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第181話 謎の光線

 臼負いのとっておきである巨大石臼の出現により、二人は一気に追い込まれてしまいました。彼女は高笑いして叫びます。


 「ヘッヘッへ!! これで骨ごと粉々に潰れてしまえぇいいい!!!」


 フィフスは急いで石臼を回避する方法も考えはしましたが、巨大故の重さによる落下の速さでは、今の二人に逃げ延びる術はなさそうです。


 「瓜! しゃがめ!!」


 フィフスは咄嗟に瓜にそう支持を出し、彼女も反射的にその通り体を動かします。彼はそれを確認する間もなく、石臼に向かって破壊炎を発射して技を相殺しにかかりました。


 『破壊炎!!』


 彼はこの室内で出来る限界ギリギリの火力で破壊炎を放ちます。しかし臼負いのとっておきと言う事もあってか、このままでは灰にする前にこちらが潰れてしまいそうです。


 「ヘッヘッへ!! 我ら臼負い族が作りし秘伝の臼! その堅さは貴様の攻撃など痛くもかゆくもないのだ!!」

 『マズい!・・・ このままだと俺と瓜に直撃する!! 何か! 何か手は!!・・・』


 そのとき、フィフスの頭には一つの考えがよぎりました。しかし同時に彼はそれを却下します。


 『ダメだ! ()()は使っては・・・』


 しかしこんなときでは焦る彼に時間など与えられるわけもなく、石臼はもうすぐフィフスに直撃しかけていました。


 『何か! 何か!!・・・』


 そのまま石臼の巨体が二人の体を潰しかけたそのときです!!





 ボッ!!・・・





 次の瞬間、彼の目にさっきまで効果のなかった破壊炎に何か別のものが入ったように色が変わり、一瞬にして石臼が包まれ、向こう岸の壁を破壊した瞬間に同時に跡形もなく消え去る様子が見えました。


 「ナッ・・・」

 「!!?・・・」


 これを見て臼負いは口を大きく開けて信じられないような顔になります。


 「そ!・・・ そんなバカな!!・・・」


 フィフスは何が起こったのか分からず一時放心状態になっていましたが、臼負いの声を聞いて我に返り、同時にこれまでにない勝機を見ました。


 「降りてこい! 婆さん!!」


 フィフスは臼負いが空中で身動きが取れないところに爆破裂を起こしてダメージを与え、床までたたき落としました。


 「アガッ!」


 そして二重で起こった予定外の事態に怯んだ臼負いは一旦退却しようと、広間の壁に向かって急いで逃げ出しました。


 「クソッ、こうなればまた・・・」

 「逃がすわけねえだろが!」


 すぐにフィフスは彼女に追い付き、その腹に犬牙を当てて更に追い打ちをかけます。すると臼負いは数歩下がって体勢を崩し、さっきまでの威勢とは打って変わって縮こまってしまいました。


 「ヌググ・・・」


 フィフスは瓜の頭に触れて安全なことに気付かせ立たせると少し離れさせ、自分はさっき敢えて臼負いがやったのと同じようにゆっくり歩いて彼女に近付きました。


 「さて、隠し球もつきたようだし、そろそろ大人しくして貰って・・・」


 やってくる敵に、臼負いは尚も抵抗として電撃を出そうとしますが、フィフスはそれを読んで剣を床にこすって魔術を出し、飛ばした摩擦熱から作った炎渦(えんか)で相手を閉じ込めて技を無力化させました。


 「今回こそあらざらい話してもらうぞ~・・・ 例の『魔革隊』って奴について・・・」

 「な! 何じゃと!?・・・」


 臼負いはどこか恐怖を感じたような顔になります。


 「い、嫌じゃ! そんなもの口が裂けても言うか!!」


 しかしフィフスは声のトーンを暗くして脅しをかけます。


 「話さなかったらどうなるのか分かってんだろ?・・・」


 臼負いは悔しそうに下唇を噛み締めますが、観念して大人しくなりました。


 「ヌゥ・・・ 分かった、話せば解放するか?」

 「ああ、約束する。」


 臼負いは切り替えるために一度息をし、そして話し出した。


 「ワシらは・・・」

 「ッン!?」


 しかしそのとき、フィフスは何かを感じて身を横に捻りました。すると・・・






 シュン!!!・・・






 ・・・と、さっきまで彼と臼負いがいた軌道上に真っ白な光が差し込んできたのです。


 すんでの所で軌道上から離れたフィフスと元からそこにはいなかった瓜は無事でしたが、その光に直撃してしまった臼負いは、途端に苦しみ、そしてそのすぐ後には前進が包まれて影が消えていきました。


 「ギイヤァーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 光は広間の壁を突き抜け、それから少しして消え去りましたが、そこにあったはずの臼負いの姿は跡形もなく消え去っていました。最後の一瞬のインパクトに押されて残った二人は絶句します。


 フィフスはこれが何なのかと光線が飛んできた方向を見ると、遠くにある人影が走り去っていく姿だけが映り、顔も見えませんでした。瓜はそんな彼に近付き、小さく声をかけました。


 「大丈夫ですか?」

 「ああ、ギリギリだったがな。」


 二人は息をのみながら後ろを見ます。そこには、さっきの光線によって大きな穴が開いた壁と、無残に削れた床が異様な空気を放っていました。


 『一体・・・ 誰がこんなものを・・・』



____________________



 船内の人気(ひとけ)のないどこか、壁にもたれていたカオスが小さく呟きます。


 「あ・・・ 臼負いやられた。思いの他()ったな・・・」


 彼はもたれた体勢を止めて歩き出し、近くにいた誰かにこう聞きます。


 「どう、手柄は?」

 「上々だ。獄炎鬼の戦闘データはある程度取れた。」


 そう言う彼とカオスが少し首を上げると、いくつものモニターに映されたフィフスがいました。それぞれ違う技を発動している様子です。


 「オッケー、じゃあ次の段階に進めようか。皆、準備いい?」


 楽しそうに振り替えるカオスの目先には、複数体の魔人の影がありました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


モチーフ紹介


・臼負い

 『猿蟹合戦』より臼




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