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第197話 暗闇のフィフス








 「・・・ ハッ!!」







 フィフスが中途半端に気絶から目を覚ますと、さっきまでいた部屋とは別の場所。というより、さっき以上に暗がりでどんなところなのかすら分からない空間にいました。


 「ここは・・・ そうだ! 瓜!!」


 しかし体を動かそうとしたときに彼は変化に気が付きました。前に進もうとしたときに、後ろで何かに引っ張られて動きを止められてしまったのです。


 「何だよ!?・・・ ッン!!?」


 フィフスが違和感の正体を知るために首を後ろに回すと、そこで見えたことへの驚きで彼は意識がハッキリしました。そこには手錠の輪に締められた自身の両腕と、その先の柱に回っている鎖がありました。そして剣が無くなっています。


 「コイツは・・・ ハッ!?」


 我に返ってもう一度前を見ると、自分の目の前に一定間隔で鉄格子が並んでいます。これはどう見ても檻のそれでした。


 「・・・」










 「目が覚めたか。」

 「!?」


 フィフスが襲撃を受けているところに入ってきた声に反応すると、暗闇の中からスーツを脱いだ渋木が現れました。


 「渋木?・・・ ッン!! お前!!」


 フィフスは彼の姿を見た途端に怒りが湧き上がって彼に攻め込みますが、鎖によってそれすらも叶いませんでした。渋木はそれを見て鼻で笑いながら口を開きました。


 「無様な姿だな。」


 フィフスは無理矢理気を落ち着かせてしゃがみ込むと、それでも出てくる怒声で聞きました。


 「手錠(これ)はお前の仕業か!?・・・」

 「話をするのに暴れられたら困るだろう。」

 「話? あれだけ堂々と裏切っておいて何を!!」


 どうにか手錠を外せないか暴れるフィフス。クルーズ旅行中に怒ったことを振り替えると、全部説明が付きました。


 「ハッ!! 今にしてみれば確かに合点がいくな。ここで出て来た魔人達は、お前ってより瓜を狙っていた。その上タイミング良く現れるヒーローに、わざわざ用意された俺の偽物!! 偶然にしちゃできすぎだわな!!!」


 今すぐにでも脱出しようともがいている彼でしたが、次に渋木が一言に動きを止められました。


 「瓜が心配かい?」

 「!!・・・」


 フィフスは大人しくなりながらも殺気立った視線は変わりませんでした。それを見て渋木は改めて笑います。


 「ハハハ!!・・・ 分かりやすいことだ。今さっき裏切られておきながら、まだ彼女を心配するのかい?」


 フィフスはそれを聞いて、自分が助け出そうとした瓜に麻酔銃を撃たれた事を思い出しました。


 「安心しろ。瓜は俺が大事に預かっている。彼女を愛しているのは、本当のことだしね。」

 「安心できる訳ねえだろ! 要するに監禁じゃねえか!! どうせあれだって、脅してやらせたんだろ!!」


 反論するフィフスに、渋木はこう言ってきました。


 「残念だけど、ああしたいって言ったのは彼女自身だ。」

 「は?」


 固まるフィフスに渋木は念を入れて言います。


 「嘘と思うのは勝手だけど、これは事実だ。」

 「!?・・・」


 フィフスは彼の言葉に釘を打たれた感覚になり、最低でも今言ったことに関しては本当なんだと察しました。


 「・・・瓜に会わせろ。」

 「俺がお前の話なんて聞く義理はない。俺はお前に最後の挨拶をしに来たんだよ。」

 「何だと?」


 動揺を見せたフィフスに渋木は言葉で攻め立てます。


 「彼女から伝言を預かっている。俺はそれを伝えに来たんだよ。














  ・・・ただ一言、「二度と近付くな」とな。」











 「!!?」


 フィフスは今度の言葉には頭での理解が追い付かず、更に大きく動揺し、鎖の音を響かせて暴れ出しました。


 「待て!! 今のはどういう意味だ!!?」

 「別に、俺と彼女が幼い頃のよりを戻したってことさ。」


 そう言いながら渋木はフィフスに背中を向けて暗闇の奥へと戻って行き、それを見ながらフィフスは動けない体で必死に叫びますが、渋木は聞く耳を持ちませんでした。


 「待て!! オイ渋木!!! 瓜に何があった!!? 話せぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 声もむなしくフィフスが首を伸ばしても渋木は暗闇が晴れると共にその姿が消えていき、バタンッ!!っと扉の閉まる音が響き渡りました。


 「エエイ!! 外れろ!!」


 取り残されたフィフスが鎖から解放されようともがいていると、彼の耳に暗闇から渋木とは違う声が聞こえてきました。


 「馬鹿なことしたね~・・・ せっかくヒントを与えてあげたのに、無駄にしちゃってさぁ~・・・ 言ったじゃん、彼女に気をつけろって。」


 その声の主はさっき逃げていってたカオスでした。彼はフィフスが手出しできないギリギリまで歩いて近付き、声に出して笑いながら言ってきます。


 「ハハッ!! やっぱ人間って単純だね。大切な命を奪うって言ったら、散々お世話になった友達も裏切っちゃうんだから。」

 「お前だってそのグルだろ!! フンッ!!・・・」


 フィフスは彼女が身を守るためとはいえ、内心これ以上この話をしたくはないと思い、別の話に切り替えて誤魔化そうとしました。


 「それで、ここはどこだ?」

 「良い質問ですね。」

 「怒られそうな言い方止めろ。」


 カオスは楽しそうにしながらこう返事をしました。


 「このVIPエリアがなんでこんな隠すように置かれていると思う?」

 「あ?」

 「その答えがこの先にある。」


 フィフスはカオスの言っていることが分からずに反応すると、カオスは後ろに少し歩いて立ち止まり、彼から見て正面に手を出すと、暗がりに見せたカーテンの布を掴みました。


 「向こうの世界でもやっていたことさ。ただしここでは人間同士でだけどね。」


 そこからカオスがカーテンを広げ、フィフスは初めてその先の景色を見ました。


 「これは・・・!!」


 フィフスはその光景の意味を悟ると、目を丸くして絶句するほど驚きました。











 「ごめんなさい・・・ フィフスさん・・・」







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