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第203話 四人の魔人の契約者

 フィフスは信に彼女のことを話しました。


 「知り合いなのかい?」

 「ああ、一度助けられた仲でな。」

 「そう・・・」


 信は警戒を張りながら彼女を離しました。解放された倉にフィフスは話しかけます。


 「それで、また何をしにここに?」


 倉は立ち上がりながらも申し訳なさそうに目線を下げながら話し出します。


 「あなたを助けに来た。売られたって知って・・・」

 「あ~、その件は大丈夫だ。この人、変人ではあるが悪い奴では無い。一応味方なんでな。」

 「自然な流れで罵倒するの止めてくれない。」


 信が少しショックを受けていると、倉はまだ頭を下げたまま話します。


 「ごめんなさい・・・ 私が忠告したせいで、あなたが酷い目に・・・」

 「そのことか・・・」

 「まさか・・・ 彼女まで向こうについていたなんて・・・」


 フィフスは前の戦闘のことで、彼女が言っていたことを思い出します。



______________________



 「これは罠なの!! アイツが・・・ 」



______________________



 「()()()って、渋木のことだったのか・・・」


 倉は無言で首を縦に振って返事しました。


 「思い出した。お前、土産物屋買ってるときに渋木が見つけてた連れだろ。だが、それならそうと言えばよかっただろう。」

 「それは・・・」


 倉は目をそらし、胸の辺りを右手で押さえて何か思うようにしていました。


 「まあ、アイツのことを知っているなら話は早い。それで、奴と瓜はどこに行った?」


 しかし、その質問を受けての倉の返事はまたハッキリとしないものでした。


 「それは・・・ 言えない・・・」

 「は?」

 「言えないの!」

 「なんで!!?」


 その様子にフィフスでは無く、第三者目線で見ていた信がもしかしてと勘付きます。


 「倉君だっけ? 君、もしかして・・・ ッン!!」

 「ッン!!」


 信が思った事を言い出そうとすると、その直前にフィフスと二人で何かに気付き、フィフスの方は咄嗟に倉を抱えて同時にその場から離れました。するとそこに見覚えのある毒液がかかり、床を軽く溶かしました。


 「今のは・・・」


 毒液の飛んできた方向から知った声が聞こえてきます。


 「やれやれ・・・ 一度売り飛ばしたものをわざわざ回収する羽目になるとはな・・・」


 フィフスが声の主の姿を見ると、彼を苦戦させた蜂王の姿がありました。


 「面倒なことをしてくれたなぁ。おかげであの男が苛立っている。」

 「その感じだと仕掛けておいた術は効果があったようだな。だったらお前が来たのは悪い判断だったんじゃ無いのか? あれは俺自身が解かないとずっと続くぞ。」


 フィフスはハッタリを言って蜂王の動きを鈍らせます。しかしそれによって逸れた視線が、倉の顔と合いました。


 「お前は・・・」

 「ア!!・・・ アァ・・・」


 途端に倉は恐怖に顔を歪ませ、体を震えさせます。隣のフィフスがそれを確認すると、蜂王の方から口を開きました。


 「そうか・・・ あのとき獄炎鬼が毒分身をどう回避したのか気になっていたが、お前が手引きしていたのか。」


 倉は震えたまま何も言いません。


 「お前ら、知り合いなのか?」


 そこで蜂王が言った事に、フィフスと信は驚きました。




 「契約者だ。」


 「「!!?」」


 「そいつは俺、いや、我ら四人の契約主人。いわば、俺達がこの世界へ来るための生け贄として用意したものだ。」

 「用意って・・・ ッン!! まさか・・・」


 蜂王はそのときフィフスと信が思い立ったことをそのまま代弁しました。


 「ああ・・・ 獄炎鬼、お前もさっき経験したあれ、人身売買だ。安値で手に入れたみたいだがな。」


 そのとき、倉の表情がさっきよりもっと歪んでいました。その言葉に思い出したくない過去を頭によぎらされたからです。


 『あの時言っていたのは、こう言うことか。』


 フィフスは再び彼女に始めて会ったときに言われた台詞を思い返しました。



______________________



 「もう、見ていられなくなったから・・・ あなたが怪物に襲われるのが・・・」



______________________



 「だが契約した後に、ふとした隙に逃げ出してな・・・ まさか、ここでお前に協力しているとは思わなかったが!!」


 蜂王は言い終わりと共に刺突酸弾を放ち、また彼らはそれを回避しようとしました。しかし蜂王とて二度も同じ手は食わないようです。




 ガシッ!!


 「!!?」


 怯えていた倉は、フィフスが抱えるよりも先に別の誰かに捕まったのです。彼がその相手をよく見ると、その相手のもう一つの腕で弾かれてしまいました。


 「クゥ!!・・・」


 その最中、フィフスはその腕に見覚えを感じました。


 『あの腕・・・ いや、はさみ・・・ 分かりやすい奴が来たか・・・』


 フィフスは無事に着地しましたが、倉の身柄は相手に捕まっていました。その相手は彼の予想通り、先程の戦いで仕留め損なったもう一人の魔人、『化ケガニ』でした。


 化ケガニはすぐに蜂王の近くまで移動します。


 「ご苦労。ま、どちらにせよコイツの命は俺が握っているが・・・」

 「どういうことだ!?」

 「コイツには事前に俺の術をかけてある。失言を言えば胸が締め付けられる痛みを発するようにした。下手をすれば死ぬ。」


 信はやはりかと納得した顔になりました。所々で彼女が苦しんでいる様子を見て違和感を感じていたようです。


 「女は回収した。獄炎鬼は頼んだぞ。」

 「分かっている。任せろ。」

 「イ、イヤ・・・」


 反抗する倉を抑えながら化ケガニは身を翻してその場から走り去っていきました。


 「待て!!」


 フィフスはすぐに化ケガニを追おうとしますが、蜂王が立ち塞がります。


 「逃がすわけが無い。お前にもあの女と同じ目になって貰う。」

 「そうすりゃあ命惜しさに術を解くってか?」

 「お前を裏切ったアイツと同じようにな。」


 フィフスはピクッと体を震わせて動揺し、信もそれに気付きます。二人は子の悪い状況からどう脱却するかを考えながら警戒をしていました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


<蠱毒術 毒寄生>


 蜂王が使用。相手の体内に特殊な毒を侵入させ、術者の好きなタイミングで起動させることが出来る。基本的に交渉への脅しで使われる。



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