第190話 偽物VS本物
二人に置いて行かれてしまい、フィフスは部屋で一人頭を冷やしていました。
「クッソ!・・・ 考えれば考えるほどこんがらがっちまう。そもそも誰が俺をここに運んだんだ?」
右手をおでこに付けてそう呟きながら考え込んでいると、そこに入り込む声がありました。
「カオスだよ。」
「ッン!!」
フィフスはよそから聞こえた自分と同じ声にまさかと思って近くにあった剣を掴んでベッドから飛び上がりました。彼の予想通り、部屋には自分と同じ姿の男、天邪鬼が我が物顔で立っていました。
「お前・・・ また俺の姿で・・・」
フィフスの思考は彼の姿を見て怒りが湧き上がり、剣の持ち手に右手をかけました。
「てことは、俺の視覚をいじくったのもカオスか!?」
「ああ、会話したときに貼り付けたって言ってたぜ。」
フィフスはそれを聞いて一つ思い当たることがありました。魔人化した鈴音が彼と経義をオークと誤認して襲いかかってきたときのことです。
『あの時の幻術か!!』
どうやら休憩所でカオスが彼の肩に触れたときにそのときの幻術を仕掛けられ、瓜に合う直前に術を発動させたようです。
「ならなんでアイツは俺を助けた!?」
「さぁな。俺は与えられた仕事をこなすだけだ!!」
偽のフィフスは言葉を切ると同時にフィフスに向かって放射炎を放ち、本物のフィフスも同じく放射炎を出してそれを相殺しました。
「火炎術も使えるのかよ・・・」
「おかげで信憑性は上がったよ。これでもうお前が奴らに信用されることはないだろう・・・」
偽のフィフスの言うことに本物は彼のやったことに気が付きました。
「まさか瓜を・・・」
「さてどうだか? ま、怪我してないことを祈るんだn・・・」
ボカッ!!
ペラペラと饒舌に離す偽のフィフスは、本物がいきなり顔にぶつけてきた鉄拳によって強制的に黙らせられました。
「ムググ!!?・・・」
「お前はもう・・・ 黙ってろ!!」
床にたたきつけられた偽のフィフスは殴られたところを左腕で軽くこすって立ち上がり、不気味な笑顔を浮かべます。
「へへ・・・ 殺る気か? ならこれで、俺が本物に成り代わってやるよ。」
偽のフィフスは右手を前に出し、人差し指を中指を振って挑発する姿勢を見せます。本物のフィフスはそれを見て、両方の拳をより強く握りしめました。
「ああ、殺してやる・・・ お前が慈悲を請うほど、苦しめながらなぁ!!!」
そこから本物は偽物に近付き、二人のフィフスによる格闘戦が始まりました。両者の攻撃は拮抗し、そのまま部屋を飛び出しました。
廊下に出ると偽のフィフスは一度距離を取り、さっきと同じように指を振ってフィフスを挑発します。カッとなったフィフスは再び放射炎を放ち、偽物も同じく動いてまたこれを相殺しました。
「ハッ!! 何度やっても無駄なこt・・・」
シュン!!! ドンッ!!!
偽のフィフスがニンマリとしてそう言った次の瞬間、炎のせいで発生した煙の中から突然本物のフィフスが飛び出し、彼は顔面を掴まれてまた床に叩きつけられました。
「ウガッ!!・・・」
そこからフィフスは偽物の体にまたがり、その顔を左右から両手で次々と殴り出します。
「ガァ!! アァ!!」
「フグッ!!・・・ ブゴッ!!・・・」
『コイツ! もう痺れ薬を分解したのか!? 動きが速い!!』
あまりの猛攻に偽物は一瞬擬態が解けて素顔が見えてしまいますが、またすぐに元に戻りました。そして彼はどうにかフィフスの攻撃を抑えようと自分から姿を変え、瓜に化けました。
「殴らないで!」
「!!・・・」
天邪鬼の予想通りフィフスの動きはピタリと止まり、彼はそれをいい気に攻撃を仕掛けようとします。
『ヘッ!! だ~い好きな友達に攻撃は出来まい。今だ!!』
天邪鬼は股下からフィフスの背中を蹴りかかり、彼をここから退かせようとします。しかし彼はその足を左手で掴み、そして・・・
ドガァ!!!
天邪鬼の予想に反し、フィフスは躊躇なく偽の瓜の右頬を殴り飛ばしたのです。
「ガガァ!!!・・・ な、なんで・・・」
さっきのたこ殴りより強力な一撃を受けた天邪鬼は変化を維持できなくなり、元の姿に戻ってしまいました。
よろめく彼の姿を見ながらフィフスは攻撃を当てられた理由を言いました。
「改めて見ると全然似てねえな。こんなのに薬を盛られたとは、我ながらムカつく。」
「に、似てないだと?・・・ さっき止まって・・・」
「顔を確認してたんだよ! おもいっくそ分かりやすかったが・・・」
フィフスは追撃をかけにかかりますが、しゃべって手の空いた一瞬を就いて天邪鬼は放射炎を出して彼を怯ませ、現状からの脱出に成功しました。
「ええい・・・ バカスカとよくも・・・」
「この程度で終わらせる気はねえ! まだまだしばき足りないんでな!!」
怒りにまかせたフィフスの動きは天邪鬼の予想を超えて速く、後ろに下がれてはいますが完全に防戦一方になっていました。
『もう完全に痺れ薬を分解しているだと!? なんて回復力だ!!・・・』
フィフスは天邪鬼が驚いて動きが遅れた瞬間を見逃さず、連撃を畳み掛けて反撃できなくなるまで追い込みました。
「ガハッ!!・・・」
そして彼の首根っこを掴み、怒声混じりで聞きました。
「命が惜しいか?」
「アッ・・・ アガァ・・・」
天邪鬼は苦しみながら首を縦に振ります。
「一つ聞く。お前の狙いが渋木なら、なんで遠回しに瓜から狙った?」
フィフスの的確な質問をしてての力を緩め、天邪鬼は必死に話し出します。
「し、知らねえ!! 本当に知らねえんだ!! 俺はカオスから指示でこうするよう言われただけで、理由は何もわかんねえ!!」
「そうか。」
正直に話した天邪鬼は命乞いをします。
「なあ! ちゃんと話しただろ? だから、見逃して・・・」
「お前、俺がさっき言ったことを覚えてないのか?」
「え?」
「言ったろ、お前が慈悲を請うほど、苦しめながら殺すって。」
「ナッ!!・・・」
フィフスは絶望した顔の天邪鬼を知覚の窓に放り投げました。窓はその勢いに割れ、天邪鬼は外に追い出されます。
「ま! 待てぇ!!」
しかし天邪鬼の叫びも意味はなく、フィフスは窓枠に足を乗せて構えを取り、一切の容赦無く破壊炎を撃ち出しました。
「アァ!! アアァーーーーーーーーー!!!」
空中で身動きの取れなかった天邪鬼はそれを直撃し、木っ端微塵に爆散しました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
フィフスが瓜の偽物をにてないと言った理由
「本物はあれと比べものにならない美人だ!!」
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