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第216話 チッ・・・ チッ・・・ チッ・・・

 夜も更け、周りには暗く染まった海と先の見えない空しかないクルーズ船。その先端の装飾品の上に、カオスは楽しそうに座っていました。


 「フンフフンフフ~ン・・・」

 「気持ちの悪い鼻歌をすぐに止めろ。」


 そんな彼に声をかけたのは、さっきの戦闘が終わって戻ってきた化ケガニです。


 「あ、人間相手に鬼ごっこして惨敗した人だ~・・・ よくそのまま戻って来られたね~・・・」

 「チッ・・・」


 ケラケラとしながらもしながら化ケガニをからかうカオスでしたが、その耳に波の音とは違う何かの音が聞こえて来たことで遊ぶのを止めて顔の向きを戻します。


 「オッ! あれがそうかな?」


 その音に耳を澄ませてみると、音の正体がこの船に向かってきているのが見えました。カオスは渋木から預かっていたトランシーバーを取り出し、ボタンを押して話し出します。


 「あ~あ~・・・ もしも~し!!・・・ こちらナイスガイピエロのカオスくんで~す。事前に言われていた乗り換えの便、ご到着なさいました~・・・」


 カオスはふざけた言い方で要件を伝え、ボタンから手を離してトランシーバーを下に下げました。


 「と、いうことだ。多分また仕事頼むと思うから、準備しといて。」

 「いちいち指示を出すな! 成り上がりが。」

 「その成り上がりの気まぐれのおかげで今そうして動けてるんじゃなかったっけ? なんなら魔道書の中に戻してあげようか?」

 「ケッ・・・」


 化ケガニは文句を垂らしながらその場から去って行きました。一人になったカオスは、足をフラフラと動かしながら海を眺めています。


 「暗い海だね~・・・ 辺り一帯真っ暗でな~んも見えやしない・・・ ま、もう少ししたら明かりが付くだろうから、多少は見栄えが良くなると思うけど。」



______________________



 「スゥ・・・ ハァ・・・」

 「無理をしちゃダメだよ、五郎君。」


 船内VIPエリアの廊下。何度もダメージを与えられたことで疲弊したフィフスが、信に肩を担がれる形でどうにか歩いていました。


 「悪い・・・ で、追跡の方は?」


 信はフィフスに自身のスマートフォンの画面を見せます。画面には、GPSの信号を表す点滅が居着くか固まって見えました。


 「もちろん。あのときGPSはいくつも付けといたからね。流石にこれなら・・・」

 「ああ、なら助かる。代わりに戦闘の方は任せてくれ。」

 「そのボロボロの体で言われても説得力ないけどね。」

 「いざとなったら身体強化を使う。問題ない。」


 フィフスは軽く笑われていることに聞こえない大きさの声で舌打ちをしながら出来るだけ急いで前に進んでいきます。


 「いいのかい? やっぱり君は休んでいた方が・・・」

 「そうしたくても向こうがさせてくれねえんだよ。」


 フィフスが休まない理由。瓜を助けたいというのももちろんありますが、それだけではありません。船内で何度か会った倉のことから、一つ仮説を浮かべていたのです。


 「倉が俺の所に来たとき、時折胸を押さえていたのが例のナノマシンの効果だと、渋木が持っているスイッチの信号が届く範囲はかなり広い。船内全域と見ていいかもな。気まぐれに押されたら、そっちの方がよっぽどマズい。」


 フィフスの仮説を聞き、信も話を合わせます。


 「それならいっそ、自滅覚悟で攻めた方がいいと? あいにくだけどそれには僕は・・・」

 「んな真似はしねえよ。確かに、多少の無茶はするだろうけどな・・・」

 「多少・・・ ねぇ・・・」


 信はフィフスの言葉に含みを感じながらも、事実細かい手を打つ時間がないこともあってそれについては問い詰めないでおきました。そして再び自身のスマートフォンを確認し、GPSの信号の場所を確認します。


 「大分近付いてる用だね。じゃ・・・」


 彼はフィフスに何かを伝えようと視線を向け、相手もそれに軽く頷いて返事をしました。


 「よろしく頼むぞ、ドクター。」













 そうしてどこかの部屋の扉の前にまで到着しました。その部屋の奥から、GPSの信号がこれまでで一番大きく反応しています。


 「・・・」


 当然その扉には鍵がかかっており、普通に開けることは出来ません。


 「カードキーのデータはないからな・・・ 仕方ない、ここは脳筋プレイで行くか。」


 ボソッと呟き、そして解析する時間を短縮するために部屋の扉を蹴り飛ばしました。もし渋木が部屋の中にいるのなら逆に予想外な行動に動揺する間に部屋に入り、瓜を救いに走りました。


 ですがその部屋の中には、渋木の姿も瓜の姿も無く、誰もいない部屋だけがありました。


 「移動したか?」


 注意深く部屋の中を見ていきますが、特に変わった様子は見受けられません。ここにはもう何もないものかと部屋を出ようとすると、静かな空間の中でどこかから不自然な音が聞こえてきました。


 チッ・・・ チッ・・・ チッ・・・


 「?」


 音の方に近付いてみると、テーブルの中央に置かれている置物に目が行きました。


 「まさか・・・」


 チッ・・・ チッ・・・ チッ・・・













 ドンッ!!!!!




 次の瞬間、置物の中に仕込まれていた時限爆弾が爆発を起こし、その衝撃が部屋中に襲いかかってきました。


 「クッ!!!・・・」


 すぐに監禁部屋から逃げようとしますが当然間に合うわけがなく、必死で逃げる草食動物を軽く追い付いて狩る肉食動物のように相手を飲み込んでいきました。

<魔王国気まぐれ情報屋>

・キャラクター紹介


{マイナ}


種族           混血

年齢           46歳

誕生日          7月7日

身長           165cm

性格           クーデレ(魔王談)

家族構成         夫(魔王) 息子3人 娘2人

使用魔術         聖光術

好きな物・こと      家族 年に一度のデート

嫌いな物・こと      一方的な考えの人

好きなタイプ       筋の通った馬鹿

将来の夢         私に夢は語れない

モチーフ         『ラプンツェル』よりラプンツェル



※母の日なので載せました by作者



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