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第240話 久しぶりの外出

 見渡す限り広がる店や青空などの景色。数週間も家の中にこもりきっていた二人にとっては、この何気ない日常の風景ですら刺激的に感じました。特に彼女の方は・・・



 タラ~・・・



 というふうに、商店街の飲食店から流れて来る匂いを嗅ぐ度に、彼女は無意識によだれを垂らしていました。それをずっと隣で見ていたフィフスはいい加減額に一筋の汗を流しながら声をかけてしまいます。


 「お前なぁ・・・ いくら閉じこもっていた家から外に出られたからっていきなりよだれを流すのは止めろよ・・・」


 「す、すいません・・・ 久しぶりに外に出ると、つい周りのものがおいしく見えて・・・」


 「ったく・・・」


 そのとき、フィフスは隣にある瓜の横顔を見て、龍子家を出るよりも少し前のことを思い出しました。



______________________



 そこではフィフスはあることを聞くために信を呼び止め、瓜とアヒルを無しに二人で話をしていました。


 「あの感じだと、仲直りは出来たようだね。」


 「ああ・・・ だが、アイツと腹を割って話をしたことで新たな疑問が生まれてな。」


 「疑問?」


 「瓜から聞いた。暴走した俺を救ったのは、この剣を拾った瓜だってな。」


 フィフスは腰に携えた剣を摩りながら話します。信はそんな事を言われて首を傾げます。


 「それがどうかしたかい?」


 疑問を浮かべたままの信にフィフスは思っていた本音をそのまま彼に伝えました。


 「・・・偶然にしちゃ、ちょっと出来すぎじゃねえか。」


 「ん?」


 「たまたま俺がこの世界で初めて出会った奴が異世界(向こう)での友達(ダチ)にそっくりで、そいつのものだった契約の魔道書を持っていて、俺の剣を使った。こうも偶然ってのは重なるものなのか?」


 「・・・」


 話を聞いても黙ったままでいる信にフィフスは聞きたかったことを話し出しました。


 「いい加減教えろ。瓜にあの魔道書を送りつけるようにアンタに指示したのは誰だ?」


 信はフィフスの言葉が真剣なものに変わったことに気付いていましたが、それでも答えは変わりませんでした。


 「ノーコメント・・・ 仕事の報酬だって言うんなら、今回は僕も命を張らされたからプラマイゼロ、いやむしろマイナスかな。」


 信が言っている事が残念なことに事実が故に、フィフスはその言葉の前には自分の勢いを押さえ込まざる終えませんでした。それで彼が苛ついていることが、反対側にいる信からは彼の顔で丸わかりでした。


 「ま、時期が来れば教えるよ。気長に待っておくんだねぇ~・・・」


 信はそう言い残してスッと席を立ち、フィフス達を家に帰すための準備に戻って行きました。


 「ケッ・・・ ゲスドクターが・・・」



______________________



 そのとき、自分が見られていることに気付いた瓜が彼に顔を向け、話しかけてきました。


 「どうかしましたか、ゴー君?」


 その声を聞いてフィフスも我に返ります。


 「ん? あぁ!!・・・ 何でもない。ちょっとボーッとしてた。」


 瓜は納得して顔の向きを戻すと、フィフスはまた一人考え事をし出します。


 『そもそもあれだけ俺らを助けるためにって匿っていたくせに、随分あっさりと返したのは何故だ?』


 するとそのときフィフスが気が付くと、瓜がどこか一点に向かってジイッと視線を飛ばしていました。彼はそんな彼女を見て今この事を考え手も仕方ないと開き直って彼女に聞きました。


 「何を見ているんだお前?」


 「あ、いえ・・・」


 フィフスはその目線の先を見ると、手作りのコロッケを売っているお肉屋さんを見つけました。丁度ラスト一個です。


 「お前、まさか・・・ 肉屋のコロッケが食いたいのか?」


 「は、はい・・・」


 瓜は少し顔を赤くして恥ずかしながらも正直に言いました。どうやらあそこから来たいい匂いに食欲がそそられたようです。


 「まぁ、いいか・・・ せっかく久々に出たし、寄ってくか。」


 「はい!」


 パッと嬉しそうにする瓜にフィフスはいつも通りに戻ったとしみじみ思いながらその店に向かいました。そしてお肉屋さんに到着してすぐに注文しようとします。


 「お~いおばちゃん、そのコロッケ・・・」


 しかしそのとき、二人の前に誰かが入り、そのまま注文をしていきました。


 「そのコロッケちょうだい!!」


 「あいよ。」


 店員は素直にコロッケを渡し、相手も代金を払って離れていった。しかしこれによってラスト一個のコロッケがなくなってしまった。


 「「え?・・・」」


 二人が余りのトントン拍子に目をパチクリさせましたが、すぐにフィフスは焦りながらなんとかならないか店員に聞きます。


 「おいおばちゃん! あのコロッケ、まだあるか!?」


 「あらごめんね~・・・ さっきの最後なの。今から作ると時間もかかるし、またにしてちょうだいね。」


 「あ・・・ そっすか・・・」


 隣を見ると、瓜が我慢しながらもこれまた涙を浮かべた分かりやすい悔しそうな顔をしており、フィフスはいたたまれなくなりました。


 「だ、大丈夫だ! 何か別のものでも食いに行こう。」


 「は、はい・・・ そうですね・・・」


 とりあえず引きつった作り笑顔でその場を納め、二人は別の食べ物を捜して商店街を徘徊していきました。







 その近くの人気が全然ない路地裏、そこではさっき唐突に乱入してきてコロッケを買っていった青年が、それを片手にボソボソと独り言を呟いていました。





 「あれが『小馬 五郎』・・・ そして『町田 瓜』か・・・ 思った通りイジり甲斐がありそうだ!!」





 青年はコロッケを大きく一口かじってニヤついて見せました。

  


フィフス「今日は新章突入記念に二話連続投稿だ!! 次の話は午後十時ごろに出すから読んでい       けよ!!」


瓜「た、楽しんでいってくださいね。」





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