第234話 恐ろしい夕食
玄関から上がったフィフスと瓜は、信から言われて部屋の一つを貸してもらえることになり、夕食が出来るまでの間待つことになりました。
フィフスは改めて部屋を見渡しますが、やはり何の変哲も見つけられません。
「ホント普通の一軒家って感じだな。ドクターのことだからヘンテコな種だらけかと思っていたが・・・」
『ヘンテコって・・・』
「だってそうだろ? これじゃセキュリティ万全とはとても思いにくいんだが・・・ こんなので瓜を守れるのかよ・・・」
『私よりフィフスさんですよ。それに・・・』
瓜は頭の中にグレシア達のことを思い浮かべます。
『連格が出来ていないからって、志歌さん達に危険がないわけではないですし・・・』
瓜はそのために自分の身を犠牲にしていたこともあって、より不安になっていました。しかしフィフスはそんな彼女にこう言ってのけます。
「安心しろ。その場合の手も打ってある。別に必要ないとは思うな。」
『手?』
「幸いルーズのとこにユニーを預けてたからな。目を覚ましてすぐにアイツに連絡しておいた。すぐに伝わるだろう。」
『ユニーさん、喋れないのでは?』
瓜は不安になりましたが、フィフスは話を変えてきます。
「そんなことよりだ・・・ 瓜、お前に話しておきたいことがある。」
『そんなことよりって・・・』
フィフスの態度に少しムッとしますが、彼の真剣な表情に押されて黙ってしまいます。そして彼は病院の時から溜めていたことを言い出しました。
「瓜、俺と・・・」
「夕飯出来たよ~!!」
「ア~・・・」
フィフスはまたも肝心なところで横槍を入れられ、真剣にしていた顔が崩れてしまいました。
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そのまま二人は信に案内されて夕食のシチューとパンが用意された席に着きました。向かい側には信とアヒルがそれぞれ座ります。一応挨拶を済ませ、フィフスは一口食べてみると、驚いてついポロッと言葉をこぼしてしまいました。
「ウオッ! うっま・・・」
彼が我に返って顔をしかめながら前を見ると、ニヤついた信がこちらを見ています。
「ほほう、それはよかった。腕を振るった甲斐があるってものだよ。」
「エッ!? これ作ったのドクターなの?」
「そうさ、料理は基本僕が作っているからね。」
「え~・・・ 科学意外に何も出来ないと思っていたのに・・・」
「ハッハッハ!! 生憎色々こなせるもんでね。」
フィフスは信の軽々としたような態度に若干腹が立ちましたが、彼の隣の瓜は『貴方の大概ですよ・・・』と思っていました。
しばらくたわいのない会話をしながら食事をしていると、ふとフィフスが聞いてみました。
「そういや奥さん。ドクターとはどういうなれそめで?」
「「!!・・・」」
向かい側の二人野方がピクリと動いたのが目に見え、さっきまではずんでいた会話が途切れてしまいました。
「あれ?」
「そ、そんなの、恥ずかしいじゃないか・・・ ねえ、アヒル。」
信は明らかにさっきまでとは違う作り笑いで誤魔化しにかかります。フィフスが当然ながら怪しむと、アヒルの方がハッキリと言ってのけました。
「信が・・・ アヒルの胸を触ってきたから。」
「「ハ!?・・・」」
アヒルの言ったパワーワードに、フィフスだけでなく瓜さえも声を出してしまいました。二人が次に信を冷たい目で見ると、信は必死に弁解しようとします。
「誤解だ!! その、たまたま当たってしまっただけで・・・ 止めて! そんな汚物を見るような目で見ないでくれ!!!」
「いや~・・・ ドクターもスケベだったんだなって・・・ 安心した。」
「君が言えたことじゃないでしょ・・・」
信からそう返されてグサリと刺さったフィフスはシチューを喉に詰まらせて咳き込んでしまい、瓜がそれを介抱する羽目に遭いました。
「フィフスさん・・・」
「だ、大丈夫だ・・・」
フィフスはせきが落ち着かせ、再び会話をしながら食事を続けていきます。すると瓜が耳元に何かが羽ばたいている音が小さく聞こえてきました。
「ん?」
「どうした?」
『いえ、何でも・・・』
瓜はさっきのことが気のせいかと思って無視しようと再び食事をし始めましたが、そのとき・・・
プ~ン・・・
と、やっぱり聞こえてきたその音に彼女はその原因がなんなのか気になって首を振り回してしまい、フィフスはそれに驚いて彼女の方を見ながら冷や汗をかきます。
「オイ! お前、本当にどうしたんだ!?」
『ア! いや・・・ 近くに虫が・・・』
「虫?」
フィフスは瓜に言われて初めて彼女の周りを飛んでいる小さな虫を見つけました。
『ア~・・・ そういうこと・・・』
フィフスはすぐにそれを取り除いてやろうと虫が彼と彼女の調度間を通ったときに手を伸ばすと、
シュン!!・・・
ザクッ!!!・・・
「ん?・・・」
その虫は、フィフスの手が届く少し前に高速で横切った何かと共に消え、突き刺さるような音が聞こえてきました。
フィフスと瓜がお互いを見ながら一度瞬きをし、そして首を曲げて自分達の後ろの壁を見ると、そこには、虫を貫いて壁に突き刺さったフォークがありました。
そして二人が反対方向に首を回すと、指先を不自然に前に向けているアヒルが見えました。
「エ?・・・ 今のって・・・」
二人が思った疑問の答え合わせをするように、信はアヒルに話しかけました。
「こら! アヒル、食器で遊んじゃダメだって言ってるだろう。」
「ウッ・・・ ごめん、信・・・」
落ち着いて話をしている二人と違い、向かい側の二人は興奮して心の中で突っ込みました。
『『そう言う問題!!?』』
フィフスは目を細めて考えました。
『これは・・・ 下手するとよりやばい死地に来ちまったかもしれねえ・・・』
二人は夫婦が放つ異様な空気に完全に押しつぶされてしまいました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
壁に突き刺さったフォークは今のフィフスが力いっぱい腕を引いても抜くことが出来なかった。
フィフス『えげつない力で突き刺さってやがる!!』
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