れました。そして彼が次に言った台詞は・・・





 「 召 着 」



 「!? 今の台詞は!!」


 驚くフィフスを余所に台詞を言った青年の上空から光の筒が降り出し、彼の体を包み込みました。そこから光の粒が彼の全身にまとわりつき、更に強い光を放ちました。見覚えのある光景にまさかと思います。


 光が消えて現れた彼は、メカメカしいながらもスラッとした、東部にはウサギの耳のような装飾があるスーツを着ていました。


 「さあ、始めようか。」

<魔王国気まぐれ情報屋>


モチーフ紹介


・化ケガニ

 『猿蟹合戦』よりカニ


・猿柿 渋木

 『猿蟹合戦』より猿




 よろしければ、『ブックマーク』、『評価』をよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ