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第218話 対策

 まん丸に目を開いて殺気を向けてくるフィフスに、必中必殺だと思っていたものが通じなくなっていたことに焦る渋木。


 「ハ!・・・ ハハ!!・・・ だからなんだというんだ!? どうにしろお前が俺に勝てないことは決まっているだろう!!!」


 渋木は喋りながら左腕の腕輪のスイッチを押しにかかります。


 「たかが数分寿命が延びただけで・・・ ヘラヘラと笑うな!!!」


 言葉を切ると同時に渋木はスーツを着込み、いきなり真正面からレーザー光線を撃ち出してきました。


 「ッン!!・・・」


 フィフスも紙一重でそれをかわしますが、前回と同じく相手の攻撃の軌道は正確に彼を追ってきます。


 『クッソ! やっぱこれがあるか・・・』

 「ナノマシンを切り抜けたところで所詮こうなる。降参して逃げるのが吉だったな! 馬鹿め!!」


 渋木は調子を戻していきながら射撃を続けます。フィフスも走り続けますが、攻撃を受けるのは時間の問題でした。ですがフィフスに特に焦っている様子はありません。


 『これが本当ならドクターに頭が上がらなくなっちなうな・・・』


 フィフスは走っている最中、密かに右手を銃の構えにして火花弾を発生させていました。彼は信に渋木のスーツを説明したときに、彼が一つ立てた対策に打って出たのです。


 「当たっててくれよぉ!!!」


 フィフスは内心に思った事をこぼしながら、発生させた火花弾を明後日の方向に向かって飛ばしました。渋木は彼の意味の分からない行動に頭がイカレたのかと特に気にしていませんでしたが、それによって墓穴を掘りました。


 「このままレーザーで灰にして・・・」

 「そ~いつはどうかな?」

 「!?・・・ ッン!!」


 渋木はフィフスの意味深な返しの意味に気が付いたのは、それが目に見えてからでした。なんとフィフスに向かって行っていたはずのレーザー光線が離れていったのです。


 「これは!!?」


 レーザー光線は、フィフスがさっき撃ち出した火花弾の方に向かっていました。


 「仮説通りだったようだな!!」

 『あ~あ・・・ ドクターのニヤけづらが思い浮かぶ・・・』


 フィフスは信との会話を思い出しました。



______________________



 「魔人を特定して撃ってくる? ないない。そんな技術は完成してないよ。」


 信はフィフスが感じた事を軽く否定しました。フィフスはこの世界の技術についてイマイチ分かっていないために、それを素直に聞き受けます。


 「そうなのか?」

 「確かにそれに関する実験は繰り返されている。でも、魔術も魔力もよく分かっていない僕らに、それを解読して特定するなんてまだ無理だよ。」

 「・・・」

 「可能性は0ではないだろうけど、それよりは別の何かで狙ってるんじゃないかな?」


 しかしそうは言われてもフィフスに思い当たる節がありません。そこに信は予想が付いたのか、彼にヒントを投げかけました。


 「考えてみよう。彼がエデンの事情を知っているなら、何故わざわざ君だけをこの船に呼んだんだい? 志歌君達も呼んで一掃した方が効率いいだろ。」

 「それはまぁ・・・ 確かにな。」


 フィフスも頷く。信はそこから考え出した予想を話しました。


 「五郎君、君は炎を操れるんだってね。」

 「ん? それと関係あんのか?」

 「例えば、それで人より上がった体温を見ているとか。そうだ! 自分より高温の熱源を作ってみるとかどうだい?」



______________________



 フィフスは信からいわれた仮説を信じ、自分の体温より高温の火花弾を作り出して放つことで、レーザー砲の自動照準を眩ませたのです。


 そのままフィフスはレーザー光線の軌道が変わっている間に走り、自分の武器の不調続きに訳が分からなくなっていた渋木はすぐに間合いにまで近付かれ、格闘戦に持ち込まれてしまいました。


 「ンナッ!!・・・」


 そこからはこれまでの二人の戦いとは打って変わり、フィフスが優勢になっていました。


 「エエイ! ハァ!!」

 「フンッ!!」


 フィフスは渋木のパンチを上手く受け流しながら開いた片手でジャブを決めます。装甲が厚いようでダメージを与えることは出来ませんでしたが、続けざまのショックで渋木は完全に怯んでいました。


 「どうした? あんだけ調子よくしておいてこの様か?」

 「黙れ!!」


 憤慨した渋木は至近距離から両腕の仕込み銃を撃ち出そうとします。しかしこの動きを予測したフィフスは丁度相手の銃口二つがある位置にそれぞれ火花弾を撃ち出し、レーザー砲にそれを追わせる形で体勢を崩させました。


 「何い!!?」

 「ゲンコツ一発じゃとても足りんが、とりあえずこれでも喰らっとけ!!」


 彼は砲台と共に下がっていた渋木の頭に、思い切り拳を叩き込みました。見事命中したそれは全体とはいかずとも装甲に確実にダメージを与え、特に脆かったバイザーを割って彼の目元を露出させました。


 「ガァ!!・・・ グゥ・・・」

 「オイ・・・ お前、まさか・・・」


 攻撃のショックに渋木は少し目を回します。フィフスはそんな彼の醜態を見て、ある予感がします。


 「ひ弱だな。」

 「あ!!?」

 「お前、さては鍛えてないだろ? 反応速度も拳の強さも素人のそれだ。これまでずっと機械に頼って戦ってきたのか!!」

 「!!!・・・」


 渋木は目を泳がせ、割れた部分から冷や汗を覗かせました。つまり図星ということでしょう。


 「そんな相手にこれまで苦戦させられていたとはな・・・ だが、これで終いだ!!」


 フィフスは的確にバイザー奥の顔面を狙って攻撃を仕掛けました。ですがそれに渋木は焦ったようにこんなことを言い出しました。




 「瓜!! 俺を守れ!!」


 「!?」




 すると渋木の後ろで呆然と立ち尽くしていた瓜が動き出し、二人の間に割って入り込みます。そしてポケットから折りたたみナイフを出して刃を出し、フィフスを切りつけにかかったのです。


 「ナッ!!」


 フィフスは背をそらせて回避しますが、瓜の猛攻は止まりません。そこからも数回彼女の攻撃をよえ、渋木との距離が離れると、動きを納めました。


 「瓜!? これは・・・」


 困惑するフィフス。その間に体勢を戻した渋木は、優しく声を出します。


 「瓜、こっちにおいで。」


 そうすると瓜は彼に言われるがままに動き、彼はそんな彼女をフィフスの目の前で抱き締めました。そして渋木は、こう言ってのけました


 「時間はかかったけど、彼女もようやく俺のことを理解してくれたってことさ。」


 場の形勢は、再び渋木に傾きました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・モンキー


 エデンコーポレーションのある科学者が渋木の専用機として開発した生体強化スーツ。いくつかの新システムのテスト機という側面を持つ。


 渋木自身がエデン重役の息子ということもあり、彼の身を守るよう装甲が非常に分厚く防御力が高い。


 欠点として重武装な上武器によるエネルギー消費も多いため、試験機の域を出ずコスト高な面がある。


 開発者の総評としては「ボンボン用のおもちゃ」らしい。




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