第201話 俺から信じる!!
そこからどこか暗いフィフスがフィフスが言ったのは、彼なりの裏切られる理由でした。
「知っての通り俺は人間じゃない。その上、この旅行中にいざこざが出来ちまってな。」
「・・・」
信は彼の話を黙って聞いてくれています。
「俺は・・・ 瓜に隠し事がある。アイツは今回それを必死で聞いて来てな。俺はそれをテコでも言わなかった・・・ その上、変な意地を張って渋木に会うように催促しちまった。アイツは泣いてたってのに・・・ ま、アイツが泣くのはいつものことなんだが、それでもな・・・」
信は一通り話を聞くと、それまで真面目の仮面を被っていたのを外して表情を崩しました。そしてその次に取った行動は・・・
「プゥーーーーーーーーー!!! ククククク!!!・・・」
我慢の限界からの大爆笑でした。当然これにフィフスは気を悪くします。
「何笑ってんだ・・・ こっちに取っちゃけっこう悩んでんだぞ・・・」
「イヤァ~・・・ いろいろ御託並べてるけど、ようは喧嘩中って事だよね。君達二人。」
フィフスは緊張感をへし折られたような思いになり、なんとも言えないような中途半端な表情になりました。
「直球にそう言われると、なんか気持ち悪いな。」
「でも事実そうでしょ? それが予想外の連続で収拾着かなくなって現状ってとこか・・・」
「グッ・・・」
信は自分の中で勝手に納得したようで、頷きながらフィフスに語りかけてきます。
「いやぁ~・・・ なんだかんだで君達、けっこう青春しているねえ・・・」
「この状況で何言ってんだ・・・」
「何も恥ずかしがる事なんてないじゃないか。若人の友情にもめ事なんてつきものだろう。人には隠し事のいくつかなんてあるもんだしね。ウンウン・・・」
フィフスはそれを聞いても後ろめたさが残っていたようでした。
「裏切られて、殺されかけた。確かに普通なら、信用なんて無くなるだろうね。でも君は、瓜君のことを恨んでいるって訳じゃなさそうなんだけど?」
信のケロッとした軽口で自分の心を見透かされていることにフィフスは少しうっとうしさを感じます。彼の言うとおり、フィフスは瓜のことを嫌いになってなんていません。ですが、自分の受けた事実に大きくショックを受けていたのです。
「ドクター・・・」
「何だい?」
フィフスはこのまま全て言われるくらいならと自分から白状しました。
「アンタ、信頼していた奴から裏切られたら、どんな気分だ。」
「ま・・・ 理由がどうであれ、ショックは受けるだろうね・・・ 君がそうってことかい?」
「・・・ 瓜が簡単に殺しに手を貸すなんて思っちゃいねえよ。でもよ・・・ 」
フィフスは思い悩んでいる姿から変わりません。すると、見かねた信は・・・
「フンッ!!」
ドガッ!!!
そんな彼を背中から蹴り飛ばしました。蹴り飛ばされた彼は地面に突っ伏し、よろめきながら立ち上がると、頭に怒りマークを浮かばせて怒鳴りました。
「イタァ!!!・・・ 何すんだいきなり!!・・・」
「いや、見てて無性に腹が立ったので・・・」
軽く睨み付けてくるフィフスに信はため息をつきました。
「ハァ・・・ ぐだぐだと御託はもういいよ。しつこい!! 君ってそんな気の抜けたキャラじゃ無いだろ?」
「ナッ!・・・」
混乱しているフィフスに、信はストレートな質問を飛ばしました。
「五郎君、君は彼女を助けたいの? 助けたくないの?」
「そりゃぁ・・・ 俺は・・・」
未だに気の抜けたフィフスの言葉に信は目を細くし、そして渇を入れました。
「どっち!!?」
それに押されてフィフスはハッキリと答える事が出来ませんでした。
「よろしい。ま、君の答えは聞いてなかったけど・・・」
「ダガァ!!!・・・」
フィフスは自分でも恥ずかしい台詞を言ってその扱いを受けたことに新喜劇のようなズッコケをしました。
「どちらにしろ彼女は助ける。でないとこっちもやばいからね・・・」
フィフスは起き上がり、振り回されていることに疲れたような顔になります。
「だったらなんで聞いたんだよ・・・」
「もやついていると動きが鈍くなるからね。こういうのは単純な方がいいんだよ。いざこざとか、喧嘩とは、そんなもの彼女を助ければいくらでも解決が出来るだろ。でも、このままだとそれすら出来ない。違うかい?」
「ッン・・・」
信のごもっともな言葉にフィフスは無意識に意地を張っていたことに気付き、それを馬鹿馬鹿しく思いました。するとどこか彼は肩の力が抜けたような感覚がありました。
「後のことはそれが終わってからだ。それとも、やっぱり自分を裏切った彼女を信じることが出来ないかい?」
フィフスはそこでさっきまでのカオスの言葉が響きます。
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「ハハッ!! やっぱ人間って単純だね。大切な命を奪うって言ったら、散々お世話になった友達も裏切っちゃうんだから。」
「ハハハ!!・・・ 人っていうのは相手を外見で判断するからね。同じ見た目ってだけでも、ちょっと嫌がらせをすれば信用なんてすぐに壊せるんだよ。」
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『アイツは・・・ 瓜は本当にそんな奴なのか?』
揺らいでいるフィフスに、信はこう語りかけます。
「どうであれまずは君が彼女を信じないと。それが友達じゃ無いのかい?」
その言葉にフィフスはハッとなり、曇っていた目が段々と晴れました。これまでの瓜とのやりとりが、カオスからの言葉に上塗りされていったのです。
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「だって・・・ 友達だから。」
「また・・・ 無茶を・・・」
「この程度たいしたことねえよ。」
「でも・・・」
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『なんで悩んでたんだ・・・ 俺は・・・ ホントに馬鹿だ!!』
信はそのときのフィフスを見てオッと反応しました。
『垢抜けた・・・ いや、影が取れていつもの調子に戻ったのか・・・』
そのときのフィフスの目は、グズグズしていた頼りない姿では無く、闘志の戻った熱い目をしていました。
「俺が信じないで・・・ 誰がアイツを信じんだよ!!!」
変化のあったフィフスに、信はもう一度聞きます。
「なんか考え込んだみたいだけど、結局どうするんだい? 彼女は・・・」
するとフィフスは右手を広げて前に出して彼の話を止め、いつもの調子に戻ってニッと笑い、ハッキリ返事をしました。
「と~ぜん! 瓜を助け出す!!」
・今回の台詞のダメな例
フィフス「俺が信じないで・・・ 誰がアイツを信じんだよ!!!」
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