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第202話 赤鬼が掛けた呪い



 「ッ・・・ ウゥ・・・」



 お茶に入れられた薬を飲んでしまい、眠らされていた瓜が目を覚ましました。その目を開けた先には、自分が連れて来られた部屋の壁が映っており、これが現実であることを改めて自覚させられました。


 「・・・」


 少しずつ意識が戻ってくると、彼女はゆっくりと上半身をベッドから起こしました。おぼろげにしながら自身の体を見ると、特に異常は見当たりません。それどころか、一切触られてすらいないようでした。


 「・・・」


 ぼやけた視線がハッキリとしていき、目の前を見てみると、そこにぼんやりとした人影がハッキリしていきました。そこには、どこか少し苦しそうにしている渋木がいました。


 彼はそこで瓜に見られていることに気付くと、こちらに頭を向けて涼しい顔になりました。


 「クッ!!・・・」


 瓜は彼に何があったのかと気になっていると、急に頭が痛くなり、そこを左手で抑えました。すると渋木は彼女を心配する声を掛けてくれます。


 「ウッ!!・・・」

 「どうした? 痛いのか?」

 「・・・ いえ・・・」


 ボソッと瓜が言った言葉を聞いて少し安心したのか、渋木は彼女に背を向けて歩き、部屋を出て行きました。しかしその右手は彼女には見えないようにしていました。


 しばらくすると頭の痛みが治まり、瓜はゆっくりと手を頭から離しました。しかし彼女には、どうにも頭の中にもやでもかかったような違和感を感じました。


 『なんだろう・・・ 頭の中が・・・ ぐちゃぐちゃするような・・・』


 そこで彼女はふと自分の左腕に巻かれているブレスレットに目が行きました。


 「これって・・・」


 瓜は首を傾げながらそれを見ていました。



______________________



 一方、瓜を監禁している部屋を出た後の渋木。彼女を前にしたときとは態度が打って変わり、彼女に隠していた右手の平を見ながらさっきに満ち満ちた怒りの形相で床を踏み潰すように「ドシッ!!ドシッ!!」と歩いていました。


 「エエイ!! あの化け物め・・・ いなくなってまで邪魔を・・・」


 すると彼がそのまま通り過ぎた廊下からいきなり声が聞こえてきました。


 「随分いきり立ってますね~・・・」


 渋木が食ってかかる勢いで振り返ると。廊下の影になっていたところからカオスが現れました。渋木はこれを見た途端に彼に近付き、突然彼の服の袖を引っ張って顔を近付けました。


 「貴様・・・ あの赤鬼をどこへやった!!?」

 「へ!? あなたの指示で売り飛ばしたんでしょ?」

 「今すぐ連れ戻せ!!」


 カオスはまあまあと渋木の怒りを抑えながら袖から手を退かせ、聞きました。


 「一体どうしたってんです? そんなに慌てて・・・」


 そこで渋木はこうハッキリ言いました。





 「あの赤鬼の奴・・・ 瓜に呪いを掛けやがった・・・」



 そのときの渋木の右手の平は火にでも触れたように痛めていました。



______________________



 「向こうからやって来る?」


 信は正気に戻ったフィフスからそう聞きました。


 「ああ。なぜか捕まっている間忘れていたが、さっき思い出した。瓜に付けた保険のこと・・・」


 フィフスはそこから敢えて廊下を堂々と歩きながら話し出し、信はそれに詳しい説明を求めます。それを受けてフィフスは左腕に付けていたブレスレットを見せました。


 「あ! 露店で売ってた縁結びの・・・」

 「そ、縁結び・・・ 縁結び!? 厄除けじゃねえのか!!?」


 フィフスは今ここでようやく自分が付けているアクセサリーが厄除けでは無く、縁結びであることに気が付きました。しかし話し始めたもの照れ隠しもあってかそれを続けました。


 「ま、まぁ・・・ このブレスレットは同じものを瓜に付けさせてある。んで、アイツの分には事前に術装を掛けておいた。」

 「ほお、念を効かせたのか・・・」

 「このところアイツの運の悪さは半端なかったからな・・・ アイツがピンチになったとき勝手に発動する。そうなると触れる手前で火傷しちまうようになるって仕組みだ。」


 フィフスの念入りさに信は感心します。


 「ハァ~、君もマメだねぇ・・・」

 「だが余裕って訳でもない。ブレスレットに含ませた魔力が切れると効果はすぐ消える。本当ならそれが発生したときに出る魔力を探知して探すつもりだったんだが、それもその幕のせいで防がれている。」

 「つまり、あまり時間は無いってことか・・・」


 二人は現状を確認し、これからどうするかの話し合いをしていました。


 二人が会話に熱中していると、信の後ろに足音を隠して忍び寄る人影がいました。二人はそれに気付かずにいると、その人は瓜がフィフスに使ったのと同じ麻酔銃を手に持ち、後ろから信に向かって気絶させにかかりました。


 「ッン!!?」


 フィフスが相手に気付いて目を開いたとき、もう麻酔銃が届きそうになっていました。しかし・・・






 ガシッ!!・・・



 次の瞬間、死角からきた攻撃を既に分かっていたように相手の腕を掴み、そこから流れるように動いてその相手に関節技を決めました。


 「アガァ!!!・・・」

 「早速いっちょ上がり。」


 フィフスは信の動きの速さに驚きました。


 「やるな、ドクター・・・」

 「フフン! 普段のからてっきりデスクワーク派とでも思っていたのかな? 残念!! 実はけっこう戦えるんだよね~・・・」


 フィフスは信の自慢げな話を聞き流し、彼に取り押さえられた相手の顔を見ます。そこにいた相手に、彼は驚きました。


 「お前は!!・・・」


 取り押さえられたのは、フィフスを蜂王から一度助けてくれた高足(たかあし) (くら)でした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・術装はものに魔力を込めれば使用できるので、今回のように間接的な付与も可能です。


 しかし欠点としてそのものにこもった分の魔力がつきると効果が無くなってしまいます。




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