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第229話 Ladies & Gentleman

 夜空の星が見える甲板から離れ、一般の客達が寝静まっている暗い廊下を歩いていたカオス。彼の頭の中では、この船で自分が引っかき回したことを振り返っていました。



 『人間というのは単純なものだ。大切な命を奪うって言ったら、散々お世話になった友達も裏切っちゃう。


 でも()()()()っていうのは、自分のことだけとは限らない


 中には他人の命の方が、自分より優先しちゃう人だっている。


 魔王子君も・・・ 彼女も・・・ ああいう一部の人は、自分より友達の命を優先して動き、そしてお互いに危機に落ちた。


 皮肉なものだね・・・ お互いを思うが余り、その結果お互いを貶めてしまうんだから・・・』



 するとある場所へと続く扉の前に来たときに、そこを見張っていた警備員に彼は止められてしまいました。


 「お客様。ここはスタッフ専用のエリアです。」

 「道に迷われたのでしたら、ご案内しましょう。」


 警備員達の話を聞き流しながらカオスは仮面の中でにたりと笑った。



______________________



 警備員が止めていた広間の中では、大勢のVIP達が酒を片手に持ちながらわいわいと盛り上がっています。しかしその人達の会話の内容は、普通の人からすればとても恐ろしいものでした。


 「あなた、この前買っていた子はどうなったんですか?」

 「いい感じに育ってますよ。丁度十五歳になって中々毎日楽しませて貰ってます。」

 「いいな。僕も今回買っちゃおうかな。」

 「私もそろそろもう一人買いましょうかねえ。」


 そう、この場は一度フィフスも連れて来られた人身売買の会場。席に座っている客人達は、全てそれを目的としてやって来ている人達でした。彼らは今、次の商品である人間を待ちわびていたのです。


 そこにキーンとマイクの音が響き渡ります。客人達は一斉にステージの方に目を向け、歩いてくる人を見ました。


 しかしそこに現れたのは・・・








 「レディース!! ア~ンド! ジェントルマーーーーーーーーン!!!!



  ・・・ご来場の皆様、盛り上がってるでしょうかぁ?」


 唐突に司会の人間が変な格好の奴に変わり、ふざけた軽いノリを言われた事に客人達は野次を飛ばします。


 「誰だお前!?」

 「司会者はどうした!?」

 「早くつまみ出せ!!」


 しかしいくら野次を飛ばしてもスタッフは動くどころか、その場に一人もいなくなっていました。 そして誰も直接止めに来ないことをいいことに、カオスは意気揚々と話を続けました。


 「ご来場の皆さん! 本日はあなた方にスペシャルなサプライズとして、こちらのイベントをご用意させていただきました。」


 観客達はサプライズと言われ、少し内容が気になりました。


 「サプライズ?」

 「何かしら?」

 「あの変な格好と関係あんの?」


 ザワザワとし続ける場内。カオスはスタンドからマイクを取り、ステージ内を我が物顔で歩き出します。


 「先日出された商品の中に、本物の赤鬼がいたことはご存じでしょう。あいにくあれはすぐに売れてしまいましたが・・・


  ・・・実はこの度、あれと同じ本物の妖怪を複数仕入れることが出来たのです。」


 観客達の声が大きくなります。美少女が出ないことにつまんなく思う人もいれば、珍生物をこの手にできるチャンスに心躍る人もいます。


 「さて、うずうずしている皆さんに早速ご覧に入れましょうか。本物の妖怪・・・




  ・・・いや、魔人の皆さんでーーーーーーーーす!!!!!」


 観客がカオスの言い方に疑問を思うと、ザワついた音をかき消す事態が起こりました。


















 「ガァ~・・・ ようやく出番か・・・」

 「好きにやっていいのだな? カオス。」

 「!!?」



 観客の周辺一帯のカーテンや死角などから、次々と別の魔人が出現したのです。その数は、十体を優に超えていました。


 「な、何だコイツら!?」


 観客の一人がこぼした言葉を拾ってカオスはマイクで話します。


 「コイツらって、あなた方が取り合っていた魔人さんですよ。最も商品じゃないけどね。」


 観客達は目の前に現れた摩訶不思議な存在の数々、それも手錠もなく自由に動いている姿に恐怖を覚え出します。


 嫌な予感がした何人かがそそくさと席から立って広間を出ようとしますが、扉のノブに触れた途端、その手が焼けるような痛みに襲われました。


 「熱ぅ!!・・・」


 次にその人が自分の腕を見ると、その手が消えて出血していました。


 「アァ!!?・・・ アアアァ!!!・・・」


 そんな人の様子にカオスは軽口で言い放ちます。


 「ダメですよ~逃げちゃあ・・・ あなた方にはこれからお楽しみになって貰うんですから。」


 後ろに下がる観客達に魔人達が周りを取り囲みます。


 「な、何だこれは?・・・」


 囲まれた観客の一人がステージに目をやると、その裏から次々と若い人間が出て来ます。彼女達の腕には手錠がはめられ、この場で言う商品であることを示していました。カオスはその人達にマイクで拾われない程度に静かに声をかけます。


 「良かったね。もうすぐ願いが叶うよ。」


 そしてカオスは再びマイクを手に持ち、大声で叫びました。


 「鬱憤溜まっている若者の皆さん! 暴れたくてうずうずしている魔人の皆さ~ん!! ここからは君達が主役のパーティーだぁ!!!





  存分に・・・ 盛り上がっていきましょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」





 叫び声と同時に彼が右手を突き上げたのを合図に、出現した魔人達が一斉に怯える人達に飛びかかりました。








 広間の出入り口、そこからしばらくの間、周辺の廊下渡って鈍い音が響き渡たりましたが、その場を警備していたスタッフ達は石になったように動こうとしませんでした。


 それがやんで少し下後、広間の出入り口である扉が開き、カオスが先頭を切って出て来て、彼らに触れます。


 「おつとめご苦労さん。」


 すると触れられた彼らはその立った姿のまま表情も変えずに床に倒れてしまいましたが、カオスはそこ異常な光景を見向きもせずに後ろに声をかけました。


 「さ、行こっか。」


 そうしてカオスが先頭になって出て来たのは、さっきまでよりも明らかに人数が増えた魔人の集団でした。


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