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第179話 臼負い

 クルーズ船内での魔人の出現に、三人はそれぞれ違う反応を見せました。訳が分からないでいる渋木。なんでここに魔人がいるのかが気になる瓜。そして少し二人より前に出たフィフスは、突然相手が現れたことに理屈を考えていました。


 『『臼負い』か・・・ コイツ、ついさっきまで確かにいなかったはずだ。術の感知がなかったらやられていたぞ!!』


 三人が見る魔人は、どこか嬉しそうに肩を回しながら独り言を語り出します。そこにフィフスは話しかけました。


 「イヤァ~・・・ ようやく暴れられるわい。キツかったのぉ~・・・」

 「お前、突然何のようだ? こっちは旅行中なんだよ!!」

 「関係無いのぉ。」


 臼負いは両手を広げて胸当たりで×に組む。そうすると指先当たりから白い電撃が発生します。


 「<雷鳴術 電撃線>」


 そのまま臼追いは両手を前に向け、三人に向かって電撃を放ちました。フィフスは念のために背中に仕込んでいた剣を取り出してそれを全て弾きます。


 「んな単純か攻撃効くか!」

 「あんたを狙ってないからのぉ。」


 臼追いがそう言うと、弾かれた電撃が空中で軌道を変え、フィフスの横を通って後ろの瓜に向かって行きました。


 「しまった!! 瓜!!」

 「ハッ!!・・・」


 瓜もフィフスも動きますが電撃を動きが速く、間に合いそうに会いません。


 「クッソだったら!!・・・」


 フィフスは剣の持ち手を力強く握り、何かの準備をしました。しかしその前に・・・


 バサッ!!・・・


 「アガッ!!!・・・」


 瓜の隣にいた渋木が、彼女に覆い被さって代わりに電撃を受けたのです。


 「猿柿君!!」

 「大丈夫・・・ 平気さ・・・」

 「でも、私のせいで・・・」


 そこにフィフスも近づき、彼も渋木に声をかけます。


 「大丈夫か!?」

 「ああ・・・ なんとかね・・・」


 言葉ではそう言いますが、彼は実際はかなり痛そうにしていました。そこでフィフスは無事だった瓜に声をかけました。


 「瓜、そいつ連れて離れとけ!」


 彼女はまた頷いて反応を示し、すぐに渋木の腕を肩に組んで立ち上がり、その場から出来るだけ離れていきました。


 「逃がすか!」

 「させるかよ!」


 臼追いは当然追撃をかけようとしますが、次の瞬間にフィフスに腕を攻撃されて発動を防がれてしまいました。


 「ええい邪魔するな!!」

 「知るか! こっちはお前に聞きたいことがあんだよ!!」




 その頃、瓜は距離制限の範囲ギリギリまで離れた所にある物陰に隠れていました。しかし事情を知らない渋木は彼女にこう聞きます。


 「何をしているんだ町田!? ここじゃそんなに離れてないだろ!!?」

 「でも、彼が・・・」

 「だからって残ったら君も危ないだろう!」

 「ああ! ちょっと!!」


 そのまま瓜は腕を引かれて更にフィフスから離れてしまいました。


 「これじゃ彼は・・・」


 しかしそのとき、瓜は曲がり角の先から電撃の光は見えませんでした。


 「・・・あれ?」





 視点が戻ってフィフス。彼は瓜が五十メートル離れたことにも気付かず、何故か電撃が発生せずに戦闘を続けられました。中々決着が付かないことに、臼追いは愚痴をこぼします。


 「ケッ! 夜の時といい何度も邪魔を~・・・」

 「夜の時・・・ てことはあれもお前か! じゃあ目的は瓜か!?」

 「残念はずれだ。ワシの目的はあのボンボン。女はちょっかいをかけるよう言われただけだ。」

 「ああ、そうですかい!!」


 彼は攻撃を防ぎながら後ろに渋木がいないかを確認します。跳び蹴りから着地し、臼追いと距離を取ると、また質問します。


 「ちょっかいをかけたのは誰だ? カオスか?」

 「言わねえよ! ワシに利がないんでな。ここに邪魔が入るのは予想外じゃったが、若僧一人ではすぐに済むかの・・・」

 「・・・ 逃げ出しといてよく言う。」


 そしてフィフスは炎に包まれて擬態を解除し、赤鬼の姿になりました。それを見た臼負いは警戒を強めて構えます。


 「ほぉ・・・ 本気ってことかい?」

 「勘違いするな。戦闘モードに入っただけだ。」


 そこからフィフスはさっきまでよりも攻め立て始めました。臼負いは返り討ちにしようと爪を刺しにかかりますが、彼はそれをよけて壁を足場にし、相手の後ろに回り込みます。そこから蹴りを入れました。


 「クッ・・・」

 「この程度じゃビクともせんか・・・」


 臼負いはフィフスと距離を取ろうとしますが、彼はそれを見逃さず攻め立てます。そこで相手はさっきと同じ技を撃ち出してきます。しかしフィフスは器用に壁なども足場にしてそれを回避し、また臼負いに攻撃を当てました。


 「アガッ!!・・・」

 「狭い場所なら勝てると思ったか? 生憎俺には通じないんだよ。」


 フィフスはそこからもまるで森の中の猿のようなトリッキーな動きをし、壁や天井をも蹴りながら臼負いを翻弄します。


 『<伝獣拳 猿脚(えんきゃく)


 しばらくして臼負いは壁際まで追い詰められます。


 「ヌググ・・・」

 「さて、逃げ場は失った。話さねえんなら、そろそろ終いとするか。」

 「それはどうかの!!」


 臼追いは両手で胸当たりに○を形作ると、そこからさっきより大きな電撃の球体が発生しました。


 「<雷鳴術 電縮弾>」


 臼追いはそれをフィフスに撃ち出して応戦してきます。


 『追い込まれたのを利用してこっちにかわせない技を出したか! なら・・・』


 フィフスは放射炎を真っ向から放ち、相手の電撃そのものを打ち消しました。


 「よし、これで後は・・・ !?」


 しかしそのとき、炎が消えたときに彼が前を見ると、臼負いの姿はありませんでした。フィフスはもう一度よく辺りを見渡しますが、どこにも影も形もありませんでした。


 「まただ・・・ アイツ、どこへ逃げやがった?」



____________________



 その頃、瓜とその腕を引っ張って逃げていた渋木。彼女は説得しようとしますが、状況もあって彼は聞く耳を持ってくれません。


 「ちょっと!! 猿柿君!!」

 「な、何だよ!? 君もしつこいなぁ!!」


 やっと渋木は足を止め、瓜の手を離しました。感情が高ぶっていた彼女は、また話し出します。


 「これじゃあ小馬君が!!」

 「だから! それで君が行ったって意味がないだろう!!」

 「ウッ! それは・・・」


 瓜はぐうの音も出ずに黙ってしまいます。そんな曇った空気の二人を少し離れた壁から見る視線がありました。


 「フフフフフ・・・ これで終わりよ・・・」

<魔王国気まぐれ情報屋>


<雷鳴術 電撃線>


 五本の指からそれぞれ電撃を放つ技。一つ一つの威力は弱いが、何本かを束にすることで強化が可能。弾かれた電撃の軌道を変えて敵を襲うことも出来る。




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