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第225話 ドラゴン

 突然現れた生体強化スーツを着たその人はフィフスから距離を取ってから瓜を優しく甲板に降ろしました。


 彼女が振り返ってその人の全身を見ると、まるでドラゴンを擬人化したかのような見た目をしています。瓜がどう接したらいいのか悩んでいると、相手の方から話しかけてきました。


 「ギリギリ大丈夫だったかな? 瓜君。」


 瓜はその声に聞き覚えがあり、その人の名前を呼びました。


 「龍子博士!?」


 相手の人は隠すつもりがないのか頷いて肯定しました。瓜の言ったとおり、このスーツを着ているのは、フィフスと共に彼女を助けようとしている『龍子 信』でした。


 「悪い予感がしてきてみたら、思っていた以上の大事になってるね・・・」



______________________



 この事態には、見物していたカオスとセレンも驚きの顔をしていました。


 「あの男! まだ生きてたの!? 化ケガニは・・・」


 すぐにカオスが化ケガニの生存確認のために彼の契約の魔道書を召喚しましたが、取り出せたのは半分以上が既に灰になって消滅しているものでした。


 「あらら・・・ してやられてたのか・・・」


 セレンは舌打ちをし、カオスより前に出ようとします。しかしカオスはこれを止めました。


 「どこへ?」

 「決まってるでしょ! 邪魔者の排除よ!!」

 「やめておいてください。」

 「何よ! いくら相手が本気の獄炎鬼でも、周囲に海水があるここじゃあ私の方が有利でしょ!?」

 「ええ、でもここは矛を収めてください。その方が面白いものが見られますから・・・」


 セレンはカオスがフィフスと信の同士討ちを狙っていると察し、趣味が悪いと感じながらも座り込みました。


 「フンッ!!・・・」

 「体力を削らない方がいい・・・ これからもう一仕事あるんですから・・・」



______________________



 信は改めて今のフィフスの姿を見ます。そして彼は申し訳なさそうな声を出しました。


 「悪い予感がして急いできたけど、これは予想以上だな・・・」


 信は瓜がいた監禁部屋で化ケガニをこの姿で追い詰めたときに、倉のところまで案内して貰っていました。しかしそこに倉の姿がなかったこと。そしてこれまでのいきさつから、妙に都合が良いことに気が付いたのです。


 「瓜君。君手紙を送ったかい?」

 「手紙? それって一体・・・」

 「やっぱりか・・・ ッン!!」


 信はそのとき瓜の全身を見て、彼女が出血していることに気が付きます。


 「瓜君!!」


 信は彼女に駆け寄ろうとしますが、瓜は震える右手を出してそれを止めます。


 「私は・・・ 大丈夫・・・ それより・・・ フィフスさんを・・・」


 信は瓜が急いで手当てをしないとマズいことに気付いていました。しかしこの場に医療道具なんてない上、そんなことをしている間にフィフスに襲われることを思うと、この場は彼女に耐えて貰うしかありませんでした。


 「後は僕に任せてくれ。」

 「でも!!」

 「大丈夫、死にはしないよ。僕も・・・ 彼もね。」


 といった次の瞬間、フィフスは二人にめがけて走り出しました。瓜の方に向かわせるわけにはいかないと信は手にいつもとは違う銃を構え、それをフィフスに撃ちました。しかしその銃弾は一つ残らず彼に届く前にその周囲の熱で溶けてしまいました。


 『やはりこの程度ではダメージにもならない。でも何度もやれば・・・』


 信が繰り返してこの行動をしていると、フィフスが瓜ではなく彼に顔を向けました。


 『よし・・・ これでこちらに注意は引けた。あとはどこまで耐えきれるかだけど・・・』


 しかし信に策を練る時間を与えることもなく、フィフスは彼に向かっても容赦無く火炎放射を飛ばしてきました。


 「おっと!」


 すぐに信も動いて攻撃を回避しましたが、それでも紙一重でのものな上、さっきまで彼が立っていた甲板やその先の手すりは、炎が消えると共に跡形もなくなっていました。


 「これは・・・ 本当におっかない。魔力切れってのが起こるまで、どれだけこれの相手をしないといけないんだか・・・」


 信は改めて自分がかなり無茶なことをしていることに気付かされます。しかし瓜にあんなことを言ってしまった手前もう引くわけにもいかず、兎にも角にも一度攻めてみようと前に出てみます。


 確かに信の機動力は優れ、前回の戦いで化ケガニカラカルガルと逃げ切れたことにも説明が付きました。しかしそれも凄まじいフィフスの攻撃には通じず、近付くどころか追い込まれていっていました。


 『単純な火力じゃとても勝ち目がないな・・・ でも、小細工なら!!』


 信は動きながらノールックで銃のカバーを開き、そこにあった液晶に触れて設定を変更すると、その銃をフィフス本人ではなくその周囲にばらまくようにして撃ちました。


 「瓜君! 目を隠して!!」


 瓜は言われるままに目を閉じて右腕で目元を覆うと、次の瞬間、ばらまかれた銃弾が同時に強く光り出し、フィフスはそれに目くらましをされました。


 「グゥ!! ガァッ!!」

 「特製閃光弾・・・ だけど・・・」


 信の弱腰な声に説明を付けるように、今のフィフスにこの攻撃は大した効果もなく、彼はすぐに彼のところまでやって来ました。しかしフィフスはその途中で突然動きを止め、首をキョロキョロと動かしました。


 「・・・!!?」


 閃光弾をかいくぐった彼の目の前には、何故か信が複数人に増えて見えていたのです。その全員から同時に話しかけられました。


 「試験段階の新装備を君相手に試すことになるとは思ってなかったよ。」


 そこから複数人の信がバラバラに動き出し、フィフスを翻弄し始めます。


 「さあて、もっと楽しく遊ぼうか。」

<魔王国気まぐれ情報屋>


<ドラゴン>


 信が自分専用に開発した生体強化スーツ。過去に彼が作った四つのプロトタイプスーツを元に製作された完成品で、逐一開発した新装備の試験機にもしている。


 全体的にバランスの良いスペックに調整されており、その場の状況に合わせて戦える。局地戦に備えた秘密があるようだが、それはまたの機会で・・・




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