プロローグ
初投稿、初作品です。楽しんでいただけると幸いです。
もしも今、どんな願いでも一つだけ叶えられるとしたら、あなたは何を望みますか?
かっこいいスポーツ選手になりたい。
かわいいパティシエになりたい。
と、将来なりたいもののことかもしれない。
大金持ちになりたい。 嫌なやつをいじめてやりたい。
のような、少しいやらしい願いをいう人もいるでしょう。 中には、
王様になりたい!!
なんて突拍子のないことをいう方もいるかもしれません。
あ、願いの数を増やすのはだめですよ。それはズルですので。
・・・ コホン! とにかく、人は誰しも何かしらの願いを持っているものです。
それが本当に叶うのなら、とても嬉しいでしょう。
たとえ、化け物を呼び出したとしても・・・
昔々、といってもそんなに昔ではありません。意外と今に近いお話しです。
そこは、周りには誰もいない、往々と広葉樹が茂る森の中。そのうちの一つ、紛れ込んでいる木の大きな枝の上に一人の少年が寝そべっていました。
目を閉じてリラックスしている彼でしたが、少ししてそれを細く冷たく開き、顔を左に向けました。そしてこうつぶやきます。
「来たか・・・ 」
少年の見ている方向には、何人かの人が息をのんで緊張しながら前に進んでいました。その人達は全員高校生ほどの若者でしたが、しかし、着込んでいる服装はとてもそうとは言えませんでした。
何故なら、それはゲームに出てくるような、まさしく勇者パーティーそのものの格好だったからです。ですが、彼らは決してふざけている訳ではありません。この姿こそが、この場での常識なのです。
何故そう言いきれるのか。
それはこの世界が、今私達の暮らしている世界とは違う、科学の代わりに魔術が発達した「異世界」なのです。
森に足を踏み入れた青年達は、一度その場で止まって円上に集まり、安心させるためにお互いに言葉を掛け合います。
「ようやく、ここまで来たわね・・・ 」
ツンとした綺麗な顔立ちの魔法使いの少女が綺麗な声でそう切り出し、次に隣にいた勇者の男が勇ましく口を開きます。
「ああ、俺たちは、やっとここまで来れたんだ。 そして・・・ 」
彼の言葉を皮切りに、残りのメンバーも次々とお互いの目的の再確認も込めた言葉を掛け合いました。
「この先の、魔人の国に潜んでいる、最悪の<魔王>を倒し・・・」
「世界を、恐怖の魔物から、守るんだ!! 」
全員中央に向けて右腕を伸ばし、再び一行は誓いを立てると、またも列に並んでその先に存在するという、<魔王城>に向かっていました。
しかし・・・
ストンッ・・・
警戒を怠らずに進んでいた突然一行の前に、木の上から何者かが降りてきました。急なことに少し驚いた彼らでしたが、今までの過酷な戦いを思い出すと、武器を握る腕に力を込め、戦闘態勢になります。そして勇者の男は、ハッキリとした透き通った声で相手に言いました。
「来たか、魔王軍! 我が名は勇者トーマ!! これからおまえ達の王を倒し、この世界に平和をもたらす者だ!!!! 」
勇者が見た相手の少年は全体的な風貌は人間に似ているものの、頭には立派な角が二本生え、その肌は赤みがかっています。口元からは、小さい牙が上唇から二本出ていました。そして腰には一本の剣を携えています。
ゴクリ・・・
「魔物よ、ここを通させてもらうぞ!!」
勇者の男が持っていた剣を構え、後ろにいる残りのメンバーもそれに習ってそれぞれ武器を構えます。しかし相手の態度は何も変わらず、落ち着いていました。
「魔王を倒す・・・ か・・・ 」
相手の男は一度余所を見てから再び勇者たちに視点を戻し、そして一言小さな声でこう言いました。
「くだらねぇ・・・ 」
男が言葉を切った次の瞬間、パーティーは勇気を振り絞って一斉に彼に攻めてきました。そして・・・
その少し後には、五人いた連勝揃いのパーティーは、全滅してしまいました。まだ息のあった勇者は、どんどん気が遠くなっていく中で枯れきった声を上げます。
「そんな・・・ 必死に頑張って、強くなったのに・・・」
勇者は自分を軽々と倒した少年の背中を見て聞きます。
「お前は・・・ 何者だ・・・ 」
少年は勇者の方を向いて、こう答えました。
「俺か?
俺の名は<フィフス>
そう言ったらわかんだろ。」
勇者は聞いたことに耳を疑って、血相を変えて衝撃を受けた顔になりました。
「お前が・・・ フィフス・・・ だと・・・ 」
バタッ・・・
そう言って勇者は白目を向き、力を失って頭から倒れました。それを見た少年は、その場を歩いて去って行きます。
彼は<フィフス>。この森の先にある、多くの魔物がはびこる国、<魔王国>の国王の息子。すなわち、 <魔王子>でした。
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