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第186話 無理矢理な方法

 現在もまだ廊下で動かないでいた瓜。おそらくこんな状況でも、フィフスの距離制限のことを考えて動けなくなっていたのでしょう。そんな彼女に廊下の奥から足音が聞こえて来ます。


 カツンッ・・・ カツンッ・・・


 なんだと思ってふと彼女がその方向に首を向けてみると、その先からフィフスに化けた天邪鬼が歩いてきていました。しかし彼女はその事を知りません。


 「フィフスさん?・・・」


 天邪鬼は少し不敵な笑みを浮かべながら彼女に近付いていきました。



______________________



 その頃の本物のフィフス。自室から一向に出ることも出来ず、悪戦苦闘していました。


 「ンン!!・・・ ンンン!!!」


 しかし彼がどんなに体を動かしても、何かに掴まって立つことがやっとでした。


 『マズい・・・ 早く痺れを解かないと・・・ でもどうやって・・・』


 ふらついて彼が下を見ると、自身の腰に付けている剣が目に入りました。そこである考えが思い浮かびました。


 『もし化けゴウモリの時のように、体の中の異物だけ取れたら・・・』


 彼は壁に体をよりかけ、震える手を何度か空振りながらも剣のグリップを握り、遠心力も使って鞘から引き抜きました。


 「よぉし、刃は出した・・・ 後は前のように光れば・・・」


 しかしそこからが問題でした。フィフスが待っていても、一向に剣の刃が光ることがなかったのです。


 「頼むよ! お前いつも俺がピンチの時光り輝いてただろ?」


 フィフスは必死に剣に語りかけますが、当然通じるわけもなく剣は何も変わりませんでした。その上悪いことは続き、彼は体の痺れについ腕の力を緩めてしまい、剣は床に落ちてそこを弾き、部屋の外まで出て行ってしまいました。


 「アッ!!・・・ クッ・・・」


 フィフスは前進しようとしますが、足がもたついてまた倒れてしまいます。


 「クッソ・・・」


 彼はそこから手を伸ばしますが、剣には届きません。体をほふく前進で前に進みますが、どうしてもスピードが遅くなってしまいます。あれを掴みに行っていたのでは時間がかかって仕方ありません。


 ならば何か別の方法はないかとフィフスは頭を必死で回していると、別の案が一つ思い付きました。というより、剣の方法よりも前に思い付いてこそいましたが、無茶がある故に躊躇されていました。ですがこの時間のない中では贅沢は言っていられません。


 『やっぱりこれしかねえか・・・』

 「ハァ!!! グッ!!・・・ グゥヌ!!・・・」 


 するとフィフスは両手の拳を強く握りしめ、目を血走らせて全身に力を入れました。


 「アァーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 すると彼の全身の熱が上昇し、両目の血走りが白目を真っ赤に染めていきました。


______________________



 その頃、瓜は自分の元に現れたどこか不気味な雰囲気を醸し出すフィフスと共に元いた部屋から離れていました。


 「・・・」

 「・・・」


 沈黙に耐えかねた瓜は、冷や汗を流しながら隣の彼に小さく声をかけました。


 「あの・・・ それで・・・ どこに?」


 そして二人がロビーを通り抜け、人気(ひとけ)の無い所に到着した途端・・・



 ドドドド!!・・・



 突然後ろから大きな足音が聞こえてきました。それと同時に何かが燃えているような音と匂いもしてきます。


 『火事? でもどこから・・・』

 「フィフスさん!!・・・ !?」


 フィフスの意見を聞こうと瓜が隣を見ると、さっきまで大人しくしていたフィフスに突然首を持ち上げられ、身動きが出来なくされてしまいました。


 「ウガッ!!・・・ フィフス・・・ さん?」


 偽のフィフスはニタリと笑い、彼女を出来るだけ遠くに投げほりました。



______________________



 その足音と焦げた匂いを出していた張本人は、ロビーにを誰にも気付かれないほどもの凄い速度で通過していき、そしてその人は目の前にある存在を見て足を止めました。


 『いた! 偽物の俺!! 一人だけか? なら好都合!!』


 姿を現した本物のフィフスは、剣を腰に携えて擬態を解いているだけでなく、体中のいたるところから熱気、と言うより炎そのものを噴き出していました。


 予想以上に早くここまで来られたことに驚いているのか、偽のフィフスは本物相手に完全にたじろいでいます。フィフスは怒りながら牽制の言葉をかけます。


 「今度はこっちの番だ、覚悟しろ。」


 フィフスは拳を握ると爆発するように手の中から発火し、彼はその拳を偽物に向けました。しかしできるだけ早く出したこの攻撃も、急いだ相手にかわされてしまいました。


 『クッソ・・・ 無理矢理魔力の循環を速めたからな・・・ 痺れ薬の効果は消しきれてなかったか・・・』


 今フィフスは、血液のように体に流れる魔力の循環を速めることで痺れ薬を細かく分散させて効果を下げています。しかし完全ではない上にこれを続ければ消費する魔力量も多いため、彼にとってもかなり禁じ手なのです。


 『すぐにケリを付けないとやばい。それに何より・・・』


 フィフスはもう一方の手で追撃をかけますが、またかわされてしまいました。


 『瓜をこれ以上危険な目に遭わさせねえ!!』

 「まだ逃げるか!!」


 先程かなりの挑発を受けたことも相まって、かわされるものの段々とフィフスは相手を追い詰めていきました。そしてとうとう相手がふらついたのを見逃さずに、その左腕に炎を当てて火傷を負わせました。


 「アアッ!!!・・・」

 「チッ、浅いな・・・」


 ですが確かに効果はあったようで、偽フィフスはその場に尻もちをついてしまいます。フィフスはそれを見て今度こそダメージを当てるために剣を抜いて術装をし、それを思い切り振り下ろしました。







 カアァン!!!・・・




 その攻撃は、突然横から伸びてきた腕のようなものに止められてしまいました。


 「何だ!!?」


 フィフスが横を見ると、目に映った相手は、経義が着ているものと似ていますが、全体的にそれよりゴテゴテとしているスーツでした。


 「コイツは・・・」


 スーツの男は呼吸音を出しながらバイザーを光らせました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 フィフスがこの回で使った戦闘力の底上げには、実はもう一段階上が存在します。しかしそれはとある事情からフィフス本人が使いたがりません。


 その理由は話を読み進めていくと発覚します。




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