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第191話 三人目の刺客

 天邪鬼に勝利し戦闘を終えたフィフスは、そこから息つく暇もなく窓の枠から降りて船内を走り回っていました。彼の言っていたことから瓜のことが心配になり、無事を確認したかったのです。


 『今は渋木と一緒にいるのだろうか・・・ とにかく無事であってくれよ・・・』


 テレパシーが使えないならとスマホで電話をかけようとしました。しかしその前にスマホの画面を見たことで驚きました。


 『圏外!? ここは山奥じゃないんだぞ!!』


 電話での通信も断念せざる終えなくなり、彼がスマホをポケットにしまって足で探そうとした次の瞬間・・・









 シュン!!!




 そんな彼の後部上から突然槍が出現し、彼を後頭部に刺さりにかかりました。


 「!!」


 しかし彼をすんでのところでそれを回避し、同時に身を翻して後ろを向くと、蜂を人型にしたような魔人が、自分の突き出した槍を持ち直していました。


 「ほう・・・」


 その魔人はさっきの攻撃をかわしたフィフスに感心した言葉を言い出します。


 「驚いた! これだけ連戦が続けばかなり消耗しているものだというのに、それでも私の不意打ちをかわすか・・・」


 それに対してかわした本人は動向を邪魔されたことにムカついて舌打ちをしました。


 「チッ・・・ ったく次から次へと・・・ こっちはいま忙しいんだ!! とっとと失せろ!!」

 「ほお、何か急ぎの用事でもあるのか?」


 白々しく言ってくる魔人の言葉を無視してフィフスはその場から離れようとしますが、相手はそれを許すはずがなく、間合いに入ってまた槍を突き出してきました。


 だったらとフィフスはそれを敢えてギリギリまで引き寄せてからかわし、カウンターをかけます。ですが相手はそれすら見越し、同じくすんででかわしてから開いていた拳で彼の腹を殴りました。


 「カハッ!!・・・」

 「残念。我ら『蜂王』の反射神経は人狼と肩を並べる。鬼の素早さなど相手にならない。」


 疲れとダメージにフィフスが数歩後ずさってまた息を整えると、蜂王は今の彼の心境を勝手に代弁しました。


 「今お前はここままでは負けると思っているな? そうだろう。」

 「んな訳あるか!!」


 フィフスは反発して放射炎を放とうとしますが、口からは少量の炎しか出て来ませんでした。


 「ハァ!!・・・ ガァ!!・・・」

 「必死にやっているが意味はない。お前が天邪鬼にキレて必要以上に魔力が使ったことも計算済みだ。お前はあの女に執着しているからな。」


 フィフスは下唇を噛み締め、現状がどういうことかなんとなく察しました。それも相手はわざわざ代弁してきます。


 「獄炎鬼、お前は既に罠にはまったのだ。最早敗北は、確定的だ。」

 「お前・・・ 中々いい性格しているな・・・」


 ここでの会話で、フィフスの頭に一つ仮説が立ちました。


 『はなから俺の退場が目的・・・ 渋木と組まれるのを防ぐためだろうか? しかしアイツにそこまで狙う価値があるってのかよ・・・ どうにしろこの場は逃げた方がいいな・・・』


 フィフスは足を下がらせて警戒を強めながら、腰の剣に手をかけます。


 『インターバルの時間は過ぎている・・・ が、今使えば確実に魔力切れになるだろう・・・ 見つかったら終わりのかくれんぼか・・・ リスキーだな・・・』


 しかしそこに紫の液体が飛んでき、フィフスはハッとなってそれを回避しました。液体はそのまま彼の斜め後ろの壁に当たり、軽々とそれを溶かしました。シンキングタイムは終わりのようです。


 『毒液か・・・ 当たっただけでKOじゃねえか!!』


 蜂王は移動もせず槍を突き出しただけでさっきの毒液を撃ち出してきました。フィフスはそれをかわしながら背中を向けて走り出します。


 「尻尾を巻いて逃げ出すか・・・ 正しい判断だろう。ただし・・・」


 蜂王はその場でバラバラに槍を刺突する動作をしだし、その風圧の形に毒液を固めて空中に用意しました。


 「私にこの技がなければだが。 <蠱毒術 刺突酸弾(しとつさんだん) (れん)>」


 すると用意した毒液が独りでに動き出し、蜂王はこれを連発し、逃げるフィフスに襲いかかりました。彼は回避こそしますが、当然毒液はその先の壁を溶かしていきます。


 『このままだと船ごと壊される! どっちにしろ防がねえとやばい!!』


 フィフスは反転して後ろ向きに走りながらスマホを銃に変形してレーザーを撃ち、見事蜂王の槍を持つ手元に命中させました。


 「ウグッ!!・・・」


 蜂王は槍を手放し、毒液の連射が止まりました。今のうちにとフィフスは角を曲がって逃げます。蜂王は手の傷を見ました。


 「今のが魔力無しで使える武器か・・・ 致命打にはかけるが厄介だな。」


 蜂王はそこから呆然と立ち尽くし、フィフスを追おうともしませんでした。


 「逃げるなら逃げるがいい。さっきも言ったとおり敗北は確定的だがな。



______________________



 フィフスは相手が気を反らしている内にその場から離れようとしますが、もう一つ曲がり角を曲がったそのとき・・・


 「ンナッ!!・・・」


 その先には、まいたはずの蜂王が目の前にいました。


 『この狭い船内を遠回りで先に着いたのか!?』


 蜂王は槍を構えて走りながら刺しにかかります。フィフスがギリギリで回避すると、その体勢で蜂王は止まる、というよりその不自然なポーズで固まり、そして体がドロドロに溶けていきました。


 『違う! これは蜂王じゃない。やつが事前に毒液で作った分身だ!!』



 <蠱毒術 毒分身>



 そして溶けて変形した毒液の塊がフィフスの服の一部を溶かし、彼をより追い詰めます。


 『マズい! 今これをかわしきれる自身は・・・』


 塊はモゾモゾと動いて球型になり、そしてどうにか防ぐ方法を考えているフィフスに容赦無く飛び込んできました。


 「ッ!!!」


 その塊の勢いに、フィフスは動くことも出来ませんでした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


<蠱毒術 刺突酸弾>


 蜂王が使用する術。事前に術装した槍をその場で突くと同時に毒液を宙に固定し、好きなタイミングに撃ち出す。


 連射、ため撃ちなども可能。




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