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第22話 化けゴウモリの悪仕掛け

 てっきりバスの方へと向かっているものかと思っていた化けゴウモリと契約者の男は、彼がなぜここにいるのかに大きな驚きを抱いていた。


 「なぜ・・・ 貴方がここに・・・」

 「ま、ひとえに俺の第六感って奴だ。」


 嘘である。フィフスはバスへ向かっての移動の最中に、離れていってるはずなのに自分の体に電撃が走らないことに違和感を感じていたのだ。そして、先程立ち止まったのは、バスが見えてきたときに自信の指先に電撃を感じたことにより瓜が別の場所にいることを知り、瞬間移動でそこから半径五十メートル以内を片っ端から探したのである。


 「大変だったんだぜ。限られた範囲とはいえ、違和感のある魔力を見つけ出してしらみつぶしに当たるのは・・・」

 『それでこの速さだと? どんな移動手段を使えばそんなことが・・・ 』


 そのとき、いつもよりも注意深く相手を見ていた。そのおかげで、フィフスの腰に携えられていた剣に目が行った。


 『ん? あれは・・・』


 どこかで見覚えのあるものに気を取られていると、すぐにフィフスから仕掛けてきた。しかし、パンチは直撃したにもかかわらず、化けゴウモリはひるんですらいませんでした。


 「意味のないことをしますねえ。」

 「チッ、また本体は別の所か。」

 「ええ、貴方が追っていたバスの中ですよ。ここへ来たのは外れでしたね。」


 自慢げに語る化けゴウモリだったが、フィフスはその事に動じなかった。二人がお互いに気を張っている内に男は瓜の手を引っ張り、奥の部屋へと連れて行った。気付いたフィフスはすぐに追いかけようとしたが、狭い部屋の中で化けゴウモリが通せんぼを張っている。


 「そこどけ。焼き切るぞ。」

 「これが私の使命なのでね。それに、そんな脅しは通じませんよ。」

 「なぜだ?」

 「貴方だって気付いているでしょう。自分が追い詰められていることに。」


 フィフスは身構えた。率直に言って今の彼はピンチである。魔人は生まれつき一つの属性の魔術を与えられる。フィフスの魔術は火炎術、こんな木造建築の狭いアパート内では、技を出した途端に木に燃え移り、瓜や他の住民を巻き沿いにしてしまうのだ。


 『確かに現状はそうだ、なら・・・』


 フィフスは油断していた相手の腕を瞬時に掴み、自分が壊した出入り口に投げ捨てた。そしてすぐに奥の部屋に入ろうとした。


 「よし、これで少しは・・・」

 「と、思うでしょう・・・ 普段の状況なら。」


 声に驚いたフィフスが振り返ると、かなり遠くへ投げたはずの化けゴウモリが、自分のすぐ背後にいた。さらに・・・


 「そんなにみたいならこれでどうです。」


 反応が遅れたフィフスにその勢いのままの跳び蹴りを食らわせ、奥の扉を突き破って壁に激突させた。


 「クッソ・・・ ん? これは・・・」


 フィフスがその部屋を見ると、壁一面に様々な美少女達の写真やアニメキャラの画像があった。特に瓜の写真が大いに目立っている。


 「うっわ・・・ これはさすがに引くぜ・・・」


 さらに下の方に視線を移して見ると、どこで手に入れたのか分からないウエディングドレスに、その横で例の男が真正面に見ている中で制服の上着を脱ぎ捨て、そこからさらにブラウスのボタンにまで手を出しかけていた。明らかに男の目線は瓜の胸に向かっている。


 「そ、そうだよ瓜たん、ドレスを着るためには今の服を脱がないとね・・・」

 「ハイ、旦那様。」


 さすがに不味いと感じたフィフスは、興奮して周りが見えていない契約者を軽く弾き飛ばし、ボタンを外そうとしていた瓜の両腕を握って止めた。


 「ゴホッ!! 何だ!?」

 「あっぶね~~~・・・ ギリギリセーーーフ。」


 しかし抑え込まれて動けないながらも、未だに瓜は腕の動きを止めようとしない。


 「オイ瓜! いい加減動きを止めろ!! ここはトラブった作品でもゆらいだ作品でもねえんだよ。危ないからその手を止めろ!!」

 「貴方の発言の方がよっぽど危ないですよ。」


 その部屋に化けゴウモリが入りながら突っ込んできた。さすがに空気を読んだのか化けゴウモリは瓜に腕を戻させ、そして冷静に戻り、また話し出した。


 「コホン・・・ 何をやっても無駄です。貴方だって知っているでしょ、その子は私の催眠術にかかっている。向こうにいる女達と合わせて、私かその契約者の言うことしか聞きません。」


 話が終わると同時に、契約者が起き上がってフィフスを見た。


 「き、貴様!! また僕と瓜たんの愛を邪魔しやがって!!」

 「は? 何言ってんだこいつ。」

 「僕と瓜たんは運命の赤い糸で結ばれた夫婦なんだ。これ以上彼女を苦しめるな!! このストーカー!!」

 「ア? 」


 そして男は聞いてもいないのに回想に入り出した。


_________________________________________


 それは新年を迎えた明くる日僕は、コンビニのバイトをしている最中だった。いつものようにレジ打ちをしていると、そこに彼女が現れた。


 『はあ・・・ ここで瓜とであうのか・・・』


 「百五十円のお返しになります。」


 そして彼女の・・・ 奥山志歌の手を握った。


 『て、そっちかーーーーーーーーーーーい!!!』


 それからというもの、僕と彼女は真剣にお付き合いをしていた。日々彼女を守るために後ろからそっと見守ってたんだ。


 『いやいやいや、これどう見てもただのストーカーだろ。』


 これまで彼女が出来ても、結局利用されて捨てられてしまうのが常だった。


 『こいつもこいつで被害妄想がスゲえな・・・』


 そして、ようやく手に入れた幸せな毎日を過ごしていたある日。悲劇が起こってしまったんだ。


 『この状況が既に悲劇じみてるだろ。グレシア(あいつ)にとって・・・』


 僕は唐突に大勢の男達に襲われたんだ。


 「貴様か、我らが姫に嫌らしい目を見せ続けていたという不届き者は・・・」

 「だ、誰だ君たちは!?」


 彼らは僕の言葉に聞く耳も持たず、僕をたこ殴りにしてきたのだ。


 『例のお菓子隊って奴らか。やり過ぎやがって・・・』


 そうして僕は大けがをした。なのに彼女は恋人である僕に見向きもせず、行ってしまった。絶望しきった僕に、彼女は手を差し伸べてくれたんだ。


 「だ・・・ 大丈夫・・・ ですか?」


 そう、そこに現れたのが、本当の運命の人である瓜たんだった・・・


_________________________________________


 回想が終わり、男は鼻息を荒くしてまた言い出した。


 「そうさ・・・ だから彼女は・・・ 僕のものに・・・」


 ボカーーーーーーーーーーーーン!!


 男の話が終わる寸前、フィフスは彼を思いっ切り殴り、壁にぶつけた。


 「やかましい。いい加減黙れ・・・」


 壁にぶつかった衝撃と、目の前からの視線の恐怖に、男はしょんべんを漏らしながら気絶した。


 「いいのか? お前の契約者だろ。」

 「かまいませんよ。そんなことより・・・ 」


 化けゴウモリは改めてフィフスの方を向き、嬉しそうに笑って見せた。


 「私は貴方の方によっぽど興味がありますので。『獄炎鬼(ごくえんき)』殿。」


 その名を言われてフィフスは一瞬目を丸くした。


 「多少ハンデがあるとはいえ、このような機会は滅多に無い。是非手合わせ願いますよ。」

 「あいにく、時間がねえんだ。とっとと終わらせてもらう。」


_________________________________________


 「ウオッ!! アブねえ・・・」


 爆速で進み続けるバス。その狭い通路の中でギリギリながら平次は攻撃をかわした。とはいえ、彼としてはどうすれば良いのか分からなくなっていた。


 「やべ~・・・ 赤鬼の奴こんなこと押しつけやがって・・・」


 どうにかならないかと周りを見ると、ウォーク兵どころでは無かった。すぐそこに大きな柱が見えてきたからだ。


 「ギイヤーーーーーーーーーーーーー!!」


 命の危険を感じ取った平次はウォーク兵からの攻撃をスラリとかわし、運転席のハンドルを急回転させて難を逃れた。


 「ふーーーー・・・ 危なかった・・・」


 気を抜きかけて振り返るとウォーク兵が至近距離に槍を突き立てていた。が、目玉を飛び出させながらも間一髪かわして運転席を離れた。


 「クッソ・・・ グレシアが頼りにならないって時に。一体どうすれば・・・」


 平次はグレシアの肩を持って揺さぶった。しかし彼女の催眠が解ける気配は一切無い。自分のピンチを切り抜けようと後ろからウォーク兵の攻撃をかわしたが、それによって思いの他彼女を勢い良く揺らしてしまい、それによって杖を落とした。次の攻撃をでんぐり返しでかわした平次はその杖を見て思い出した。


 「杖を使えって・・・ そうか!!」


 平次はすかさず落ちていたグレシアの杖を拾い上げ、再び襲いかかってきたウォーク兵にそれを向けた。


 「頼む!! 効いてくれ!!」


 すると、杖の先端から氷の粒が発射され、それがウォーク兵に当たった。するとそこからみるみるうちに氷は広がっていき、すぐに相手の全身を包んで固めた。


 「グレシアの奴、ここまで想定してたのかよ。やっぱスゲえ奴だ・・・」


 平次は杖を自分に向けて独り言を言った後、すぐに運転席へと駆け出して椅子に座った。


 「よ~し、後は止めちまえば・・・」


 しかしそこでまた想定外のことが起こった。


 「ナッ!! これは・・・


 

           ・・・ブレーキが、無い!?」


_________________________________________


 代わってフィフス、術が使えないながらも相手の攻撃を捌き、同時にこちらからも攻めていた。しかし本体のない彼には痛くもかゆくもない。


 「術も使えないのによくやりますねえ。ですが良いんですか? はやくバスを止めなければ、そこにいる人達は全員死にますよ・・・」

 「どっちからでも関係無い。早く終わらせるだけだ。」


 そう言って話を切り誤魔化そうとしたが、化けゴウモリは見透かしていた。


 「嘘ですね。貴方のような戦士が、こうも効率の悪いやり方を好んではしない。契約の制限ですね。ここの場所が分かったのも、それなら説明がつく。中々嫌な制限だ。」

 「うっせえ。そういうお前は、何でわざわざこんなに派手にやった? 最初からこいつを攫えば、事は済むだろ。それこそ効率が悪い。」

 「私もそうであって欲しかったんですが、彼の願いはもう一つあったんですよ。」

 「もう一つ?」


 彼が次に言ったことに、フィフスはさすがに衝撃を受けた。


 「彼の願い、それは『運命の彼女を連れ帰り、自分をコケにした女達に復讐したい』ですよ。」

 「ナッ!? アイツ・・・ どれだけ自己主義な願いを・・・」


 フィフスは気を悪くしたがそれでも気を散らさずに向かってくる相手を抑えていた。


 「驚いた。異名からてっきり魔術に頼っていたものと思っていたんですが・・・」

 「悪いが、こういう格闘術は大抵叩き込まれてるんでな。」


 そのときに既に右手を広げ、指を曲げきった構えを取っていたフィフスは、話をしていることで隙が生じた化けゴウモリに素早く技を繰り出した。相手はその攻撃に気付くことが出来ず、もろに食らって吹っ飛ばされた。


 「<伝獣拳(でんじゅうけん) 犬牙(けんが)>」

 「カハッ!!?」


 この攻撃でフィフスは化けゴウモリがアパートの外まで吹っ飛んでいくと思っていた。ところが、次の瞬間フィフスが見たのは、開いたドアの空間に向かって行った彼がそこに壁でもあるかのようにぶつかり、そのまま勢いが止まったのだ。


 「これは・・・ 」


 ダメージを受けながらも化けゴウモリは立ち上がり、クスクスと笑って話し出した。


 「お互い、制限に救われましたね・・・」

 「お前の制限だと?」


 動きの止まったフィフスにゆっくりと彼は近づく。


 「一定の時間の間、この部屋から出ることが出来ない。それが私の制限です。人捜しには酷い重荷ですが、この状況であれば・・・」


 フィフスはその意味を理解し、その上で冷や汗をかくほど心境は悪くなっていた。


 『ろくでもなく厄介じゃねえかよ・・・』


 場が一気に緊迫感を増した。

<魔王国気まぐれ情報屋>



・キャラクター紹介



{石導 平次}



種族           人間

年齢           16歳

誕生日          10月30日

身長           167cm

性格           まとも 恋愛能 

家族構成         父 母 妹

契約魔人         グレシア

好きな物・こと      漫画読書(ラブコメ中心)

苦手な物・こと      人を振り回す男

好きなタイプ       町田さん!!

将来の夢         可愛いお嫁さんとの結婚生活

今まで告白した人数    ざっと50人 全て玉砕

モチーフ         『ヘンゼルとグレーテル』よりヘンゼル




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