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第232話 元気になったら

 そこからまた一日が過ぎました。フィフスは例のごとくの回復の早さでどうにか近場を歩くまでは出来るようになりましたが、隣にいる瓜は相変わらず眠ったままです。


 彼はお見舞いの人用のパイプ椅子を見つけて彼女のベッドと自分のベッドの間に置き、それにのしかかるように座って彼女の顔を見ていました。


 彼はそこから無言のまま、自分が彼女に何もしてやれない事にとてももどかしく感じます。


 「・・・」

 『せめて何か出来ないのものか・・・』


 そのとき、フィフスの頭に昨日の信の言葉がよぎります。



______________________



 「元気になったら手でも握ってあげるんだね。こういうときは精神論が意外と効くものだから。」



______________________



 「・・・」


 フィフスは信の言うことを信じるわけではありませんが、とりあえず彼女の左手を優しく握ってみました。この行動には、彼にとって自己満足のするためでもあり、彼はこのことがまた嫌になり、無意識の内に握る力を強めてしまいました。


 「俺は・・・」


 フィフスは時間が流れることも気にせずに握り続けていました。しばらくして更に夜も深くなると、彼はふと眠気を感じ始め、そのまま眠ってしまいました。



 そのまま翌朝になり、締め切れていなかったカーテンから差し込む光を受けながらもフィフスの方は眠り続けているのに対して、手を握られている瓜の表情に変化が起こり、少しずつまぶたが揺れていきます。そしてしばらくすると・・・





 「・・・ ッン・・・ ッンン・・・」





 彼女は重くゆっくりと振らしていたまぶたを開いていき、そして自身の左手が握られている感覚に気付き、目線をそちらに向けます。彼女はそこで見た人物の名前を、力のない声で呼びました。



 「フィフス・・・ さん・・・」


 微かに聞こえた声、そして握り返された感覚にフィフスが目を覚ますと、目の前には、心配していた相手が目を開けてこちらを見ている様子が見えました。


 「ッン! 瓜!! お前・・・」


 瓜が目を覚ましたことへの喜びと、彼女の体にかかったダメージの心配をするフィフスでしたが、そんな彼に彼女の方はこんなことを言ってきました。


 「良かった・・・ 元に戻ったんですね・・・」

 「良かったって・・・ お前こそ! 平気なのか!?」

 「ハハッ・・・ ちょっと張り切り過ぎちゃいました・・・ 厄除けも・・・」


 瓜はまず自分のことでなく、フィフスから貰ったブレスレットを壊してしまったことを謝罪してきたことに、フィフスはホッとするような想いを感じました。


 「そんなことはいい!! お前が目を覚まして・・・ 良かった・・・」


 フィフスは瓜の無事を確認したことで彼女の手にかけていた力を緩め、その手を離そうとしますが、彼女の方がその手を掴み続け、離れることが出来ませんでした。


 「瓜?」

 「・・・掴んでいて、いいですか?」

 「お前・・・」


 フィフスは彼女の反応に戸惑い、一度目線をそらして何か考え事をしてしまいます。瓜はそれを見てどうかしたのか聞こうとしましたが、その前に彼は顔を再び彼女の方を見て来ました。


 「瓜・・・ 俺、お前と・・・」

 「エッ?・・・」


 フィフスはそのとき彼女に何かを言いかけましたが、その前に病室の中に和亀が空気を読まずに現れ、それを遮ってしまいました。


 「小馬君! 起きたかい!?」


 フィフスはそのハイテンションっぷりに若干ストレスが溜まりましたが、瓜がビックリして力が緩んだのを見計らって手を離し、彼に体を向けました。


 「朝っぱらからいきなりやかましいな。他の患者に迷惑かからねえのか?」

 「大丈夫。ここ小さいから、君ら以外に入院者はいない・・・」


 そのとき、和亀は目を覚ましている瓜に目が行きました。


 「あれ? 君、もう目が覚めたのかい!?」


 信はフィフスの話を聞かず、瓜が目を覚ましていることに驚いて彼女に駆け寄りました。


 「驚いた・・・ 長期間眠っていてもおかしくない怪我だったのに・・・」


 瓜は彼を見るのは初めてだったので、小さな声で聞きます?


 「あの・・・ あなたは?」


 すぐにフィフスが和亀を紹介使用すると、彼本人がバッとフィフスの前に手を出して阻止しました。そして一度わざとらしく咳き込んでから、随分と改まった自己紹介をしだしました。


 「ゴホンッ!・・・ 僕は『浦島 和亀』、ここの病院長をしているよ。何か困ったろいつでも相談してくれ。命をかけて、君の力になるよ。」


 ギュッと自然な流れで瓜の手を掴もうとする和亀の動きをkンドはフィフスの方が阻止しました。


 「コイツははまだ本調子じゃないんだ。そっとしてくれないか?」


 和亀はそんな彼に言い返します。


 「そういう君も、ベッドから離れて大丈夫なのかい?」

 「俺の回復力を舐めるな・・・ でないと異世界(向こう)で戦士なんて出来ねえよ。」

 「ハハハ・・・ 強気なことを言うね。でも・・・」


 和亀が軽く彼の肩にツンと触れると、彼の体にビリリと強烈な電気が走ったような感覚に襲われ、椅子から崩れて倒れてしまいました。


 「アガガガガ・・・」

 「フィフスさん・・・」

 「君も無理しない。病人は寝てて。彼女の看病は僕に任せて。」


 和亀はさっきまでフィフスが座っていたパイプ椅子に座りました。


 「さて、こうしてじっくり会うのは初めてだけど・・・」


 すると突然和亀は瓜の手を握り、優しい声で話し出しました。


 「瓜さん。君みたいな美しい人とこうして出会えたことが実に光栄だ。元気になったら、じっくり二人でお話をしてみたいな。」

 「え?」


 危険を感じたフィフスはベッドから体を乗り出して手を出し、和亀に肩を掴みました。


 「オイお医者さん・・・ ちょっと患者との距離感がおかしくねえか?」

 「ああ、君は安静にしてくれ。そんなことより瓜さん。貴方の趣味を聞かせてもらえないかな?」

 「え? あの・・・ ちょっと・・・」


 瓜の困惑をよそに甘い声で聞き続ける和亀の様子に、フィフスは率直に思いました。


 『コイツ・・・ さてはかなり矢部目の女好きかよ・・・』


 フィフスはまたも瓜の男運のなさに呆れることになりました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 その後しばらくの間フィフスは和亀のナンパを妨害するために神経を費やしたとか・・・


フィフス『俺に心が安まるとろろはないのか!!』





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