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第211話 敵か 味方か

 渋木が話したことで、フィフスは色々な負の感情が一気に入り乱れました。主だっては今まで瓜に隠していた事をいとも簡単に晒された事への怒りでしたが、その中に、彼女に対する後ろめたさが少しありました。


 そのため、彼は受け続けたダメージも相まって下唇を血が出るほど噛んでいました。そこから渋木に何かを言おうとしますが、相手の方はそれを受けることもなくまたスイッチを押し出し、彼を苦しめました。


 「ガッ!!・・・ アアアアァ!!!」


 叫び声を出し続けるフィフスの苦しそうな姿に、瓜はもう我慢が出来なくなって動き出し、渋木の右腕を掴みました。


 「もう止めてください!!」

 「アツゥッ!!!・・・」


 すると、フィフスが彼女にかけた魔術が発動し、渋木が火傷を負い、その痛みでうっかりスイッチを離してしまい、フィフスも痛みから解放されました。


 『これは!?・・・ いや、そんなことより今はあれを!!』

 「エエイ!・・・」


 瓜もそのタイミングを見逃さず、落としたスイッチが床について音が響いた瞬間にそれを拾い上げ、すぐに彼から離れました。


 「ハァ・・・ ハァ・・・ ハァ・・・」


 フィフスは息切れをしながら立ち上がろうとし、渋木は火傷の痛みとスイッチを取られたことに混乱しています。


 『サンキュー、瓜・・・』


 フィフスは天邪鬼の時と同じように全身から炎をあふれ出させ、無理矢理力を振り絞り、渋木に向かって攻撃を仕掛けました。


 『偶然ながらアイツが作ってくれたチャンスだ! 無駄には・・・』


 通常より素速い動きで渋木に近付き、とうとう間合いにまで到着しました。対して彼は目をキョロキョロと動かして火傷した手をポケットに押し込んでいます。


 そのままフィフスが渋木の顔面に一発叩き込もうとして、炎が乗った拳が相手の肌にまであと少しで届こうとしたそのときでした。





 スッ・・・




 突然起こったことにフィフスはその動きを止めてしまいました。自身と渋木との間に、突然瓜が手を開いて割り込んできたのです。


 「瓜? お前・・・」

 「止めてください・・・ あなたも・・・」

 「ハアァ!?」


 フィフスが彼女の行動の意図が読めずに対処に悩んでいると、後ろにいた渋木が呼びのスイッチを押しました。フィフスもそれに痛みを感じて膝を崩し、再び距離を離されてしまいます。


 「ハァ・・・ ハァ・・・ お前・・・ 何がしたいんだよ・・・」


 瓜は両手を下げ、後ろを振り返って渋木と話し出します。


 「瓜・・・ 攻撃を止めてくれたのは助かったけど、それならなんでスイッチを取ったんだい?」

 「・・・ 私がいれば・・・ 十分です・・・」


 彼女が顔を下に下げて静かにそう言っていると、渋木はため息をつきました。


 「ハァ・・・ 興が冷めたな・・・」


 と冷めた声を出してると、彼の手の方にレーザーが飛び、それを受けてスイッチを弾いてしまいました。


 『今のは!?・・・ 今の赤鬼にはこうも正確な射撃が出来るとは思えない・・・ なら!!』


 そして攻撃の飛んできた方向からは、彼のその確率の低かった予想が的中しました。


 「油断禁物だよ。」

 「ドクター!?」

 「ドラゴン仮面だ!!」

 『面倒くさ!!・・・』


 やって来たのは、化ケガニに始末を頼んでおいたはずの信でした。


 「馬鹿な!! 蟹男を振り切ったのか!!?」

 「別に、すぐここに戻りたかったからただ逃げてきただけだよ。どうやら向こうさんは僕よりかなり足が遅かったらしいね。」


 彼の言っていることには、渋木はもちろんのこと、フィフスも驚いていました。


 『冗談きついぜドクター・・・ アンタがどんだけ鍛えてんのかは知らねえが、魔術も使えるはずのアイツからこうも簡単に逃げおおせれるのか? 一体どんなカラクリで・・・』


 信は一通り説明し終えると、再び銃を渋木の頭に向けて標準を会わせました。


 「僕はそこのねぼすけ君と違ってナノマシンは飲んでいない。君が止めることは出来ないよ!!」


 しかし信がその銃を撃とうとしたとき、さっきのフィフスの時と同じように瓜が前に出てそれを阻止しました。


 「・・・」

 「瓜君? そこを退いてくれないか?」


 信の質問に瓜は黙ったままです。そこで後ろの渋木が一言呟きました。


 「まあいいか。予想は付いたしな・・・」


 そして渋木は腕輪のスイッチを押して瞬時にスーツを着込み、彼女の隣に立ちました。


 「君の勇気に免じてこの場は下がってあげるとするか。」


 渋木は両腕に付いた銃口を前に出します。するとそこから今回は縦断ではなく黒い煙が飛び出し、フィフスと信を含めた辺り一帯を包み込みました。


 「煙!?」

 「待てっ!!・・・」

 「別れの挨拶が出来てよかったね。 () 友達君。」


 最後に渋木の嫌みの声が聞こえ、煙と共に渋木と瓜の姿も跡形もなく消えました。


 「逃げた・・・ いや、勝ち誇って去ってったのか。」

 「ウッ・・・ グゥ・・・」


 信は再び目のフィフスが心配になり、スマートフォンをしまって走りました。


 「立てるかい?」

 「・・・肩、貸してくれ。」


 フィフスは信の肩を借りて立ち上がりますが、その顔はとても青ざめており、戦える余力は既になさそうでした。


 『余程応えたのか? 二度も同じ相手に軽く捻られれば挙げ句、瓜君のしたいこともより分からなくなってしまったしな・・・』


 しかし信がよく見てみると、フィフスの目は死にきってはいないようでした。


 「ドクター・・・ ちょっと前進んでくれ・・・」


 信は彼が言っていることに何故かと思います。結局剣もその場には無く、彼の求める物はここにはもう何もなさそうだったのです。前を見てみると、瓜がいた位置の下に彼女が置いたらしき紙切れのようなものが見えました。


 「これは・・・」

 「・・・」


 フィフスはゆっくりかがんでそれをを掴み、持ち上げました。よく見るとそれは、折りたたまれた手紙でした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・信は幼少期から何通りもの戦闘訓練を受けており、その中でも特に銃の早撃ちを得意としています。普段はケラケラとしていますが、彼にも壮絶な過去があるようです。



信「今が幸せなら、全てOKだよ。」



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