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第220話 大っ嫌いで


 「は? お前、こんな場で何を言っている?」


 渋木は死に迫っているフィフスから聞いた余りにも突飛な質問に反射で聞き返してしまいました。フィフスはそれに具体的に答えました。


 「ただ単に気になっただけだ。お前は瓜のどんなところが好きなんだよ。そこまで俺をコイツから離す理由は何だ!?」


 渋木はフィフスの言い分に腹が立ちました。


 「どんなところが好きかだと? そんなもの決まっている。」


 渋木はそこから自分が瓜に対して思っていることを津々浦々と語り出しました。




 「彼女は優しい。どんなイジメにも決して仕返しをすることもなく、それでも相手を尊重する。相手がお前のような化け物に対してもな。



 人のいやがることを率先して行なう縁の下の力を持つところも・・・



 他人のことを優先して考えるところも・・・



 こんなにも優しいのに、それをひけらかさないことも・・・



 全て全て愛おしい! 俺は幼い頃から、そんな彼女を手に入れたくてたまらなかった。






 そして再びその姿を一目見たとき、俺は息を飲んで見とれてしまったよ。成長した彼女は、こんなにも美しくなっている。これ以上完璧な人間なんて存在しない!!




 ・・・だから、瓜の優しさ受けながら、それに全く気付くことすら出来ない馬鹿共に彼女が汚される前に、俺の物にしておく必要があったんだ・・・




 幼少の時のように彼女が傷つくことが、もう二度とないようにな。」




 渋木は率直に思っていた事を語り終えると同時に自分のやっていることの正当性を言い出しました。話を聞き終えたフィフスはボソッと言葉をこぼします。


 「完璧な人間・・・ ね・・・」

 「なんだ?」


 そこからフィフスはボソッと言葉をこぼすのを皮切りに静かに口を開き始めました。


 「瓜にそこまでいいところがあるとはな~・・・ 初めて知った。」

 「そうだ。俺は彼女のことをお前なんかより遙かに理解している。たかが数ヶ月の関係である、お前より遙かにな!!」


 強調して言ってくる渋木の体勢にフィフスはその言葉の一つ一つを受け止めて返事をし出します。


 「確かに、俺は瓜のガキの頃なんて知らねえし、コイツのいいところもそんなにたくさん言葉にすることも出来ない。」


 負け惜しみにも聞こえる言葉をつらつらとこぼし続けるフィフス。渋木は彼の戦意がそがれているものと高をくくっていましたが、彼の姿勢に屈する様子はなく、次にこうハッキリと言ってみせました。


 「だが!!・・・










  ・・・だが、瓜の悪いところなら、それに負けないほど色々と知ってる。」


 「何?」


 「コイツは面倒くさい性格をしている。普段は人前では縮こまっちまってハッキリしない。おかげでいじめられてたし、今でも俺の助けがなきゃ友達づきあいも出来やしない。



 そのくせ、変なところで人を優先して後先考えずに危ないことに首を突っ込んで行っちまう。



 服のセンスもネーミングセンスも欠片もない。周りからは変な目で見られるってのに、それでもかっこいいつって疑いもしない。



 運もとことんないしな。人付き合いなんて最悪だ。金をせびる女にご都合思想のストーカー、今もこうして過去の男に振り回されてる。厄除けも壊すほどだったようだしな。」


 フィフスはチラッと瓜の左腕を見ます。さっき近付いたときにその腕に彼が渡した厄除け(本当は縁結び)がないことに気付いていたのです。


 「おまけにパニックになり過ぎるとバーサーカーになって俺でも手に負えなくなる。危なっかしくて仕方ねえよ。」


 一周回って笑ってみせるフィフス。彼は後ろで何かが微かに震えたのも感じました。そして渋木の方は自分の好きな人がとことん罵倒されていることに我慢がいかなくなり、声を荒げ出しました。


 「ふざけるな!! 貴様、自分が殺させ欠けているときに何を言っている!?」

 「たかが数ヶ月でも、一緒に暮らしていたらこれだけ相手のイヤな部分が目に付くって事だ。コイツは、お前の言うような完璧な人間にはほど遠い・・・










  ・・・俺は、瓜のこういうところが大っ嫌いだ!!」



 殺され欠けているにもかかわらず調子よくペラペラとそんなことを話すフィフス。渋木は更に気分が悪くなります。


 「貴様、この期に及んで彼女をけなすとは・・・ やはり化け物は、人間になど何も感じていなかったと言うことか!!」

 「そういう訳じゃねえよ・・・」


 フィフスは途端に調子を戻し、一気に語ったことに息をついて区切ります。



 「俺は瓜のそういうところが大っ嫌いで・・・





   ・・・そんなところも含めて、コイツのことが大好きなんだよ!!!




    ・・・矛盾してるけどな。」


 「き・・・ さ、ま・・・」


 「これが俺にとっての瓜だ。完璧とはほど遠い。だが、外面だけでコイツの全てを決めたお前とは、決定的に違う!! コイツは、お前の欲しがっている丁のいい人形じゃねえ。お前の物にはなれねえんだよ・・・」


 へラッと笑いを浮かべるフィフス。対してハッキリと自分の言い分を反対された渋木は怒りが頂点に達しました。


 「ふざけるな・・・ ふざけるなぁ!!!・・・ 化け物が・・・ 彼女を分かったように言うな!!!・・・ 瓜の俺の物だ・・・ それは運命で決まっているんだ・・・ 証明してやる・・・」


 渋木は狂ったように目を震わせながらこんなことを言い出しました。


 「瓜・・・ その化け物にとどめを刺せ・・・ 喉を一突きするんだ!!」

 「!!・・・」


 フィフスが顔をピクリと動かしたのを見て、渋木はヘルメットの中でイヤな笑みをしました。銃口はそのままフィフスに向けていますが、その手の震えから余裕がないことが丸わかりです。


 フィフスの首筋裏にナイフの先端が当たります。


 「ハハハ・・・ これでお前は死ぬ・・・ 俺の女によってな・・・ ハハハハハ!! ハハハハハハ!!!









  ハハハ・・・ ア?」


 渋木はしばらく笑い続けてから、二人が膠着して動いていないことに気付きました。


 「?」

 「時間稼ぎは、こんなもんか?」


 フィフスが言った事に渋木はどういうことかと無言で固まってしまいました。


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