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第193話 鬼猿連合

 人質を取っている立場でいますが、カオスのいつものやり口もあってフィフスは彼の話の仕方に違和感を感じませんでした。


 「・・・何が望みだ?」


 フィフスがカオスを睨み付けながら聞くと、彼はすぐに返事をしました。


 「当然、猿柿 渋木だっけ? 彼の身柄だよ。」

 「なんでそこまでアイツを付け狙う!? 複数の魔人を使って、一人間対象への規模じゃないだろ。」


 カオスはフィフスの近くを歩き回りながら話し続けます。


 「彼は・・・ 君も所属している『エデンコーポレーション』重役のご子息さんでね。捕まえれば魔革隊(こっち)の得がデカいんだ。もちろん、契約者がそれだけ恨んでるってのもあるけど。」


 そしてくるりと楽しそうに回ってフィフスの背に顔を向けました。


 「で~も臼負いや天邪鬼の件で、彼がただ者でないことが分かったじゃん。そこで彼女だ。」

 「てめえ・・・」

 「彼は君の契約者にぞっこんだぁ!! ヒーローはヒロインのピンチには来てくれると思ってさ。この方が効率いいだろ?」


 フィフスはカオスに顔を向け、少々抑え気味の怒り声を出します。


 「何故それを俺に言う?」


 カオスはそれに調子よく答えました。


 「提案だよ。君も限界なんだろう? 渋木君を連れてくれば、見逃してあげるよ。仲悪いみたいだし別にいいでしょ? 一時間猶予をあげるから、指定の場所に連れてきてね。お~願い。」


 パンッ!!・・・


 カオスが突然猫だましのように手を叩き、フィフスがそれに驚いて反射で瞬きすると、彼の姿は消え、代わりにさっきの写真がヒラヒラと舞っていました。


 フィフスはすぐにそれを掴み取り、そのとき写真の裏に何か書かれている何かを見つめます。引っ繰り返して見てみると、そこにはカオスの言う受け渡し場所への地図が書かれていました。


 「これは・・・ 明らかに罠だな・・・ あの野郎!!・・・」


 しかし瓜が捕まっている以上、フィフスに拒否権はありませんでした。



______________________



 その後フィフスはさっき下った階段を上ることになり、隠し扉から出て来ました。そこにさっきの蜂王の分身はありません。おそらくカオスからの指示なのでしょう。


 瞬間移動を使う方法も考えましたが、緊急ボードについて魔力切れになっては意味がないのと、おそらくカオスはそれも予期していると思って止めにしました。


 結論カオスの企み通りに彼はそのままある場所に向かいました。瓜が自分の所に居ないとなって、普通確実にここなら会えると言える場所なら、そこしかなかったからです。


 フィフスがその場所に到着し、扉を開けると、案の定その中に彼はいました。


 「やっぱりな・・・ ここにいたか。」

 「お、お前・・・」


 そこは、フィフスと瓜が泊まっている一等客室です。焦ったような顔を見せて渋木はフィフスに近付きました。しかし警戒もしているようで、片手にフィフスのと同じ銃を構えています。


 「お前! 瓜をどこへやった!!?」

 「待て! 今は俺らが争っている場合じゃない!!」


 フィフスはカオスから渡された写真を渋木に見せました。


 「これは!?」

 「分かりやすい罠だ。しかも飛び込まざるおえないな・・・」


 フィフスは隠し階段を降りてから自分の身に起こったことを渋木に説明しました。しかし渋木は天邪鬼の事があってフィフスを信用しません。


 「瓜が攫われてお前が偶然その場所を知っているだと!? 明らかに無理があるだろ!! お前が攫ったんじゃないのか!!?」


 フィフスは睨み付けてくる渋木の目を見ながら負けない強気で話しました。


 「そう言うと思った。だがどうにしろ、瓜は今俺達より格段に危険だ! それは理解してくれ!!」


 渋木はそれを言われて刺さったのか、顔は変わりませんが、突き付けていた銃を下ろしました。


 「ケッ・・・」

 「俺が信じられないんならそれでいい。殴りたいなら殴れ! 後で煮るなり焼くなり好きにしろ!! だが、今ばかりは協力して欲しい!! 頼む!!!」


 フィフスは渋木に向かって深く頭を下げて頼み込み、渋木は魔人にこんなことをされたことに対応に困っているようでした。


 「・・・」


 渋木は目線を下げ、少し考えたような顔を見せてから両目を閉じてじっと固まり、大きめのため息を一つこぼし、小さく独り言をこぼしました。


 「ハァ・・・ 言い合ってても時間の無駄か・・・」


 渋木は片目を開けてフィフスを見下ろし、さっき彼が言った頼みに関する返答を言いました。


 「・・・ いいだろう。瓜のためだ、今回だけは魔人狩りに協力してやる。」


 気が進まないのか声のトーンはどんよりとしていましたが、それでも助けを得られることにフィフスは感謝しました。


 「ッン!!・・・ ああ!! 感謝する。」


 フィフスは右手を渋木に向けて伸ばし、握手をしようとします。しかし渋木はそっぽを向いてその手を握ろうとはしませんでした。


 「握手は・・・ 無しか・・・ そう簡単にはいかないわな・・・」

 「勘違いするな、俺はお前を信じたわけじゃない。瓜を・・・















  ・・・俺の愛しの人を助けるためだ!!」




 フィフスは一度出した右手を引っ込むのにどこか悲しげな顔になりました。


 「ま、今はそれでいいか・・・ くどいようだが、俺は瓜に襲いかかった事なんて一度もないからな!!」

 「それはここからのお前の動きで判断させて貰う。」

 「・・・ 上等だ! 戦闘の後すぐに謝罪する覚悟しとけよ。」


 こうしてフィフスは曲がりながらも交渉には大方成功し、渋木を味方に付けることが出来ました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・渋木のハッキリした瓜への好意を聞いたフィフス


 『オッ! オォ~・・・ こういうこと堂々と言えるってある意味スゲえな・・・』




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