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第209話 お前は俺には勝てない


 「グウゥゥゥゥゥ!! ガアァァァァァァ!!!!」


 フィフスは突然自身を襲ってきた強烈な痛みにもだえ苦しみだし、渋木はそれを見ながら乾いた声で脅しをかけました。


 「もう御託はいい・・・ 瓜にかけた呪いを解け。」

 「グガァ!!・・・」

 「五郎君!!」


 信が彼に起こった異常に駆け寄ろうとすると、死角からそれを阻止するために化ケガニが現れ、彼に腕のはさみを振り下ろしました。


 「ウワッ!!・・・」


 信はギリギリの所でバックステップをして回避しますが、下手にフィフスに近付けなくなってしまいました。


 「おい、コイツは殺していいのか?」

 「構わん。死んでもこっちでもみ消せる。」

 「なら、遠慮なくいかせて貰おう・・・」


 化ケガニは渋木やカオスに対して溜まっていた鬱憤晴らしといわんばかりに信を攻め始め、それに押されて彼は苦しむフィフスから離されてしまいました。


 「クッ!!・・・」

 『五郎君・・・ すまない!!・・・』


 そして二人きりになると、これをいいことに渋木もフィフスに近寄りつつ、上から見下ろして脅しをかけます。


 「早く言え。出ないとどんどん苦しくなるぞ?」

 「ガッ!!・・・ 何だよ!!・・・ これ!!?・・・」


 苦しみながら聞くフィフスの質問に渋木は軽い笑顔で答えました。


 「ちょっとした混ぜ物さ。お前には事前にそれを飲んで貰った。」

 『倉が時折苦しんでいたのはこれか!!・・・』

 「だが!・・・ そんなもの、飲む間なんて・・・ ッン!!」


 彼は朝食のことを思い出しました。そのときの席やセッティングは、全て渋木の提案に乗ったものでした。


 『あの時に!!・・・』

 「朝食のドリンクに入れておいたナノマシン。このスイッチ一つで作動し、押し加減で簡単に相手の命も奪える優れ物・・・ 工業技術の発達が遅いお前の世界ではなかっただろう?」


 フィフスはこの世界にしかない技術に関しては確かに知識不足です。渋木はここに目を付けたのです。


 「その豆粒機械で俺を殺せるってか? 笑わせるねえ・・・」

 「じゃあ笑いながら死にやがれ!!」


 渋木は声を荒げて更に強くスイッチを押し、フィフスは断末魔を上げながらどんどん体力が奪われていき、とうとう倒れてしまいました。


 「グググ・・・」

 「オッといけない・・・ 強く押しすぎてしまった・・・」


 渋木はスイッチの押し込みを緩めてフィフスに顔を近付けました。


 「これで死んでは呪いが解けなくなるところだったな。すまない・・・」

 「ぜって~・・・ 思ってないだろ・・・」


 息切れしながら話す相手に気をかける訳もなく、殺気のこもった言葉が続きます。


 「この通り始めからいつでもお前を殺すことは出来たんだ。でも瓜の前で、元とはいえ知人を殺すのも可愛そうだからな・・・ だからあの場は見逃してあげたんだよ。でもここなら遠慮はいらない・・・」

 「てめぇ・・・ ホントにいい性格してやがるな・・・ 尊敬するぜ・・・」


 フィフスはそれでも軽口を続けます。ですがやせ我慢をしていることは明白でした。


 「安心しろ。呪いさえ解いてくれたら後は楽にしてやる。さ、言え。」

 「フッ・・・ へヘッ・・・ 知ったこっちゃないね。そんなこと・・・」

 「・・・」


 やせ我慢をして相手を見上げてニッとするフィフスを見て、渋木はフッと笑い、そして・・・





 バシィッ!!!





 渋木は痛みで抵抗の出来ないフィフスの頭に容赦無く蹴りを浴びせました。


 「ガッ!!」


 回避も出来ず直撃するフィフスに渋木は呆れたような声を出しました。


 「全く・・・ こうも簡単なことのはずなのに・・・ 随分と時間がかかるなぁ!!!」


 渋木は今度は彼の右頬をスイッチを持っていない手で殴りました。


 「グッ!!・・・」

 「苦しいか? そうだろう!!」

 「全っ然!!・・・」


 フィフスは汗まみれの顔でも調子良さそうに笑って見せます。それを見て渋木は更に機嫌が悪くなり、スイッチを強く押し込み、それに比例してフィフスの痛みも増して顔が引きつり、頭を下げてしまいます。


 「見栄を張るのも勝手だが、無駄なことだ。お前がごねればごねるほど生き地獄が続くだけなんだよ!! 言え・・・ 早く言え!!!」


 渋木は怒声を浴びせながら身動きの取れないフィフスを殴り続け、彼の体はもうボロボロになっていました。しかし彼自身は自他に対しこう声に出して言い聞かせて誤魔化しました。


 「何が苦しい痛みだ・・・ こんなもの、距離制限の電撃の方が骨に響くってんだよ!!」


 そして彼は言葉の勢いに任せて無理矢理立ち上がり、渋木に向かって反撃にかかりました。



 「ウオォォォォォラアァァァァァァ!!!!!」




 「ナッ!!?・・・ そんなもの!!!」



 渋木は驚いてスイッチを一瞬手を離しかけましたが、すんででそれに気付いて強く押し込み、フィフスはその痛みに耐えられずに再び崩れ落ちてしまいます。


 「ウグゥ!!!・・・」

 「これでいい加減分かっただろ。抵抗しても無駄。お前は戦わずとも、俺には勝てないんだよ!!」


 彼はその言葉の念押しにまたフィフスを殴り飛ばし、そして目元が影になる体勢で最後の忠告をします。


 「最後だ。瓜にかけた呪いを解け。もう次はないぞ。」

 「おいおい・・・ もうラストかよ・・・ グガァァァァァァ!!!!!」


 今だ根気で続けるフィフスの軽口を胸の痛みが強制的に止めてきます。これを見てそろそろ潮時かと感じた渋木は、改めてスイッチをフィフスに向けました。


 「ハァ・・・ もういい。そこまでするなら、まずお前が死んだらどうなるのか確かめるとするか。」


 その言葉には重みがあり、彼が本気でそうする気なのが伝わってきます。


 「さらばだ化け物。次生まれ変わるのなら人間になれるよう祈るんだな。」


 フィフスの腹を決めて目を閉じ、渋木がスイッチを最後まで押そうとした次の瞬間・・・



















 「止めて!!・・・」









 「「!!?」」




 女の声が底に響き、渋木は指の力を緩めてしまいました。そして二人は聞き慣れた声の叫びを聞いて、同時に首をその方向に向けます。そこには・・・









 「やめてください!!・・・ 渋木君・・・」



 剣を持って息切れしている瓜がこちらを見ていました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・渋木のナノマシン


 渋木がフィフスの朝食時のドリンクに仕込んでおいた罠。コントロールスイッチ一つの操作で相手に心臓を握り潰すような強烈な痛みを与えることが出来る。



フィフス「どっかの有名作品の呪いじゃねえんだぞ・・・」


瓜「それは言わない方がいいと思います・・・」





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