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第219話 喧嘩

 夜の冷えた風が容赦無く辺りを通り続ける中、フィフスは目の前で起こっていることに息を吐きながらも動けなくなった。


 「瓜・・・ お前の事情は聞いている。でも安心しろ! ここでそいつがやられても連絡は飛ばない! グレシア達に危害はいかない!!」

 「何の話をしているんだ?」


 渋木はしらを切るようなとぼけた顔になった。


 「あ?」

 「だから言っているだろう。瓜はようやく俺のことを分かってくれたんだって。それ以外に理由なんてない。」

 「んな訳・・・」


 渋木の言葉を裏付けるように、瓜も腕を伸ばして渋木を抱き締めた。


 「お前はここに瓜を取れ戻しにやって来たんだろ? だが、彼女は自分の意思で俺の下にいるんだ。お前のやっていることはお節介意外の何でもないんだよ。」


 渋木は瓜の頭を撫で、フィフスの戦意を削ごうとします。瓜も撫でられた後に渋木の顔を見上げてうっとりとしています。


 「・・・」

 「分かったか? 瓜はもう()()()なんだよ!!」


 勝ち誇ったように言いのけた彼は再び彼女の顔を見て、一つやらしい事を思い付きました。彼は瓜の耳元に顔を近付け、小声で何か囁きました。彼女もそれに頷くと、二人は揃ってお互いの腕を体から離します。


 「『()』、だと?」


 フィフスが相手の動きに警戒していると、渋木は彼の予想していた中で最悪の手に打って出てきました。体から離された瓜に何らかの指示を出し、彼女にフィフスをまた襲わせたのです。


 『アイツ・・・』


 フィフスはより怒りを増させながらその相手をする羽目になりました。ここで逃げたところでもう後はないと踏んだのです。


 「瓜!! 一体どうした!?」


 彼女から問いかけに対する返答はありません。しかしフィフスは彼女の動きを細かく見て今の彼女のおかしさに勘付きます。


 『これは・・・ やっぱりだ。瓜の動きはド素人そのものだ。振りがデカいし体勢も曖昧、ろくにステップも踏めてない。


 だってのに、それを無理矢理早く動かしてきてる・・・ 明らかに自分の意思でやっていないことは明白だ。だが、術を解こうにも渋木が撃ってくるからな・・・ 先にアイツを攻略しないと話にならない!!』


 フィフスは自分の元に剣が無いことを悔しく思った。


 『クソッ!・・・ 剣は渋木が持ってやがる。化けゴウモリの時のような手は使えねえ・・・』


 しかしフィフスが怒りを増させていたのは剣を持っていない自分のことだけでなく、散々好きだと言っていた相手を自分の身を守るためだけに平気で人殺しをさせようとしている渋木に対するものが大きく占めていました。


 フィフスは瓜の攻撃を避け続けながら、渋木に向かって怒声を飛ばします。


 「お前! 好きな女に人殺しをさせる気か!!」

 「化け物狩りなんだからいいだろ。それにトドメは求めていない。攪乱してくれれば十分だ。」


 渋木は瓜の攻撃に注意が散漫になっているフィフスに向かって、温度感知機能のない銃を撃ち出してきます。フィフスは度重なる戦闘やダメージの疲労も相まって徐々に動きが鈍くなり、何度か撃ってくる位置に頬に一発かすってしまいました。


 「チィ・・・」


 渋木はここぞとばかりに攻撃を繰り返し、フィフスは何度かかすってしまいます。それは彼が徐々に追い込まれている事を示していました。







 そんな戦いをしている三人の様子を、離れた別の場所から高みの見物を決め込んでいるカオス。


 「ア~ア~遊んでる。あの薬をふんだんに使ってくれちゃって・・・」


 渋木が瓜に飲ませたのは、カオスがグレシアから盗んだ魔術薬を元に生成した一品ものだったのです。


 『過去に魔王子君が殺した化けゴウモリの残留邪気を応用してみたけど・・・ セレン様の程精密にはいかないか~・・・ あの人がいたら話が早かったんだけど、そういう訳にもいかないからな~・・・』







 カオスが物思いにふけっている間にフィフスは更に二人に追い込まれ、更に数発の銃弾を受けていました。


 今のフィフスは自身の体では、瓜に触れた途端に彼女に火傷を負わせてしまうため拘束することは出来ません。かといってフィフスは今動かしている体がそう長くは続かないことも知っています。


 どうにかならないかと考えている間に動きがおろそかになり、瓜が振り回すナイフに右腕が当たってしまいました。


 「!?・・・」


 一瞬変な反応をした隙に、渋木は更に銃を乱射し出しました。フィフスはこの射撃の荒さに瓜が巻き込まれることを恐れ、彼女より前に出て放射炎を出して打ち消しました。


 「危ないことを・・・」


 銃弾を全て捌ききってホッとしたのもつかの間、フィフスは自分の首筋裏に刃物を突き付けられたような感覚を覚えました。


 「ッン!!・・・ お前・・・」


 彼の後ろには、今さっき助けたばかりの相手にあと一歩でも動けばナイフを刺されるところまで追い込まれていました。


 「おいおい・・・」


 前方には銃口を向ける渋木。後方には至近距離にナイフを構える瓜。逃げ場をなくしたフィフスは、目を泳がせて考えに詰まりました。


 対してこの状況に追い込んだことで勝利を確認した渋木は、警戒を怠らずにフィフスに話しかけてきました。


 「ここまでだな。最後に言いたいことがあるなら、同情して聞いてやるぞ。」


 上から来る言葉にフィフスは一旦下を向き、自分の腕を視界に入れました。


 「・・・?」


 そこで一つ小さいながらここから抜け出せるかもしれない考えが思い付きました。


 ここまで追い詰められた彼はこの考えに賭けることにし、顔を上げました。


 「おお、じゃあ最後に聞いてみたいことがあるな・・・」


 渋木は弱々しく話し出すフィフスにフンと鼻息を出してきました。


 「聞かせろ。」


 そこでフィフスが渋木に聞いた質問は、何故ここで聞いて来たのかと聞き返したくなるようなものでした。














 「お前、瓜のどんなところが好きなんだ?」



<魔王国気まぐれ情報屋>


・薬を制作中のカオス


 ボンッ!!・・・


 何度も失敗の煙に巻き込まれるセレンとフログ



カオス「あ~あ、また失敗だ。」


セレン「いい加減余所でやってくんないかしら!!」




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