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第215話 私さえ・・・

 突然豹変したような上、訳の分からないことを言われた瓜は、彼にベッドに押し倒された挙げ句、腕を掴まれて抵抗できなくなっていました。


 「は! 離して!!・・・」


 怖くなって必死な言葉を言い彼女ですが、渋木はそんな彼女の表情すらも楽しんでいるようでした。


 「いい・・・ その顔! いい! 凄くいいよ瓜!! そうだそうだ!! やっぱりそうなんだ!!!・・・」

 「な・・・ 何を言って・・・」


 突然の大声に瓜は恐怖を覚えると、渋木は口をニヤつかせ、目を見開きながら勝手に語り出します。


 「俺はね・・・ 子供の頃、あのとき君と別れてから何人もの彼女を作ってきたんだ。でも・・・ 何故か俺はどんな美人と付き合っても、どんな金持ちと付き合っても満足しなかったんだ・・・」


 渋木は話を続けながら掴んだ腕を引き寄せ、瓜の右手に頬を擦り付け出します。渋木にはそんな彼女の顔も嬉しそうに見て来ます。


 「それが仕事の出張でで龍子博士のラボに行ったときだ。偶然廊下を通っている君の姿を見たんだ!! これはまさに運命だと思ったよ・・・ 俺は一目で心を奪われた。思い出したかのように!!」


 渋木は掴む腕の力を強めました。じんわりとした手汗が、掴まれている瓜にも伝わってきます。


 「それにしても、まさかここまで美しく育っているとはね。」


 二人の息づかいが別の意味で荒くなっていきます。


 「そんな・・・ そんなことは・・・」

 「謙遜するなよ。」


 次第に渋木の力は強まり、顔をより彼女の近くに持っていきます。


 「あの! ちょっと・・・」

 「瓜・・・ あの変な仮面男に焚き付けられていたとはいえ、さっきの行動にはとてもショックを受けたよ・・・ でも大丈夫! 俺はそんなことで君を嫌いになったりしない。 すぐに俺と君が運命で結ばれていることを自覚するさ。」


 渋木はそのまま動けない彼女に更に顔を近付け出します。どんどん距離が縮まり、吐く息が肌に触れるのを感じ、もう少しで二人の唇が重なりそうになりました。


 「・・・」


 人質のこともあって瓜は身動きが出来ません。そのためか、頭の中で現状を無理矢理納得させようと自問自答をしていました。


 『そもそも、私があの時、彼の告白に答えていれば・・・ こんなことにはならなかったはず・・・』


 そこから彼女は一瞬の時間の間に、何度も自分を納得させようと言葉を作りました。


 『私さえ怖がらなければ・・・ 志歌さんも鈴音さんも、皆が無事でいる。


   私さえ、皆から離れれば・・・


    私さえ、ここで我慢すれば・・・


     私さえ・・・


      私さえ・・・








 彼女は何度も何度も震えている自分の体を落ち着かせようと自分に言い聞かせました。しかし彼女の意思に反して、その頭には同時に自分が紡いできた友達との楽しい思い出が通り過ぎていきます。



______________________



 「その子話せないから、こういう形にしたの。以来仲良しです!!」



 「ああ!! いや、女の子が一人でこんな人気(ひとけ)の無い所を歩くなんて、男として心配でさ・・・」



 「ここで住んで良いからアタシの妹になってよ!!」



 「何かあったら気軽に相談してください。『友達』として、助けになります。」



 「そんなことないぞ。友達を作るのって、簡単なようで凄く難しいからな。でも・・・ こんなふうに、いつの間にか出来てることもある! そうして考えるとヘンテコなもんだぞ。」












 「だから、お前の願いを叶えてやるっつてんだ!! コミュ障女にまともな友達、わんさか作ってやる!!!」


 「俺が、おまえの友達になってやる!!」


______________________



 「・・・フィフスさん!!」


 「ッン!!・・・」


 瓜は受け入れたくない一心で目を閉じ、つい自分でも気付かずに最初の友達の名前を叫んでしまいました。そして渋木はその名前を聞いてせっかく近付いていた顔を止めてしまいます。


 「・・・まだ、そんなことを言うか!!」


 ムカついた渋木は、怒りのままに彼女の腕を離し、ベッドに頭を叩きつけました。


 「ウッ!!・・・」


 彼は怯んだ瓜の姿を見下ろしながら続けざまに怒りの声を浴びせ出します。


 「どうしてだ瓜・・・ どうして君はそこまでアイツを・・・ あんな人ですらない化け物を意識する!!?」

 「それは・・・」


 反射で言ってしまった言葉に彼女自身もなんで自分がフィフスの名前をこぼしてしまったのか分かりませんでしたが、その意識は次々と降りかかる暴言に次第に消えていきました。


 「アイツは、血も涙の持ち合わせていない人殺しだ!! そんな奴が君の事を大事にするわけがないだろう!! いい加減真実を見るんだ!!!」


 その外面でしか見えていないことが全てのように語る彼の言動に、瓜は次に怒りで我慢できなくなってしまいました。そして・・・














 バチンッ!!!・・・




 「・・・エッ?」


 瓜は、止まらないフィフスへの悪口をはき続ける渋木の左頬をはたいてしまいました。


 「私の友達を・・・ 馬鹿にしないでください!!!」

 「瓜ぃ!!・・・」


 叩かれて首を横に向けていた渋木は、まるで電池が切れたロボットのように微動だにしませんでした。そして油が切れたようにゆっくりとその首を戻します。


 そこで瓜は彼の目を見て恐怖を感じました。その目は、今まで彼が瓜に見せてきたものとは全く違う、怒りに満ち満ちたものだったのです。


 「!!・・・」

 「何故分かってくれないんだ・・・ ええい!!!」


 次の瞬間、渋木は瓜をはたき返し、続けざまに彼女の首を絞め始める暴挙に出ました。


 「ア!・・・ ガッ!!・・・」

 「どうしてそこまであんな奴を庇う!? そんなことをして君になんの特がある!!?」

 「と、友達は・・・ 守って・・・ 当たり前で・・・」


 瓜が反論をすると、渋木は腕の力を強めて強制的に黙らせました。


 「友達? そこまでして守るのが、本当に友達なのか!? あんな化け物ガァ!!!」


 またもそんな言い方をされたことに、瓜の方もカッとなって口が滑ってしまいました。


 「化け物は・・・ 貴方です!!」

 「クゥッ!!・・・」


 渋木は瓜に言われた一言に血管が浮き出るほど眉間にしわを寄せていきます。


 「アッ!!・・・」

 「フゥ・・・ 瓜、君は危険な状態だ・・・ あの男に心酔するほど惑わされているとは・・・」

 「し、心酔?」

 「そうだ!! 君はあの化け物に好意を持ちかけている。そうだろ!!」


 瓜はそれを言われて胸をナイフで刺されたような感覚を覚えました。


 「そんな!・・・ 私と彼は・・・ そんな・・・」


 言葉に詰まっている瓜に、渋木は更に力を強め、とうとう彼女を気絶させてしまいました。


 「ウゥ・・・」


 彼は気を失った瓜をベッドに叩きつけ、息を落ち着かせてから彼女に聞こえない言葉をかけました。


 「呪いは解けたんだ・・・ 二度と俺に逆らえないように・・・ してやる!!」


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