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第206話 悪役会議

 化ケガニによって腕に特殊な手錠を付けられ、倉はそれをどうにか外そうと動いていました。そんな中、目の前にいる渋木が彼女を人ではなく、物を見る目で見てきました。それに対して倉は殺意を込めて睨みます。


 「なんだその目は? お前が人身売買で富豪の親父共の奴隷になりかけていたところを救ってやったのに、そのときの恩を仇で返すのか?」

 「ハッ! アンタに恩なんて、少しもないわよ!!」


 声をかけても態度を変えようとしない倉を見て、渋木は表情を変えないままズボンの右ポケットに手を入れてそこから小さなスイッチを取り出しました。そしてそれを彼が軽く押した次の瞬間・・・






 「ウッ!!・・・ グゥ・・・ ガァァ!!!」






 突然、さっきまで威勢のあった倉が苦しそうにもがきだし、その場に足のばたつきや過呼吸による音が渋木は彼女が悶絶しかけるのを見計らい、スイッチを押している指を退かせました。倉は開放された途端に荒い息をします。


 「ガァ・・・ ハァ・・・」

 「ずいぶんな態度だな。だがまあいい。これで奴に協力していたスパイは捕まえた。時期に蜂の奴が赤鬼を連れてここに戻ってくる。そうすれば瓜にかかった呪いも、すぐに解けるはずだ。」


 渋木がスイッチをしまいながら企みが上手くいっていると自分に言い聞かせて怒りを落ち着かせていると、そんな彼に容赦のない言葉が横槍を入れました。


 「それがそう簡単にはいかないみたいですよ~・・・」


 遅れてその場に現われたカオスがそう言います。彼の手には、今まさしく灰になって消滅していく蜂王の契約の魔道書がありました。その事態が、彼が失態を犯したことを何より証拠付けています。


 「どうやら蜂王の方はやられちゃったみたいです。」


 上辺だけの敬語で話してくるカオスの話に化ケガニは驚き、渋木は無表情から抑えられなくなったのか、機嫌の悪い顔に変わりました。


 「とすると赤鬼は捕らえ損なったのか。チッ・・・ 役に立たない奴だ。」


 冷たく言い放つ渋木にカオスは不用意に近付いてゴマを擦り出します。その様子を見て化ケガニは若干白目を向けていました。


 「ま~た酷いことをおっしゃる・・・ 僕達はあなたのために必死に働いているんですよ~ もう少し優しく接してくれても・・・」

 「勘違いをするな。お前達は俺の捨て駒。あくまで俺の気まぐれで生かされていることを忘れるな・・・」


 カオスは渋木からの一方的な話に、だったらと一つ提案をします。


 「そんなに僕らが信用ならないなら、いっそ部屋の向こうにいる彼女を使えばいいんじゃ・・・」


 しかしカオスがその提案をしている最中、渋木は突然彼の後頭部に銃口をピッタリ付けました。本気の殺意を感じたカオスは黙り込み、蜂王の魔道書が完全に消え去ってすぐに両手を軽く挙げ、降参の意思を示しました。


 「じょ、冗談ですよ~・・・ アハハハ・・・ 何もそんな神経質に受け取らないでくださいよ~・・・」

 「俺の前で軽はずみな発言は慎め。次に同じ事を言ったら撃つ。」

 「は~い・・・」

 「いいな!! 瓜は使わない・・・」

 「ムゥ~・・・」


 渋木は銃を下げ、そこから何も言わずにカオスがさっきやって来た方向にへと歩いて行きます。


 「どちらへ?」

 「アホ共では手に余るようだからな。もう一度俺が直接叩いてやる。まだ蜂が見つけた位置からそう離れていなはずだしな・・・」

 「それはどうも~・・・ じゃ、行ってらっしゃいませ~・・・」

 「・・・」


 カオスは右手を振り、渋木はそれすら全く気にせずにそこから靴の音を響かせて部屋から出て行きました。すると次の瞬間には早速化ケガニが我慢していた言葉を言い出しました。


 「ケッ・・・ 腹の虫に触る奴だ。」

 「そう言うなよ、せっかくの大役なんだから。」

 「お前の首がかかっているだけだろ。」

 「ウグッ・・・」


 化ケガニが言った事にカオスは少し調子を乱されました。


 「バレてたか・・・」


 そう、実は今回の件、失敗すればカオスに次はないラストチャンスだったのです。故にセレンの監視もなく、久しぶりに自由に動けていたのでした。


 「カオス、俺達はいつまであの小僧にへコへコしないといけないんだ?」

 「もう少し我慢してくれ。僕らにはこうも事を大きく出来るパイプも金もないだろう。」


 それを言われてしまい、化ケガニ釘を刺されたように言葉を抑えました。そんな彼にカオスはさっきの会話に一言付け加えます。


 「それに・・・ 彼はとてもいい()()()になってくれる・・・」

 「・・・」


 突然の攻撃を受けたくない本能が働いたのか目を閉じて黙ってしまう倉。彼女が足を動かしたとき、カオスはそのとき、彼女から一瞬光が反射したように見えました。


 「あらら、そういうことかぁ~・・・」


 するとカオスは突然倉に手を伸ばし、彼女の服に取り付いていたあるものを取り出しました。それは中心部に赤いライトが装飾されている小さな機械でした。今もそのライトが小刻みに点滅しています。


 「!!」


 驚いて固まる倉にカオスは目もくれずに化ケガニにそれを渡しました。


 「何だこれは?」

 「あの男に渡しに行ってくんない。そすれば分かるから。」

 「お前が行けばいいだろう。」

 「僕は事の仕上げがあるので、失礼。」


 あからさまに不機嫌になる化ケガニを無視してカオスは入ってきたのと同じ出入り口から部屋を出て行きました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・カオスのごますり


 カオスは基本自分のことをへりくだりながら相手を怒らせないように接しているつもりらしい。


 が、その態度自体が腹が立つのでほぼ意味はない。



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