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第17話 お菓子隊の尋問

 それは、フィフスが高校に通うようになる日の朝。生徒ではない一人の男が、ある目的のために学校の周りを徘徊していた。彼は物陰の中でスタンバって、吐息を荒げていました。


 「フーーー! フーーー!」


 男は道行く女子生徒に影から色目をしていたが、周りの女子からは全く相手にされなませんでした。しばらくして彼も我に返ります。


 『おおっと、いけないいけない・・・ これでは彼女を見失ってしまう。せっかく念入りに準備したことが無駄になってしまう・・・』


 そう、彼の行動の目的は一つ、それは・・・


 『よし、今だ!!』


 バサッ!!


 男は誰にも気付かれる事無く学校へと侵入し、グレシアの下駄箱にたどり着きました。


 「グへへ・・・ 待っててね~・・・」

_______________________________________


その一日前・・・


 「お前、誰にでもモテるんだな。」

 「言われても嬉しくないわね。」

 「もしや、ストーカー・・・ ですか。」

 「こうしてみるとモテるのも考えようだな・・・」

 「しかしどうする、この感じだとあいつまた来るんじゃねえのか。」

 「今度はアタシもいて、囮になるってのは?」

 「それじゃあ・・・ 奥山さん・・・ 危険です。」

 「それに学校内じゃ他の奴を巻き込んじゃうしな。」


 四人でグルグル交代しながら作戦を話し合っていましたが、ついには・・・


 「「「「う~ん・・・」」」」


 全員揃って行き詰まっています。どうにも進捗がありませんでしたが、フィフスが再び切り出しました。


 「おそらくながらあの化けゴウモリの契約内容はお前を拉致る事だろ。ならわざと捕まって向こうで暴れりゃいいだろ。」

 『フィフスさんまで・・・』

 「大丈夫だ瓜、その辺は心配するな。」

 「まあ、明日以降はアタシも学校に行けば良いって事ね。」

 「向こうの動きを見るしかねえか・・・」


 フィフスや瓜はあまり気が進みませんでしたが、他に手がないので仕方なく同意しました。そして翌日、グレシアは普段通りに登校したものの、特に魔人の気配は感じませんでした。


 『意外ね。てっきり一人で学校前に来たらやってくると思ったけど・・・』


 疑問を抱きながらグレシアはいつものように下駄箱を開けて上履きを取り出します。すると、そこから何かがヒラリと落ちました。


 「何々? 志歌ちゃんおはよう。今日は大丈夫かな? 僕はそんな君も大好きだけど笑顔の君が見たいな・・・ ですって!?」


 手紙を見たグレシアは悪寒を感じ、手紙を破り捨てて辺りを睨みながら見回しました。


 「て、手紙!? しかも名前バレてる!!」


 思っていたよりも陰湿なやり方に身震いをしているグレシア、そこへ・・・


 「大丈夫か?」

 「ワーーーーーーーーーーー!!!?」


 驚いた彼女は杖を取り出して声のする方へと睨み付けながら向きました。が、そこにいたのはフィフスでした。


 「朝っぱらから騒がしいな。どうした?」

 「かかか、関係無いわよ!! アンタには!!」

 「あ、そう・・・」


 明らかに疑って彼女の方を見るフィフス。ですが、彼女の言う事を尊重してその場は去って行きました。


 『ああ、言えば良かったかな・・・ でも、アイツなんかの手を借りなくても、ストーカーの一人や二人ぐらい、アタシが軽く捻ってくれるわ!!』


 グレシアは自分の中でやる気を出しました。その少し離れた場所で隠れながらその様子を覗く影が二人。


 『奥山さん、大丈夫でしょうか・・・』

 「さあな、ただ・・・」

 『ただ・・・』

 「いや、何でも無い。」


 その場ははぐらかすフィフス。しかし内心は穏やかではありませんでした。


 『悪い予感が当たらなきゃ良いが・・・』


 さらに翌日、今度はラブレターの数が二枚に増えていました。さらに次の日、五枚・・・

 そして一週間後、枚数は二十枚を超えていました。


 「ナッ・・・」


 流石の彼女も唖然としています。そしてこの事態に危うさを感じて、動き出した者達がいました。


 放課後の会議室。男達はそこで、歴戦の強者のような雰囲気を醸し出しながら、重々しい会議を開いていました。




 「ここ数日、我らが姫に恐怖を与え続ける不届き者がいる。断じて許すことは出来ん。」

 

 オーーーーーーーーーーーーー!!


 「そこで!! 今日はここに事件の重要参考人をお招きした。彼と共に、姫に近づきし悪しき者を粛正するのだ!!」


 オーーーーーーーーーーーーー!!


 「いや、招いてるんじゃ無くて・・・ 






  ・・・どう見ても引っ捕らえられてるだろ。これ。」


 グルッと周りを囲む机の楕円の中心には、縄で椅子に括り付けられたフィフスがいました。


 『全くこいつら、放課後に帰宅しようとしたときに急に襲いやがって。』


 彼は放課後、瓜をつれて下校中のとき、平次が勝手についてきて瓜にちょっかいをかけてきたのでそれを全て払っていました。


 しかしそのせいで、自分に迫ってきている追っ手に気付かなかったのです。そのため、捕らえられてない瓜と平次は教室の外にいました。


 「だ、大丈夫・・・ でしょうか・・・」

 「まあ、待つしか無いか・・・」

 『ヨッシャーーーーー!! 謀らずとは言え町田さんと二人っきりだ!! ここで距離を詰めてやる・・・』



_______________________________________



 「ヒャッヒャッヒャッ・・・ さあ、こいつをどう痛めつけてやるか・・・」

 「まあ待て、まずは情報を聞くのが先だ。」

 「俺・・・ こいつ、潰す・・・」


 次々とフィフスに罵倒をぶつけながら話し合いをするお菓子隊の面々。


 『何だこの悪の組織のテンプレのような集団・・・ 教師に見つかったら確実にアウトだろ。』


 さすがにふざけたことを言い続けた為に、別のメンバーが注意を欠けている状態だった。


 「こらこら君たち、さすがに言いすぎだよ。少しは自重しなさい。」

 『そうだ。言え言え、この状況は明らかにおかしいだろ!』

 「罵詈雑言は拳で伝える者ですよ君たち。」

 『昭和の熱血漫画じゃねえんだよ!! つかあの人よく見たら担任の教師じゃねえか!!』


 まさかと思いフィフスが周りを見渡すと、そこにはこの学校の生徒だけで無く、何人もの男性教師が混ざっていました。


 『オイーーーーーーーーーーーーー!! この学校いろいろな意味でやばすぎんだろっ!!』


 フィフスは完全に参っていたが、それでもここに来たのにはもう一つの理由がありました。


 ザワザワ・・・  ザワザワ・・・

   ザワザワ・・・  ザワザワ・・・


 『ったく、思ってたよりも数が多くて困ったな・・・ だが、この中にあの化けゴウモリの契約者がいる可能性は高い・・・ もう少し見張ってみるか。』


 ファンクラブの動向を見るフィフス。しかしそれは向こうも同じでした。


 「それでは、今回の事件の整理の為に、皆さんには、彼の身辺調査をしてもらった。」

 『エッ!?』


 するとスクリーンにデカデカと画像が映し出されました。フィフスとグレシアが二人で歩いている様子です。


 「皆の者、この行為をどう処すべきか聞こう。」

 『処罰は前提かよ!!』

 「な、何という事を・・・ あの奥山さんとこんなに近くを歩くなんて・・・」

 「我々ですら、有事の際以外邪険にされるのに・・・」

 「粛正だ!!」 「万死に値する!!」


 「いきなりやっかみがスゲえな・・・」


 呆れかえっているフィフスに団長らしき人物が問い詰めます。


 「小馬くん、これはどういうことかね。」

 「これはアイツに校内の案内を受けただけだ。それがどうした?」

 「奥山さんに・・・ 案内だと・・・」

 「ふざけるな!! 我々ですら、むやみに話しかけただけでパンチが飛んでくるというのに!!」

 『グレシアの奴・・・ 相変わらずやりすぎてんなあ・・・』

 「制裁だ!!」 「制裁を下せ!!」

 「おいおい、いきなりひがみがスゲえな。」


 場に一定の罵倒が集まると、続いて別の団員が話し出しました。


 「続いてこれだ。皆見てくれ。」


 そう言って映し出したのは、フィフスと瓜が一緒に下校している様子を正面から撮っているものでした。


 「いやおかしいだろ! こんなもんどうやって俺にバレずに撮ったんだよ!!」


 フィフスの突っ込みには一切触れずに周りは続けます。


 「これはどういうことだ!? この男は奥山さんに近づきながら、この美少女すら手中にしようとしてるのだ!!」

 「被害妄想がスゲえな・・・」

 「そんな・・・ この男、奥山さんばかりで無く・・・」

 「絵に描いたようなゲスめが!!」

 「制裁だ!!」 「制裁を下せ!!」

 「同じことしか言えねえのか。てめえら・・・」


 完全に四面楚歌な状態の中、団長の男が周りを再び沈めて言い出しました。


 「小馬君、一つ聞こう。 君は奥山さんとどういう関係なんだい?」


 メンバー全員の赤く血走った視線をフィフスに向けてきます。下手なことを言うと即座にたたっ切られそうな雰囲気が流れていましたが、フィフスは軽く答えました。


 「どういうって・・・ 少年時代からの腐れ縁だがそれが何だ?」


 その場にいる彼以外の全員が雷に打たれたかのような表情になっていました。


 「く・・・ 腐れ縁・・・ だと・・・」

 「それはつまり、幼なじみ・・・」

 「こいつ・・・ 何と言うことを・・・」


 「???」


 一人だけ完全にわかっていないフィフスに聞いただけで怒り心頭なお菓子隊が一斉に襲いかかろうと動き出しました。しかしその瞬間・・・


 パリンッ・・・


 「ウギヤーーーーーーーーーーーーー!!」


 教室の外からガラスの割れる音と、男性の断末魔が聞こえてきました。教室の中にいたお菓子隊は攻撃をやめてざわつきだします。フィフスは察したらしく、真剣な表情になりました。


 「オイ! お前、何余裕な顔してんだ!! お前は囚われの身なんだぞ!!」


 メンバーの一人が余裕のフィフスに怒鳴りつけた。が・・・


 「悪い、用事が出来た。」


 フィフスはそう言い切り、縄をほどいて立ち上がりました。どうやらお得意の炎で焼き切ったようでした。


 「いつの間に!?」

 「じゃあな。」


 そう言ってフィフスは混乱になっている教室全体に術をかけてお菓子隊を全員眠らせました。


<魔王国気まぐれ情報屋>


お菓子隊の公約


・会員は奥山さんのことを崇拝し、いかなる時も味方をすること。

・会員は奥山さんからの指示があれば、家族の葬儀よりも優先してしたがうこと。

・会員は奥山さんからの罵倒をご褒美として受け取ること。

・会員は奥山さんに近づく異分子を排除すること。

・会員は奥山さんへの挨拶、及び世間話のみすることを許可する。

以下略




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