表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/344

第194話  罠にかかりに

 事前にカオスに言われた時間となり、フィフスと渋木は二人で指定の場所に到着しました。渋木はVIPエリアに来るのは初めてでしたが、それどころではないためか動揺する仕草もありませんでした。


 到着するとそこは他と変わらないような一個室であり、扉の前で二人はお互いに一旦頷いて確認します。そしてフィフスがその部屋の扉を開け、中に入りました。


 バタンッ!!・・・


 そこは一個室にしてはだだっ広く、しかし物がなかったために扉を開けた音が響き渡っていました。


 そしてフィフスが目を懲らして部屋の奥を見ると、渡された写真と同じように縛られている瓜を見つけました。


 「「瓜!!」」


 二人が声を揃えて部屋の中に踏み込んで彼女の方へと走り出します。しかしその途中で、右の影から足音が聞こえ、そこから蜂王が出て来ました。二人はそれを見て足を止めます。


 「約束通りに来たか。」

 「蜂王・・・」

 「おっと、この場にいるのは俺だけではないぞ。」


 蜂王がそう言うと、天井の見えない上方向から別の魔人が落ちてきました。


 「まだいたのか! カオスではないようだが・・・」


 その魔人はまるでカニを人型にでも変形させたような容姿をしており、まさしく『化ケガニ』とでも言えるものでした。早速その魔人は二人に指示を出します。


 「さあ、その男をこちらに渡して貰おうか。」


 しかしフィフスがすぐに強気の言葉を返します。


 「まずそいつを帰すのが先だろ。」

 「勘違いをするな! 我々はあの女をいつでも始末できる。話の主導権はこちらにある。」

 「チッ・・・」


 フィフスは首を振って合図を出し、渋木はそれを受けて相手を睨みながら魔人達の所に歩き出そうとした。


 「ちょっと待った!!」


 渋木が突然聞こえた魔人二人とは違う声に一時停止すると、瓜の隣の闇からカオスが現れました。


 「カオス・・・ お前もいたのか・・・」

 「・・・」


 カオスは二人の魔人に近付きながらこんなことを言い出しました。


 「君がこっちに来る前に、魔王子君のかっこいい武器、間近に見せて欲しいなぁ~・・・ もう一人の方は、付けている腕輪をね。」


 出来れば気付かれたくなかった二人は目をちらつかせますが、相手は考えさせる時間を与えてくれるわけがなく、蜂王が槍の先端を瓜に向けて突き立てました。


 「早くしろ。」

 「平和な交渉が出来ないからねぇ~・・・」


 仕方なくフィフスは剣、渋木は腕輪をそれぞれ相手の方に放り投げました。


 「よろしい。じゃあ、こっちに来て。」


 カオスは手招きをし、渋木はそれに引っ張られるように魔人達の方に歩いて行き、そして到着しました。すると・・・


 「ハハッ! よ~やく来た! 手間がかかったねぇ~・・・ それじゃあ~・・・











  ・・・片付けよっか!」


 カオスの声を引き金に、蜂王が棒立ちのフィフスに向かって毒液を撃ち出してきたのです。


 「やっぱこうなるか・・・」


 フィフスはそれをかわすと、魔人側にいた渋木は隠し持っていたフィフスと同じマグナフォンを銃にして左右二体の魔人の腕を撃ちます。それぞれやられる前に気付いたようで避けられますが、姿勢を崩させて隙を作ることに成功します。


 「おおぅらっと!!」


 そこでフィフスは距離の近かった方の化ケガニにドロップキックを浴びせて分断させます。


 「フグゥ!!・・・」


 化ケガニが離れたことでフィフスはさっき放った武器類を拾い、腕輪を渋木に向けて投げました。


 「ほらよ!」


 渋木はそれをナイスキャッチし、フィフスはそこに指示を伝えます。


 「蜂王は任せた! お前の方が戦いやすい。」

 「分かった!」


 渋木は腕輪を装着してスイッチを押し、経義と同じように全身をバトルスーツに包みました。蜂王はその前に毒液を当てようと繰り出しますが、間に合わずスーツに当たり、しかも効果は薄いようでした。


 「溶けないだと!?」

 「のようだな。」


 蜂王は既に若干押され気味になりながらも渋木との戦闘を始めました。



 一方でフィフスも化ケガニに対し先手必勝で格闘戦を仕掛けていました。


 「あ~らら・・・ 大乱闘が始まっちゃった。」

 「お前が武器類拾っておかないからだろ!!」

 「だって君達の方が近くにいたしぃ~・・・ ま、こうなったら後は任せたよぉ~・・・」


 カオスはウォーク兵を数体召喚してその場から瞬時に消えてしまいました。


 「あいつめ、逃げたか・・・」


 化ケガニがケチをついていると、フィフスはそこに攻撃を加えます。しかし連続で攻撃を受け続けているにもかかわらず、化ケガニには一切ダメージが入っている様子がありませんでした。


 「クッソ硬え・・・」


 余裕とでも言いたいのか、化ケガニはフィフスを見て鼻で笑います。


 「フンッ!・・・ 少し時間を空けたとはいえ、やはり大分消耗しているな。その体で私に勝てるのか?」

 「よく言う・・・ 拒否権なんてはなからなかったくせに・・・」

 「我々はあくまで娘を攫っただけ、それで来るかはお前の勝手だろう。」

 「ああそう・・・ 『分かってて言ってんなコイツ・・・』」


 すると化ケガニの前方にウォーク兵も立ちはだかり、まとめて相手せざるおえなくなってしまいました。しかし化ケガニに見透かされたとおり、彼の体は回復しきっておらず、どうにかウォーク兵達の対処はしていましたが、化ケガニからはそんな彼の僅かな隙を見つけては腕の大きなはさみで切りつけてきます。


 猛攻に何回か受けてしまったフィフスは、後ろに下がって膝をついてしまいます。


 「ハァ・・・ ハァ・・・」


 化ケガニはウォーク兵達を下がらせ、更に見下してきます。


 「フフフフ・・・ 張り合いのないものだな。」


 完全に勝ち誇っている化ケガニ。しかし体勢を崩したフィフスのその目には、何かを狙っている熱がまだありました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


モチーフ紹介


・蜂王

 『猿蟹合戦』より蜂




 よろしければ、『ブックマーク』、『評価』をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ