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第189話 今度こそ俺がヒーローに・・・

 部屋の中で渋木による尋問はまだ続きました。


 「何を企んでいる!! 白状しろ!!」

 「だから俺はアイツらとグルじゃない!!」


 フィフスは必死に弁解しますが、彼にこれを言われてしまいます。


 「ならどうして瓜を襲った!?」

 「それは・・・」

 「本当ならとっくに殺している。無事でいたいなら二度と彼女に近付くな!!」

 「猿柿君!?」

 「瓜、行こう。彼は信用ならない。」


 渋木は瓜を連れていこうとしますが、彼女はそれを拒みました。


 「瓜・・・」

 「彼は、私の友達で・・・」

 「それも隠れ家が欲しいための嘘だろ!! 君も頭を冷やせ。」


 渋木は部屋を出て行き、瓜も後ろめたい感情もありましたが、さっき起こったことの事実もあって警戒もあったのか、申し訳なさそうに部屋を出て行きました。


 「・・・」


 また取り残されたフィフスは自分で増やした情報に頭がこんがらがりました。


 「俺が・・・ 瓜を襲った・・・ 俺が?」


 しかしあの火傷跡は、確かに彼が付けたものと同じでした。それにそれなら偽のフィフスの動きがこの部屋にいたときより鈍かったことにも説明が付きます。


 つまりフィフスは、自分が瓜に攻撃してしまった事実が重くのしかかりました。



______________________



 「待って猿柿君!!」


 後ろから瓜に呼び止められ、渋木は振り返りました。


 「オオ! 良かった! 君の事だ、誰でもすぐ信用しちゃうから心配したよ。」


 頬を触れようとする彼の腕を掴み、瓜は説得しようとしました。


 「彼はそんなんじゃないです!!」

 「でも君を襲った!!」

 「あれは、きっと何かの間違いで・・・」

 「瓜!!」


 渋木は瓜の手をほどき、彼女の頬に触れてこう聞いてきました。


 「なんでそこまで彼を庇う? 君と彼に何があったんだ? まさか・・・ 契約を?」

 「!? 契約のこと・・・ 知ってるんですか?」

 「ああ、魔人関連の調査組織にいるんでな。」


 瓜はそれが世間体に配慮して隠したエデンコーポレーションのことだと分かりました。


 「何を臨んだ?」

 「・・・」


 こうなったら包み隠さず話した方がいいと思った瓜は、筆談も含めて渋木に自分と彼との関係を全て正直に伝えました。


 「そうか、友達ほしさに・・・ そのとき俺がいれば、力になれたのにな・・・」

 「彼には・・・ いつも助けて貰って・・・」

 「契約を完了するためだろう。他の魔人だってそうする。」


 渋木はそのときの彼女の顔を見て目を細めました。


 「でも、フィフスさんは!!・・・ 魔人に立ち向かって・・・」

 「君を信用させる罠かもしれないだろう!!!」

 「彼はそんな悪い魔人じゃありません!!」


 瓜が説得を続ける中、渋木は彼女の両肩を掴み、ハッキリと彼女に伝わる声を出しました。


 「瓜、君はあの化け物に騙されているんだ!! 考えても見ろ、やつは今まで同族である魔人を、ああも簡単に殺してしまうんだろ? 俺達人間が怪物を倒すのとは訳が違う。」

 「それは・・・」

 「そんな恐ろしいやつだぞ。これ以上、君はアイツと一緒にいちゃいけない!! たかだか二、三ヶ月ほどの仲だろう!?」

 「でも・・・」


 徐々に渋木の圧力に押され出した瓜が話す言葉に悩んでいると、渋木は両腕を彼女の両肩から離し、そして、突然瓜を抱きしめました。


 「さ、猿柿君!!?」

 「渋木でいい・・・」


 さっきまでの強い言葉と打って変わって大人しくなった渋木は、今度は瓜の耳元で囁いてきました。


 「これからはもう安心だ。今度こそ、俺が君のヒーローになる。」

 「・・・ 渋木君・・・」


 そして渋木は体を離して


 「聞かせてくれ! さっきの返事を・・・」

 「わ・・・ 私は・・・」

 「私は・・・」

 「恐ろしい化け物なんかより、俺を選んでくれ!! 瓜!!」

 「!!・・・」


 瓜はその瞬間ハッと目が覚めたようになり、ついに覚悟を決め、渋木の目を真っ直ぐ見てハッキリと一言言いました。




 「        」



______________________



 瓜はそのとき、頭の中にかこの光景が思い浮かびました。丁度渋木と分かれた日のことです


 その日、瓜は何も知らないまま、過去に渋木に助けられた場所に一人来ていました。真剣な面持ちの彼に呼び出されたのです。


 しばらく待っているとどこかそわそそわした渋木が現れ、そして意を決してハッキリと言ってきました。



 「好きだ!! 俺と付き合って欲しい!!!」



 「エエッ!!?・・・」


 瓜はまさか自分にこんな言葉がかけられるなんて思いもよらず、どう答えたら正解なのかが分からなくなります。


 「町田、返事をくれないか?」

 「ああ・・・ その・・・」


 パニックになった瓜がそのとき言った返事は・・・







 「・・・すみません!! 考えさせてください!!!」






 と、答える勇気が出ずに保留にしてしまい、恥ずかしくなった彼女はそのままその場から逃げ出してしまったのです。


 その後、教室で一人返事を考えていた所に、担任の先生から話がありました。


 「皆に悲しいお知らせがあります。このクラスの猿柿君が、ご両親の仕事の都合で転校することになりました。」


 それを聞いて瓜は頭を上げて目を見開きました。そしてその目の先には、気分の落ち込んだ目でこちらを見ている渋木がいます。


 「そんな・・・」


 そのまま渋木は引っ越していき、返事も出来ないままお別れになってしまいました。おそらく彼は、ケジメとしてこんなことをしたのでしょう。


 「猿柿君・・・」


 瓜の心の奥には、この時の後悔が重く残っていました。



______________________



 そして現在、再開した彼からもう一度受けた告白の返事をし、あることのために彼と別れて一人廊下を歩いていました。


 「・・・」


 するとそこに、誰かが急いで走ってくる音が聞こえてきました。瓜が顔を見ると、それは彼女を心配したフィフスでした。急いで来たのか、息切れをしています。


 「フィフスさん!!・・・ その、大丈夫ですか?」


 フィフスはコクリと頷いて返事をしました。瓜は一瞬目をそらしながらも、それをまた彼に向けてグッと肩に力を入れて声を出します。


 「私! あなたに話したいことが!!」


 すると次の瞬間・・・










 ニィ・・・



 そのフィフスは不気味な笑みを浮かべ、そして彼女に向かって放射炎を撃ち出してきました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 渋木は小学生時代、クラスの仲でもトップクラスの人気者でした。


 瓜は助けられた縁で彼と仲良くしていましたが、そのせいでクラスの女子からは彼を独り占めしているとして結果的にイジメが増えてしまいました。


 告白を断ったのは、女子達に釣り合わないと何度も釘を刺された事も少なからず影響しています。




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