第210話 フィフスの隠し事
時は少し遡り、部屋から出てすぐの瓜。フィフスを助けようとその場所から出たのはいいものの、そこからどこへ行けばいいのか分からずに立ち往生をしていました。
『勢いで出てしまったけど、彼は一体どこに・・・ 何か道しるべでもあれば・・・』
と思いつつもそんな都合の良いことがあるわけがないと諦めていた彼女。しかしあの男は、その事も全て察して手を回していました。
瓜がどうしようもなくまた手に持っていた紙を見ると、書かれていた文字がにじんでいき、今度は一方向を示した矢印の形に変わりました。
「これ・・・ もしかして・・・」
瓜は早く渋木を止めるためにそれに乗せられるままにその矢印に従いながら走り続けてここまでたどり着いたのです。
その様子を影からカオスが楽しそうに見ていることも知るわけもなくでしたが・・・
「ああいう子はホントにいいね~・・・ 明らかに怪しいと心では分かっていても、勝手に体が動いちゃうんだから・・・」
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そうして息切れしながら声を上げ、渋木は驚きに手を緩めてしまい、フィフスは咳き込みながら解放されました。
「う・・・ 瓜!?・・・」
「どうしてここに!? どうやって部屋を出た!?」
質問をする渋木ですが、瓜はそれに答えるよりも先にさっき言ったことを繰り返します。
「止めてください・・・ 渋木君・・・」
フィフスはこの一瞬の間に彼女が何故ここにいるかとか、なんで自分の武器を持っているのかなど、色々聞きたいことがありましたが、痛みに潰されて声が詰まりました。
彼女は渋木の元に駆け寄り、それによってフィフスは、自分では我慢しているつもりでも我慢しながらもその腕の震えているのがよく見えました。
『アイツ・・・ ビビっててるのにまた後先考えずに突っ込んだな。ビビっているのはアイツにか? それとも・・・ 俺にか?』
フィフスがそう内心で悟る中、瓜は再び渋木に話しかけました。
「彼には・・・ 危害を加えない約束です・・・」
『何!?・・・』
「瓜・・・ 気持ちは分かるが、これは君のためにやっているんだよ。」
二人の会話を聞いて、フィフスはまさかと思いました。
「私のため!? なら、それこそやめてください!!」
瓜はいつになく必死に説得しているようでした。しかし渋木の耳には全く届いていないようで、彼は胸を抱えて倒れるフィフスに更に蹴りを入れました。
「ガアァ!!!・・・」
「フィフスさん!!」
「あと何発やれば吐いてくれるかなぁ!!」
尚もフィフスの腹に蹴りを入れようとする渋木に、とうとう瓜が触れにかかりました。それに気付いた渋木はまたあの呪いが発動するのを恐れて離れます。
「止めて!!」
「何故だ? これは君を守る行為だと言っているだろう。」
「何を言っているんですか!!?」
「なんで! このまま契約が完了することが怖くないのか!!?」
「え?」
瓜は渋木が言っていることの意味が分からなくなり、戸惑った顔になりました。
「どうして、契約に・・・ 怖がるんですか?」
渋木はそれに疑問を抱く顔をする。そして彼は再度フィフスの顔を見ると、その少し引きつった表情からもしかしてと思い当たることが出来ました。
「そうか・・・ 化け物、お前瓜にあのことについて言ってないんだな?」
「!!」
「あのこと?」
「てっきりエデンに報告したときに一緒に伝えていたものと思っていたが、その事すら隠していたとはな・・・」
渋木はそれが分かった途端に思いがあふれてつい笑ってしまいました。対して瓜は二人が何の話をしているのかわからないでいます。そこに彼が答えを話してきます。
「瓜。コイツはね、君に恐ろしい隠し事をしているんだよ。」
「隠し事?」
「そう、魔人との契約の副作用についてだ。」
フィフスは目を血走らせながら開き、渋木がしゃべり出そうとしている事をどうにか止めようとしました。しかし何度も心臓に受けた攻撃はかなりのダメージを残し、もう言葉も片言になっていました。
「止めろ!!・・・ 言うな!!!・・・」
しかし彼は自分なりの精一杯の訴えを渋木に飛ばし続けますが、渋木は鼻で笑いながらこう返してきます。
「そうはいかないだろ。お前と契約をしている以上、彼女も一連の関係者だ。それとも何か? このまま契約を完了させるのが目的だったのか?」
「・・・違う!!」
「どういうことです?」
「聞くな瓜! 今はこの場から離れ・・・」
ドクンッ!!・・・
「グガァ!!・・・」
叫んで逃がそうとするフィフスがまた痛みに襲われ、言葉が切れてしまいました。
「フィフスさん!!」
「瓜、コイツの代わりに俺が教えてあげるよ。契約者は・・・」
『止めろって言ってんだろ!!』
フィフスはそう言葉を叫ぶように放射炎を渋木に向けて吐き出しました。ですがそれも相手に届く前に痛みに消えてしまいます。そして勝利を確認したのか、渋木は楽しそうに瓜に語りました。
「魔人の契約者は、願いが叶うとその途端に醜い魔人と変わり果てるんだよ。」
「!!!・・・」
瓜は渋木が今言ったことを頭で理解するのに少し時間を要しました。そのため、またしても固まってしまった彼女に渋木は説きます。
「これで分かっただろ? 俺が君にやっていることは、全て君のためにやっていることなんだ。ここまでも、これからもね。」
瓜はその頭の中が、さっきの渋木の言葉によって固められていました。
どこかショックとは違う感情で・・・
『私が・・・ 魔人に・・・』
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