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第226話 時間稼ぎ

 突然目の前に現れた五体の信の姿に、フィフスは今思考力が浅くなっていたこともあって簡単に混乱し始め、荒々しくしていた動きを止めました。


 「・・・?」


 信はこれを見てすぐに形勢をこちらに向かせようと、量産された信達をバラバラに動き出させ、更にフィフスを翻弄しにかかります。


 「「「「「さあ、かかってきな。」」」」」


 フィフスは破れかぶれに一番近くにいた信を殴りました。しかし彼がダメージを受けている様子は全くなく、尚も動き続けていきます。


 「ほらほらどうした?」

 「足が止まってるよ?」


 複数体で動きながら彼らは時折銃を撃ち、フィフスの動きを止めにかかります。多少の効果はあり、時間稼ぎは出来ています。しかしこれではとても決定打にはならない上、魔力切れまで稼げるとは信自身も思っていませんでした。


 『出来るだけ持ってくれよ・・・ 即席だから余り手も無いんだ・・・』





 そんな二人の戦いを少し離れた場所で見ているしかなかった瓜。自分も何か出来ないものかと考えを巡らせましたが、ただでさせ戦闘の出来ない自分が、出血状態であの火の中に飛び込むのは、自作行為以外の何物でもないことも理解していました。


 「何か・・・ 私にも・・・」


 瓜は辺りに使える物がないか、血が抜けて失いかける気をしっかり張って目を懲らしてみると、彼女はある一点に目線が固まりました。


 「あれは・・・」





 ここまでは順調に翻弄できていた信。しかし手品のトリックはそう長くは続いてくれず、もう効果が切れかけていました。


 フィフスの攻撃がどんどん苛烈になっていき、それによって数体の信が全身丸々炎に包まれてしまい、それが晴れると、突然その攻撃を受けた信達の動きが固まってしまい、その姿が壊れたテレビの映像のようにざらつき始め、そして少しすると消滅してしまいました。


 『チィ!・・・ もう分身に限界が来たか。』


 分身に見えていたさっきまでの複数人の信達は、全てあらかじめ撃っておいた自己浮遊機能付きの小型マシンから映し出された立体映像(ホログラム)だったのです。


 動きが止まった上にざらついた映像になったことで信の時間稼ぎの策は頓挫し、フィフスの次の攻撃で小型マシンは全て破壊され、分身のように映っていた信達は消滅してしまいました。


 すぐに信は距離を取って次の仕掛けを発動しようとしますが、フィフスがそんな隙を与えることはなく、一瞬で至近距離まで近付かれて攻撃を受けてしまいました。


 「グゥ!!・・・」


 渋木の時とは違って信は体を反らせて直撃は避けることが出来ましたが、それでも装甲の一部が欠損し、中の体も少しかすってしまいました。


 『余波だけでこれか・・・ さっきの少年が出血すらしないでやられていたのにも納得いった。とはいっても、一瞬で焼いて止血するなんてのも超理論だけど・・・』


 現時点ではそのように信も頭を回すことが出来てはいますが、実のところやられた箇所の痛みは残っており、そこからの回避行動に多少の隙が出来てしまいました。


 「クッ・・・」


 信は出来てしまった弱点をカバーするためにさっきも使っていた閃光弾を逐一撃ち出していましたが、慣れてきていたのか最初の時より効果は薄く、すぐにフィフスは追い付いてきます。


 幸いなのは、彼の動きが直線的なために予測が出来ればなんとか避けれたことで、彼はどうにかその方法で三度フィフスの攻撃を回避できました。


 『イヤな話だなぁ~・・・ 彼が暴走しているおかげで助かっているなんて・・・』


 しかしこれも所詮はその場しのぎ。時期に限界が来るのは目に見えていました。信は息を切らしながらフィフスを見ますが、彼の限界まではまだまだ遠そうでした。


 『いい加減解けてくれるといいんだけど・・・ ま、無理っぽいか。』

 「・・・」


 すると更にマズいことに、フィフスは自身の右腕にさっきまでも攻撃とは一見しただけで区別が付く程の熱気を纏い出しました。これまでとは威力が段違いの大技が来そうな雰囲気です。


 「おっと・・・ こりゃやばっ・・・」


 信は逃げようにも逃げ切れないことを悟って苦笑いをしてしまうと、フィフスは容赦無くそんな彼に溜めた炎を浴びせようと腕を伸ばしました。


 「・・・」

 「ッン!!」


 信は思わず後ろに下がりながら両腕を前に出してどうにか構えますが、その程度で防げるわけがなく、自分が詰んでいることを確信すると、ついに炎が放たれかけたそのとき・・・













 「フィフスさん!!!」






 「!!?」

 「・・・?」


 フィフスの後ろから大きく、ハッキリとした声が響いてきました。信がそちらをよく見ると、そこにはいつの間にか場所を移動していた瓜が、渋木に奪われていたはずのフィフスの剣を持って立っていました。


 「瓜君?・・・」


 信は次に彼女の近くの甲板に目が行きました。周辺の炎のせいで分かりづらくなっていますが、そこにはここまで無理をして歩いていたことを証拠付ける血痕が残っていました。


 「!!・・・ 『彼女まで無茶を・・・』」


 瓜の今の状態が分かった信はすぐに彼女を静止させるために声をかけます。


 「危険だ!! 君は下がって!!」


 しかしもう声を出してしまったことで、フィフスの注意が再び瓜に向いてしまいました。信は止めよう銃を構えますが、そんな彼に瓜はどういう訳かこう言い放ちます。


 「大丈夫です!!」

 「え?」


 信が彼女の言うことに困惑して撃ちかけた銃を動かせずにいると、瓜は体にいくつか緊張による冷や汗を流しながら、持っている剣の持ち手を強く握りしめました。




 「私が・・・ 貴方を止める!!」

<魔王国気まぐれ情報屋>


・ゲキリン


 信がドラゴンを使用中に主に使うハンドガン。側面部にタッチパネルが仕込まれ、ここに触れることで様々な調整、及び攻撃の変更が可能。


 非常に細かい設定が必要のため実質的な彼の専用装備になっている。



信「ホログラム弾もその設定の一つだよ。」


経義「アンタのスーツだけチート過ぎないか?」





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