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第182話 背中越しのアイツ

 戦闘が終わり、フィフスは人が集まる前に瓜を連れて広間を後にします。そこからははぐれた渋木の捜索をかねて遠回りをしながら自室に戻ろうと歩いていましたが、頭の中では色々と唐突な情報を整理するために脳をフル回転していました。


 『船に現れた魔人・・・ 召喚できないユニー・・・ 威力が上がった破壊炎・・・ そして、船ごと突き抜けていったえげつない光線・・・ クッソ、僅か半日程度の時間でアクシデントが起こりすぎだろ。』


 フィフスは無意識のうちに顔が険しくなっていることに気が付かず、隣にいる瓜に服の袖を引っ張られたことでようやく表情が戻りました。


 「ん!・・・ どうかしたか?」


 瓜はコクリと頷くだけで、何も話しません。しかし言いたいことはフィフスになんとなく伝わり、彼は意識的に表情を緩めました。


 すると彼は朝から思っていた事を彼女に言ってみました。


 「そ~いやお前、今日はえらく無口だな。」

 「エッ?・・・」


 そのときフィフスはまたさっきと同じ考え事をし始め、彼女が動揺した顔をしたことに気が付きませんでした。



______________________



 そこから少し経ち、思わぬ戦闘に少し疲れを感じフィフスは、通りかかった休憩席に座って休んでいました。瓜はそんな彼に気遣って背中をさすっています。


 「ハァ~・・・」

 「・・・」

 「悪い瓜。気遣ってくれるんなら一つ飲み物でも買ってきてくんねえか? 確かそこらに売店があっただろ。」


 瓜はまた無言で頷いて肯定を示し、近くの売店に走って行きました。一人になったフィフスはさっきの続きを思い浮かべます。


 『やっぱりこの船に来てからのこと、偶然にしてはできすぎている。まさか、俺達ははなから何かの罠に・・・』


 するとそのソファの反対側に誰かが座りました。余程フィフスの顔が険悪だったのか、向こうから声をかけてきます。


 「随分とお疲れですね。」


 フィフスはいきなり話しかけられたことに直後は困惑しましたが、誰かに話すことでもやついている自分の気分を少しでも晴らそうとしました。


 「いやぁ・・・ まぁ、そうですね。ゆったりと旅行を満喫するつもりだったんですが、色々とトラブルが重なりまして・・・」

 「ハハハ! 旅先にトラブルはつきものとよく言うでしょう。」

 「それはどうも・・・」


 軽く笑って返答されたことにフィフスは若干腹が立ちました。


 「出来れば笑って貰いたくはない。」

 「おっと、これは失礼・・・」


 会話が途切れて少し経ち、背中合わせの相手は次にこう言ってきました。さっきまでより声のトーンがどこか高いです。


 「それで、せっかくのクルーズ旅行は楽しんでくれていますか・・・








  ・・・()()()()。」



  「!!?」


 フィフスは後ろにいる声の主が分かり、顔を臼負いの戦闘の時よりも険悪にして緊張を戻しました。


 「こんな所に何しに来た・・・ カオス。」


 フィフスが話していた背中越しの相手はこの場所に合うように服を着替えたカオスでした。


 「やっぱり昨日の声はお前だったのか。」

 「嫌だなぁ~・・・ そんな怖くしないでよ。僕はちょっと君と話をしに来ただけさ。」

 「話?臼負いの分の負け惜しみか?」

 「ハッハッハ!!・・・」


 カオスはそんなことなど気にしていないようにケラケラ笑います。


 「そんなまさか。今回僕は君に一つアドバイスを与えようと思ったんだよ。」

 「アドバイス?」

 「ああ、君の契約者。確か・・・ 『町田 瓜』だっけ?」

 「それがどうかしたか?」


 フィフスはより声をに圧をかけてカオスに聞き返すと、彼はこうハッキリ言いました。





 「あの子には気をつけた方がいい。 そのうち、君を裏切るかもよ・・・」





 突拍子もなくカオスが言ったことにフィフスはらしくなく反論します。


 「んなわけあるか! アイツが俺を裏切る事などない!!」


 カオスは首を回し、動揺した彼をヘラヘラと見ながら話を続けます。


 「それはどうかなぁ~・・・ 人間っていうのは、大切な命のためなら意外とどんなことでもしちゃうからねぇ~・・・」

 「それは・・・」


 フィフスはカオスの言っていることの意味がなんとなく分かったつもりになった。過去に戦った勇者達のことを思い出したのです。カオスは、そんな彼の肩にポンッと置きます。


 「ま、疑いたくないんなら今はそれでいいさ。どうにしろ・・・



  ・・・すぐに思い知らされる。」

 「その言葉、そのまんま返す。この場でお前をとっ捕まえてもいいんだぞ!」


 フィフスは肩にあるカオスの腕を掴もうとしましたが、彼はその前に手を離しました。


 「あいにく僕も忙しい身でね。ここらが限界だ。」

 「ざけんな。すぐにでも・・・ ぶった切る!!」


 フィフスは言葉を切ると同時にソファから立ち上がって後ろを振り返りながら鞘から火炎刀を抜いて斬り掛かりました。


 しかし、その行動が完了したときには、背中越しにいたカオスの姿はありませんでした。


 「ケッ・・・ 本当に神経を逆なですんのが得意な奴だ。」


 そこに飲み物を買ってきた瓜がやって来ました。剣を締まっている彼の様子を見て何があったのかと駆け寄ります。彼はその足音に気付いて突然殺気立った目で睨んできました。


 「ッン!!・・・ 飲み物・・・」

 「なんだ、お前か。」


 すぐにフィフスは目付きを戻して飲み物を受け取りました。


 「ありがとな。」


 フィフスは貰った飲み物をいただき、再び部屋に向かって歩き出しました。しかしそんな中でも、戯言にしか思えないさっきのカオスの言葉が引っかかります。



______________________



 「あの子には気をつけた方がいい。 そのうち、君を裏切るかもよ・・・」



______________________



 『そんな・・・ まさかな・・・』


 フィフスはさらにもやつきを増やした形になりました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・フィフスに会いに行った直後のカオス


カオス「やっぱりこれ持っていった方が雰囲気出たかな・・・」



 ドッキリ大成功のプラカード




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