第236話 友達最悪
その頃、側でアヒルが体を洗っている中でお湯に浸かっていた瓜。彼女が無言のままで洗い場が空くのを待っていると、頭のシャンプーを流し終えたアヒルに話しかけられました。
「落ち込んでる・・・」
「え?」
「瓜、落ち込んでる。」
「え! いや、私は・・・」
心の中を見透かされたようなことを言われた瓜は咄嗟に否定ますが、アヒルはそんな彼女を真っ直ぐな目をしてもう一度言ってきました。
「落ち込んでる! 良くない!!」
「アッ! ッン・・・」
瓜はその目にやられて、簡潔ながらも白状しました。
「私は・・・ 馬鹿で・・・ 役立たずだなって・・・ 思って・・・」
「役立たず? 五郎の?」
濁していた部分をハッキリ言われたことに瓜はより表情がむず痒くなりますが、首を縦に振って肯定しました。
「なんで?」
「・・・はい?」
瓜は自分の言った事に質問で返されたことにどう返答したらいいのか分からなくなってしまいました。するとアヒルの方が話をつないでくれます。
「なんで役立たず? 瓜は、五郎に酷いことしたの?」
「・・・はい。いっぱい・・・」
瓜は船のことだけではなく、フィフスが自分の元に来てからのことを振り返ります。
「私、そもそも彼を困らせてばかりでした・・・ いつも、彼に助けられて・・・ なのに、私は何も出来ていない・・・
今回のことは・・・ そんな私でも出来ると思ってました・・・ でも、この身一つ、差し出せなかった!!・・・」
瓜は風呂桶の縁をグッと掴み、悔しさをにじみ出します。
「それさえすれば・・・ 笑っていれば・・・ 全て丸く収まっていたはずなのに・・・ 彼を助けるための行動で、彼を・・・ 危険な目に遭わせてしまった・・・ あんなにもボロボロになって・・・
・・・私は、『 友 達 最 悪 』です。」
アヒルは瓜の話を黙って聞いたままでしたが、次に彼女が言ったことについ返事をしてしまいました。
「そうです! いっそ契約を叶えて・・・ 私も魔人に・・・」
「それはダメ!!」」
すると、アヒルは風呂桶の縁に置かれたままの瓜の手を握り、彼女に思った事を話し出しました。
「それは違う! 良くない!!」
「エッ! エェ・・・」
アヒルの唐突な大声に瓜がたじろぐと、彼女は思っていたことを吐き出しました。
「瓜、無理してる!」
「私の無理なんて・・・」
「瓜が無理すると、それだけ五郎も無理をするの!!」
瓜がアヒルの行動に引いていると、彼女はここぞとばかりに言いたいことを押し込んできました。
「アヒルも信のために、色々やった! 助けになるならって、自分から戦おうともした・・・
・・・でも、すればするほど、信は悲しい顔をしていた。信はアヒルのために更に無理をしてた。」
「ッン!!・・・」
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丁度その頃、信がフィフスに向かって瓜に対する問いへの答えのようなことを言っていました。
「君達はさぁ・・・ お互いに遠慮しすぎなんだよ。」
「遠慮・・・ そんなつもりは・・・ ただ俺は、アイツを巻き込みたくないって・・・」
「本人には聞いたのかい?」
「アイツに聞けば、また作り笑いで大丈夫って言うに決まってる。だから俺はもう・・・」
「くどい!!」
「!!・・・」
フィフスは信の放ったたった三文字の言葉に黙らされました。
「そういうところが問題なんだよ! 確かに、君の言う通りそうかもそうかもしれない。でもそれは、瓜君が君を心配してのことだ!! 君あ自分の身をを犠牲にするのを、瓜君は黙っていられないんだよ。」
「そんなもん、こっちも同じ台詞だってんだよ・・・」
フィフスは小さな声で文句を言うと、信は再び一息ついてから落ち着いた声でフィフスに問いかけます。
「いい加減、彼女との間に線を引いて接するのは止めたらどうだい?」
「線・・・ か・・・」
フィフスの頭の中に草原の中に売る少女、『シーデラ』の姿が思い浮かびます。
『アホだな、俺は・・・ 意識してないと思ってたのに・・・』
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再び視点が戻って風呂場。アヒルからの押しの強い言葉にも、瓜は小声ながらも反発していました。
「そう・・・ 甘えていいんだよ、瓜。」
「でも・・・ それでは、私も助けないと・・・」
「そういうことじゃない!!」
アヒルはブンブンと子供のように首を横に振ってから続けます。
「やって貰ったから、恩返しする、じゃない!! そんな礼儀正しいの、変だよ!! 瓜、友達に何かしないと、怒られるの?」
「ッン!!・・・」
アヒルの当を得る言葉に瓜は胸に矢を射られたような感覚に襲われました。フィフスと出会う前、当時の友達とのことを思い出したのです。
「それは・・・」
「やられたからお返しして・・・ 無理しないように気を使ってって・・・ そんなので、一緒にいられて楽しいわけがない!!
楽しくないと、友達じゃないでしょ!!」
瓜は耳に入ってきた言葉の印象の大きさに目を見開き、口を無意識に開けて、彼女と同じ事を繰り返して言い出しました。
「楽しくないと・・・ 友達じゃない・・・」
瓜はアヒルにそれを言われるまでそんなことを思いもしませんでした。そしてフィフスと出会う以前からの自分の行動を振り返りました。
『そうだ・・・ 私は、あのときから、友達を失うのが怖くて、今いる必死で繋ぎ止めようとして・・・
・・・私、結局自分のことしか言えていない!! あの時から、何も変われてない!!!』
瓜は顔を下に下げて握られている手の力が弱まりました。
「・・・」
アヒルはそうして離かけた瓜の手を更に力を入れて握りしめ、ニッと小さな笑顔をして優しい声をかけました。
「瓜、わがままになっていいんだよ。」
「私は・・・」
瓜はそこからもアヒルとしばらく会話をし、思うところがありながら風呂を上がりました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
ルーズが伝言を聞いて翌日、遊びに行くという名目でグレシアと平次に会い、二人にフィフスからの伝言を伝える。
ルーズ「だ、そうです。」
グレシア「瓜・・・ 大丈夫かな・・・」
ルーズ「あの・・・ 王子は?」
グレシア「どうでもいいわよ、あんなの。」
ルーズ「冷た・・・」
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