第200話 お味方参上!!
そこからフィフスは別の場所へと引っ張られ、一カ所にだけ不自然に鏡がある部屋につきました。彼は知りませんが、この鏡はマジックミラーになっており、向こうからはこちらが見えるようになっていました。
そちらで彼を買い取った男と船員の一人が話し合っています。
「どうします? タグとかもつけられますけど。」
「いや、いいや。とにかく早くちょうだい。あ、支払いはこれで。」
そしてフィフスは手錠を付けたまま部屋から出され、その男に渡されました。彼が黙ったままいると、男の方から声をかけられ、ついていきます。
しばらく歩いて物陰に付くと、男は足を止め、ポケットの中に手を入れました。そしてそこから取り出したのは、フィフスの手錠の鍵でした。彼はそれを使ってすぐにフィフスの手錠を外しました。
「はい、これでもう自由だよ。」
「どうも・・・」
フィフスは手錠を外した手首の開放感に違和感を感じて触りながら、丁度仮面を外している男と話をします。
「で、なんでここにいんだ? ドクター。」
仮面の男の正体は、普段とは違い正装をした信でした。
「ちょっとしたことで三琴君にいケットの左心を見せて貰ってね。悪い予感がしたから探しに来た。」
「探しにって、途中で乗ってきたのか!?」
「この船のについては多少知っていてね。取引がしやすいように同じトコしか通る道はない。後はその航路をビュンと飛べばすぐに着く。」
「最後の部分雑いな・・・」
信は今度は胸ポケットから一枚のカードを取り出します。そ子には信とは全然違う人の顔写真がありました。
「そこでVIPの一人に成り代わって入ってみたら、君が派手に売られていたもんでね。」
「よく一億なんて大金用意できたな。」
「ないよ。」
「は?」
フィフスは信がケロッとした顔で言った事に口を大きく広げます。
「クレジットにしといたからね。後で本物の会員が払ってくれるでしょ。」
「ケチ臭いやつ・・・」
「助けたんだから文句は無しだよ。」
フィフスは顔を元に戻してため息をつきました。
「どうかしたかい?」
「まさか、この世界でもこんな腐った商売があるとはな・・・」
信はそれを聞いて当然の返しをします。
「君のいた世界でもあったのかい?」
「噂だけだけどな・・・ 引っ捕らえた魔人を、裏社会では高値で売買しているとかな・・・」
「どこの世界も汚い麺は同じか・・・ 気分の悪くなる話だね。」
信は軽く愚痴をこぼしましたが、すぐに話を戻しました。
「君はすぐ見つかったけど、それを見る感じ、相当切羽詰まっているんでしょ?」
「その一員はアンタにあるんだが・・・」
「?」
フィフスは信に事情を話しました。
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「なるほどね。敵さんと組んだUBスーツの男か・・・ でもそんなスーツ、作った憶えが無いけどなぁ。」
「は? あのスーツはアンタの専売特許じゃなかったのか?」
信はむず痒い顔になって正直に言いました。
「いやぁ~・・・ 始めはね。お恥ずかしい話、過去にちょっとトラブルがあって、作り方が漏れ出ちゃったんだ。」
「漏れ出た!? あんなとんでもない物がか!?」
信は涼しい顔に戻して話を続けました。
「おそらく今回のこと、僕にも関係がある。」
フィフスが首を傾げると、信は彼に説明しました。
「実はエデンにも内部派閥が分かれていてね。その中でも僕は・・・ ぶっちゃけ嫌われてるんだ。」
「あ~わかるわ~・・・ 俺もすぐに腹立つもん・・・」
「酷くない?」
信は少しショックを受けた顔をしますが、話を続けました。
「・・・ とにかく今は瓜君だ。居場所に心当たりはあるかい?」
フィフスは信に背を向けて答えました。
「全然。さっき戦った場所もおそらく使い捨てだろうしな・・・ 」
「前にもこういうことはあったんだろ? そのときはどうしたんだい?」
フィフスは信が言っている化けゴウモリの件を挙げている事を理解しましたが、だからこそ嫌な顔になり、頭をかきむしりました。
「あの時は距離制限が逆に働いてな・・・ が、何故か今回はそれがそれが作動しない。ユニーも召喚できなくなっている。」
そのフィフスの疑問に、信は一つ心当たりがありました。
「もしかして・・・ あの変な幕のせいか?」
「変な幕?」
「実はここに来たとき、船一体に紫色の、変な幕のようなものが張られててね・・・」
「どういうことだ? 甲板に出てもそんな物は見当たらなかったぞ。」
「おそらくマジックミラー方式なんだろう。」
フィフスはそれが何か理解していないようだったので、信が説明しました。
「さっき君がいた部屋にもあったよ、一方からは見えず、もう一方からは中が丸見えってね。」
「それであの部屋、妙な位置に鏡があったのか・・・」
信の分かりやすい説明にフィフスは納得がいきました。しかしさっきからどうにも彼に顔を向けてくれません。
「さっきからどうしたんだい? 顔をこっちに向けてくれよ。」
フィフスは素直に振り返りましたが、その顔は、どこか悩みを抱えているようでした。
「随分不機嫌だね。自分が商品にされたのがそんなに悔しかった?」
「そんなんじゃねえよ・・・」
フィフスは乾いた言葉でそう言うと、信は彼の心情を見透かしたように言葉を放って来ました。
「もしかして・・・
・・・瓜君にやられたことにショックを受けているのかい?」
フィフスは一瞬ビクッと体を震わせ、信に聞こえないように息を吐きました。それを見て信はカッカッカと笑い出しました。
「いきなり笑うなよ失礼だな・・・」
「君って意外と凹みやすいよね。」
「うっせ・・・」
フィフスはまた信に背を向けると、ボソッと本音をこぼしました。
「・・・ま、裏切られてもおかしくねえか。」
「ん?」
瓜「第200話でも出番がありませんでした・・・」
フィフス「というか切りのいい数字に重い話しやり過ぎだろ・・・」
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