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第18話 魔女の本気

 お菓子隊の面々を軽く眠らせ、颯爽と教室を出たフィフス。その目の前には、倒れて気絶している瓜がいた。


 「瓜!!」


 さっきまでと違い焦った表情で瓜の所へ彼は駆け寄った。頭を左手で持ち、怪我が無いか確認して声をかけた。


 「オイ瓜!! 目え覚ませ!!」

 「うっ・・・ うーーーーーーーん・・・」


 すると少しして瓜は目を覚ました。


 「フィ・・・ フィフスさん?」

 「フー・・・ 起きたか。怪我は無いか?」

 「は、はい・・・ 特には・・・」


 調子を取り戻して瓜はフィフスの支えを受けながら立ち上がった。フィフスは少し安心し、彼女に何があったのかを聞いた。


 「何があった!? 馬鹿眼鏡がどこにいる。」

 『それが、さっき・・・』


__________________________________________


 その頃のグレシア。手紙に悩まされながらも下校中・・・


 「ハ~~・・・」

 『どうにも尻尾が掴みづらいわね~~・・・ 気持ち悪いから早くケリ付けたいんだけど・・・』


 虫の居所が悪い気分で周りを警戒しながら足を進めていたが、その瞬間頭に直接声が聞こえてきた。


 『やあ、初めまして奥山さん。いや、グレシアさん。』


 突然のことにグレシアは驚いたが、すぐに戦闘態勢になり相手を探した。


 「誰!? どこにいるの!?」

 『残念ですがその周りにはいませんよ。そもそもどうやってこの通信をしていると思いますか。』


 グレシアは目を見開きハッとなった。


 「まさか・・・」

 『その通りだ。』


 そこから離れたとある建物の屋上、この間の化けゴウモリが口を塞がれて逃げようとする平次を抱えながら、もう一つの手で彼の頭に触れていた。


 「私は今、君の契約者のテレパシーを利用させてもらっているよ。少しお話がしたくてね。」

 『何のつもり? こんな手の込んだことして。』

 「大方の予想通り取引ですよ。この男を返して欲しければ、今から言う場所に一人で来なさい。」

 「フガッ!! フガーーーーーーーーーーー!!」


 腕の中で暴れる平次に化けゴウモリは締め付けを強めた。場所を言い切った直後、平次が気絶すると共に通信は切れた。グレシアは険しい顔になった。


 『やってくれるはね・・・ にしてもあの馬鹿、簡単にやられすぎよ!!』


 一方のフィフス。擬態を解いて瓜を背中に乗せ、夕方の町中、屋根を渡って走り回っていた。


 「チッ、アイツ・・・ どこ行きやがった。」

 『石導君、大丈夫でしょうか・・・』


 走りながらもフィフスは内心どこか疑問に思っていた。


 『にしても妙だな・・・ 窓が割れた時のタイミングが明らかに狙ってやっている。しかしどこかで見張ってたなら魔力を感知出来るはずだがそれも無い・・・』


 黙り込んでいるフィフスに瓜が声をかけてきた。


 『あの、どうかしました?』

 「ああ、いや何でも無い。」


 フィフスは返事を言うのに瓜の方を見て顔を戻す。そのときにもう一つ疑問が浮かんできた。


 『そうだ、大体何で瓜は捕まってねえんだ? 向こうは俺の距離制限は知らないはず、それを敢えて見逃したかのように・・・ 嫌な予感がする。』

 『随分と焦っているようですが・・・』


 瓜からの突然の質問に戸惑いかけながらもフィフスは答えた。


 「眼鏡が心配だからな。」

 『人質だからですか?』

 「いいや、化けゴウモリごとグレシアにやられるかもしれねえからだ。」

 「!?」


___________________________________________


 


 その後、しばらくしてその場に擬態を解いたグレシアは駆けつけた。周りには、場所の端っこにグルグル巻きに縄で縛られた平次がいる。しかし人質を取られているにしてはどうにも落ち着いている彼女の様子に化けゴウモリは疑問に思った。


 「おや、意外ですね。もっと焦っているかと思っていましたが。」

 「勘違いしないで。アタシはアンタの始末をしに来ただけよ。そこの馬鹿はどうでもいいわ。」


 そう言うと、グレシアは事前に持っていた杖を構えた。


 「私の目的はあくまで君です。こうすれば言う事を聞くかと思いましたが、どうやら最後は力技しかないようだ・・・」


 化けゴウモリはそのまま左手で口元を隠し、そして・・・


 「<疾風術 怪拘波>」


 次の瞬間、彼は口から見えない何かを打ち出した。何かを感じ取った彼女はとっさに身を引こうとしたが、直後に自分の後ろの足下のコンクリートが潰され、ギリギリの所で体制を戻した。


 「クッ・・・ 危ないわね。」

 「そのまま動かなければいい、そうすれば怪我をしなくてすみます。」

 「拘束系統の術ってこと?」

 「ええ、今貴方はいわば罠に囲まれています。一歩動けばさっきの攻撃が瞬時に直撃しますよ。」


 余裕な感じで迫る化けゴウモリ。よほど術に自信があるようだ。


 「ふうん・・・ 随分と自信があるようね。」

 『と言うか、どうにも焦っているわね。時間に追われているような・・・』

 「来てもらいますよ。そうしないと私は自由になれないので。」

 『それって・・・』


 グレシアはその場でため息をついた。その事に化けゴウモリは疑問を浮かべた顔をした。


 「どういう訳か知らないけど、追い詰められてるようでアンタ、詰めがが甘いわ。」

 「何ですって? それはどういうことです。」

 「こういうことよ。」


 するとそこに、突如上空から氷の鳥が飛来し、化けゴウモリに突撃した。そして空へと羽ばたいていった。


 「クッ!! 何だ!?」


 彼に攻撃が当たった事により、術の効き目が弱まり、グレシアは前方に出た。


 「あんな招待を受けといて、用心してない分けないでしょ。」


 ひるんでいる相手に、グレシアは即座に杖を取り出し、下に向けて今度こそ術を繰り出した。


 「とっとと終いよ。 <氷結術 氷巣形成(ひょうそうけいせい)>」


 杖をコンクリートにいとも簡単に刺し、そこから屋上の辺り一面があっという間に氷で固められた。ちなみに身動きのとれない平次も巻き沿いである・・・


 「これは・・・ そうですか、あなたは雪人でしたか。これは驚いた。」

___________________________________________


 「・・・!!」

 『フィフスさん?』

 「アイツ、始めやがった!!」


 フィフスはどこか焦りながら、グレシアの魔力の感じる方へと急いで走った。


 『そんなに不味いんですか?』

 「アイツの術は、自分のフィールドを広げて相手を追い込む手法だ。」

 『よく言う、雪女の伝承ですね。』

 「だが・・・ 周囲に一切お構いなしだがな!!」

 


___________________________________________


 凍った地面の上で緊迫した雰囲気を放つ二人。


 『まさか雪人がこんな所にいるとは思わなかった。どのように戦うのか興味がありますねえ・・・』


 そう思った彼は試しに口から直接音波を吐き出した。しかしこれをグレシアは突如凍った地面から壁を出現させて封じた。


 『こんな大きな体積の物体を瞬時に作り出すとは・・・』

 「どうしました? 守ってばかりでは勝てませんよ。」


 そう言われたグレシアは杖の先を彼の前に向けた。


 「<氷成形 氷柱(つらら)>」


 すると先程発生した氷の壁からいくつもの氷柱が作り出され、そこから勢い良く飛び出した。化けゴウモリはすぐに回避しようとしたが、いつの間にか足が氷で固められ、身動きがとれなくなっていた。


 『しまった!! だが・・・』

 「<疾風術 音波連弾>」


 口から氷柱と同じほどの数の音波を繰り出し、打ち消した。ここだとに極めた化けゴウモリは音波を応用して足を固めていた氷を破壊し、距離を詰め寄って攻めてきた。グレシアの作った氷の壁を壊し、再びグレシアを拘束しようとしたが、そこにいた彼女は既に後ろに身を引き、地面の氷から何かを作り出していた。


 「<氷成形 ガトリングガン>」


 その場に瞬時に作り出されたのは、大砲程の大きさのガトリングガンだった。


 『この一瞬にここまで大きな物を・・・ だが、おそらくこれは弾丸(なかみ)の無いハッタリ。攻撃は出来ないはず・・・』

 『とか思ってるんでしょうね。だけど・・・』


 グレシアはそのレバーを握って回した。すると砲口から次々と氷の槍を打ち出した。


 「馬鹿な!!」


 化けゴウモリはとっさに変化し、無数のコウモリに変化して難を逃れた。かわされた槍はそのまま後ろにあった貯水タンクに直撃し、木っ端みじんに破壊した。変化を解いた化けゴウモリは後ろの様子を見て唖然とした。


 『あの威力。当たっていたら私も・・・ 考えただけで恐ろしいものだ。』

 「チッ・・・ すばしっこいわね。なら・・・」


 グレシアはすぐに次の武器を作り出し、攻撃を再開した。


___________________________________________


 グレシアの放った魔力に導かれ、かなり迫ってきたフィフスと瓜。もうすぐというところで、突然フィフスは足を止めた。


 『どうしました? 今度は。』


 心配そうに聞く瓜、フィフスはまた機嫌の悪い顔になった。


 「瓜、 少々熱いが我慢しろ。」

 「ハイ?」


 そう言うとフィフスは型を構えだした。すると前方から、凄い勢いで迫ってきたいる物体があった。


 『あれは!?』

 「<火炎術 破壊炎>」


 フィフスは手から大きな炎を繰り出し、近くに来たそれを一瞬で燃やし尽くした。


 『今のは・・・』

 「グレシアの術だ。派手にやりやがって・・・」


 どうにかしがみついている瓜に、フィフスはさらに焦った表情を見せた。そしてとうとう・・・


 「瓜、奥の手を使わせてもらうぞ。」

 『奥の手って、もしかして・・・』


 瓜がそう思った頃には、二人はその場から忽然と消えていた。


___________________________________________


 グレシアが攻撃を放ち、それを相手が変化で回避し進捗がないまま続いていた。そこに、お得意の瞬間移動でフィフスと瓜がそこへとたどり着いた。二人がその場を見ると、周囲に大きな氷が四散していた状況になっていた。


 『こ、これは・・・』

 「本当に嫌な予感が的中したな。それも予想以上だ。」


 さすがのフィフスも冷や汗をかいていたが、そこに来たことに気付いたグレシアがやって来た。


 「遅いわよ!! あたし一人で片付くところだったわ。」

 「何が片付けだ。お前の氷のせいでろくでもないくらい散らかってんじゃねえか・・・」

 『フィフスさん!! あそこに石導君が!!』

 「「ッン!?」」


 フィフスはもちろんのこと、全く存在に気付いてなかったグレシアも同時に平次の方を向いた。


 「タス・・・ ケテ・・・」


 即座にフィフスがいくつかの氷を解かし、なんとか平次を助け出したものの、氷付けになっていた事もあり、服が濡れてガクガクに震えていた。


 「ひ、酷い目にあった・・・」

 「石導君・・・ 大丈夫?」

 「ウオーーーーーーー!! 町田さん、俺を心配してくれるのは君だけだーーーーーー!!」


 瓜からの心配に平次は号泣していた。それを見たフィフスとグレシアは、


 「キモい。」

 「やばい奴ね・・・」

 「味方軽く氷付けにした奴が言うな!! お前なんてもう仲間じゃねーーーーーーーー!!」

 「あら何言ってんの? アンタのこと仲間なんて思って事ないけど。」

 「ええ、それマジ? マジで言ってんの!?」

 「俺はホコリが舞ってるぐらいのことだな。」

 「お前まで言わんで言い赤鬼!! つうかせめて人扱いしろよ!!」


 完全に蚊帳の外にされていた化けゴウモリは、呆れて変化を解いた。


 「あの、私のこと忘れてません?」


 「「「「あっ・・・」」」」


 「『あっ』って何ですか!!」 さっきまで良い感じに戦っていたというのにそれはないでしょ!!」


 少々オチャラケが過ぎていたが、相手の五体満足な姿を見てフィフスは目の色を変えた。


 「グレシア、アイツに攻撃は当たったよな。」

 「? 最低でも何発かはね・・・」

 『それで無傷か? いくら変化でかわすにしても無理があるだろ・・・』


 どうにも疑問を感じたフィフスは、グレシアにまた質問をした。


 「おい、攻撃が当たったのはいつだ?」

 「最初の鳥の攻撃だけど、それがどうかした?」


 それを聞いてもしやと思ったフィフスは、一つ試してみることにした。素早く構えを終えて、破壊炎を打ち出したのだ。不意を突かれた形だったこともあり、攻撃は辺りの氷ごと見事化けゴウモリに命中した。


 「アンタこそ容赦無いわね。」

 「場所を考えずに氷の槍(たま)撃ち放題してたお前に言われたくねえよ。」

 『やったのでしょうか・・・』

 「いいや、見ろ。」


 フィフスに言われて三人が同じようにまえを見てみると、そこには変化していた化けゴウモリが一つに集約して全身を元に戻していた。


 「ふう、あぶないですねえ・・・」

 「嘘!! あの攻撃で傷一つ無し!?」

 『やっぱりか。なら・・・』


 フィフスは小声でグレシアにまた質問をした。


 「グレシア、今その鳥はどこにいる。」

 「エッ? ここの上空を飛び回ってるけど・・・」

 「今すぐ下ろせ!!」


 疑問を浮かべたままだったが、真剣に言うフィフスにグレシアは従って鳥を降ろした。その様子に化けゴウモリは焦り、音波を彼らに向かって連続して撃ったがフィフス剣を振るって全て弾いてみせた。そうこうしている内に、鳥は着地した。


 「これ、何?」

 『黒い、物体?』


 その術を解くと、その中から何やら黒い小さい物体が出現した。


 「まさか、これって・・・」


 ピンときた平次にまた相手は音波を放ったが、フィフスはそれすらも捌いて言った。


 「その黒い物体がおそらくこいつの本体だ。とっとと破壊しろ。」


 バレた途端にそこから離れて逃げ出す物体。彼女達も当然黙ってはいなかった。


 「へえ、そういうことね。」


 グレシアは地面に刺さったままだった杖をすぐに引き抜き、小さな本体に向かって氷柱を一発撃ってみせた。


 『ま、マズイ!!』


 化けゴウモリは一目散に本体を撮ろうとしたが、時既に遅し、グレシアの氷柱はもう刺さろうとしていた。


 「終わりね・・・」


 





















 「さあ、それはどうかなあ?」


 「「「「!?」」」」


 四人同時に見知らぬ声に驚いた。そして気が付くと、そこにいたはずの化けゴウモリの本体が消えていた。


 「何だ!?」

 『瞬きもしない間に・・・』

 「クッ!! どこのどいつよ!?」


 「こっちだよ~・・・」


 また聞こえてきたその声の方向にその場にいた五人全員が振り返った。するとそこには・・・


 「ヤッホ~ どうもこんにちは。」


 藍色の仮面をつけてフードをかぶった男が、右手に化けゴウモリの本体を持ち、そして左手を横に振っていた。



<魔王国気まぐれ情報屋>


<氷結術>

グレシア達雪人が使う魔術。空気中の水蒸気を即座に凍らせて固体化する。その性質上火炎術とは相性が悪い。


<氷結術 氷巣形成>


氷結術の特殊技。周囲一定の範囲の地面を凍らせることにより、術の発生にかかる時間を短縮し、尚且つ威力を高めることが出来る。



<氷結術 氷成形>


氷結術の基本技。凍らせた氷で武器や縦を作り出して相手を攻撃する。氷巣形成と合わせることで大型の武器を瞬時に作ることが可能となる。




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